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【本編完結】異世界男の娘【連載版】  作者: 物部K
成長~入学準備

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母上の出産

季節が過ぎ去り、日々をだらだらと過ごした気がする。

もはや朝起こされて女装されるのにも慣れた。

そんな俺を見ても誰もツッコミを入れてくれなくなった。

それはとてもとても寂しいことだった。


こんな気分にされるのは、もの寂しい風景のせいだろうか?

季節は秋になったようだ。


今朝はアカネのとこで朝食をとっている。和食でほっとする。

魔法の訓練もしているし、王族としての勉強もこなしている。

姿勢と口調も日々矯正されている。最近は仕草にも力を入れているようだ。



「アンタ、何も知らなければホントに女に見えてきたわね」

「え?そうか?」

「ここにいる間の口調は男っぽいけど、外に出たら完全に女だもの。

私が太鼓判押してあげる」

「そんなにかー」

「アンタはそろそろ考えないとね。女装するのか、しないのかを。

また前世みたいなトラブルは、私は嫌だからね」

「考えるって言ってもなー。

もうここまで来たら極振りするしかないだろ。女装に」

「はあ…」



アカネはアカネで心配してくれているのはわかる。

だが、周囲が俺に女装を強制しているのだ。

そして、そのまま女装だって言うことを忘れていく。


最近、父上の執務室に行くのだが…

もう大臣と文官勢は完全に俺が男だと言うことを忘れている気がする。




「それにしても、リリーさんのお腹はもうパンパンね。

いつ生まれてもおかしくないって感じがする」


「そうだな、母上も動きづらそうで大変そうだ」


「アンタに渡したエリクサーは、ちゃんと王様に渡したの?」


「あ、そういえばあったな、そんなもの。空間収納に入れっぱなしだわ」


「アンタねえ、もしもの場合の薬なんだからね。

ちゃんと渡しておきなさいよ?まったく」


「そうだな。とりあえず執務室に行って渡してくるよ」


「いってらっしゃい。

アンナちゃんが魔力を補充してくれるから、またいつでも作れるからね。

もったいぶらずに使うように言うのよ」


「エリクサー症候群って奴だな、大丈夫だ。父上ならその辺は間違えないさ。

じゃあ、いってくる」



俺はアカネの下から自室に帰り、父上の執務室に向かう。

渡すの忘れていたって言ったら、呆れられるかな?

執務室前に着いたのでノックをする。

最近はノックをする癖をようやく身につけたのだ。



「お父様、私です。お届け物があります」

「むっ、ディーネか。入れ」

「失礼いたします」



室内に入ると、皆の空気が弛緩するのを感じる。

父上もそれを感じて、苦笑しながら休憩を言い渡す。



「ちょうどいい、休憩にしよう。お茶の準備をしてくれ」

「かしこまりました」

「ディーネ、よく来たな。なにを届けに来たのだ?」

「以前に、アカネが言っていたエリクサーです」

「は?すまん、もう一度言ってくれ」

「だから、エリクサーです。三本ありますよ。

聖女アンナが魔力を提供してくれるため、ある程度自由に作れるそうです。

ですので、必要なら迷わずに使うようにとのことです」

「わかった、アカネ殿に最大級の感謝を伝えてくれ」

「たぶん見ているから伝わっていると思いますよ、ふふっ」



和やかの空気が流れる中、遠くからバタバタとした足音が聞こえてきた。

ノックも激しく、返事も聞かずに扉が開かれる。

執務室に緊張感が流れる。

そんな中、冷静に父上が問いただす。


「どうしたのだ、そんなに慌てて」

「奥様が産気づきました!」

「なにっ!?」

「今、私室に急いで産婆を呼んでおります!」

「そうか、手配をしてくれて感謝する。我々に今できることはない。

仕事に戻るぞ」

「お父様…」

「ディーネ。ホントに我々にできることはないのだ。

今は落ち着いて仕事をするしかないのだ」

「はい、わかりました」

「心配するな、治療魔術師もおる。滅多なことは起こらんよ」

「そう、ですね…」



俺は父上の言葉に不安を抱いたが…

まずは落ち着こう、と父上の執務室で母上の動向を待つことにした。

部屋には、ペンが走る音だけが響く。室内は緊張感に包まれている。

たまに小声で承認をもらう声が聞こえる。

俺はじれったいなと思いつつも、ひたすらに待つことにした。



どれくらい時間が経っただろうか、再び休憩時間に入った時だった。

アカネが急に扉から出てきた。



「王様!リリーさんの容態が悪化しました!

渡したエリクサーを持ってこちらへ!早く!!」

「なにっ!すぐいく!」

「カオル!アンタも来なさい、急いで!」



アカネの急報を聞き、父上はエリクサーを持ち、俺も急いでアカネの扉をくぐる。

扉と扉を移動することで最短距離で母上の私室に移動する。



「こっちよ!」

「うむ!」

「なんですか、あなたたち!?って、陛下!?」

「王様、急いで!」

「う、うむ」

「カオルは浄化の魔法をお願い!」

「わ、わかった!」



俺は言われるがままに浄化の魔法を放つ。

焦っていたため、少々強すぎたか?と思った。

だが、不要な菌が消える分にはいいだろうと思い直す。


父上は母上に近づくが、母上の顔色を見て放心している。

そんな父上に向かって、アカネは強く背中を叩く。



「王様!しっかりしてください!!

あなたの行動でリリーさんが助かるか決まるんですよ!?」

「うぐっ!?すまない、目が覚めた!感謝する!!

リリー!リリー!これが飲めるか!?」

「うぅ…」

「くっ、仕方ない!」



父上は意を決したように、エリクサーを口に含んだ。

母上の様子を見ながら口移しで少しずつ飲ませる。

薬の効果が出たのか、母上が一度強く光る。

意識が戻ったのか、母上の目が開く。



「あ、あなた…?」

「大丈夫か、リリー!頑張れ、もう少しだぞ!」

「リリーさん、呼吸を合わせてください!ひっひっふー、です!」



アカネがラマーズ法だっけか?呼吸を合わせるように母上に訴える。

母上は意識はあるようだが、疲労困憊のようだ。

こちらの声は聞こえているようなので、俺たちも声を一緒にかける。


「はい!ひっひっふー!」

「ひっひっふー…!」

「頑張れ、リリー!ひっひっふー!」

「ひっひっふぅぅ!」

「お母様、頑張って!ひっひっふー!」

「ひぃひぃふぅぅぅ!」



そうして、応援しながら呼吸を合わせていた俺たち。

どれぐらい続けていたかはわからない。

短いような長かったような時間を過ごし、ついに産婆が子供をとりあげる。



「陛下、元気な男の子ですよ!」

「そうか、よかった…」

「お母様、頑張ったね!」

「リリー、お疲れ様、ありがとう…」



ここでアカネはダンジョンコアのウィンドウを開き、薬を取り出す。

この場で一番落ち着いているのは彼女だろう。



「王様、造血剤です。リリーさんに飲ませてあげてください。

これで少しは楽になるはずです」

「すまない、アカネ殿。助かる。リリー、飲めるか?」

「あ、あなた?大丈夫よ、飲めそうだわ」



母上が薬を飲み、一息ついた。

清潔な布に包まれた赤ちゃんが産婆の手によって、運ばれてくる。



「あなた、この子の名前は決まっている?」

「ああ、コルネリウスだ」

「コルネリウス…」



俺は弟の名前を口ずさみ、頭に刻む。

先ほどまで一緒に呼吸を合わせていた俺たちを気遣ってか、侍女たちが水を運んできてくれる。



「ふう、生き返る~!」

「アンタ、だいぶ力入っていたもんね」

「ふふっ、ありがとう。ディーネ、アカネさん」

「俺もいたんだが…」

「あなたも、薬、その、ありがとう…」

「う、うむ」



母上は口移しで飲まされたことを覚えていたようで、赤面した顔でお礼を言う。

父上も顔が赤いが、何食わぬ顔で返事をしている。

周囲は微笑ましそうに父上たちを見ている。



「今日はゆっくりと休め。俺もあとで様子は見に来る。

寝ていたら起こさないようにする」

「ありがとう、あなた。さすがに、疲れたわ…」


「…寝ちゃったね」

「そうだな、長時間の出産だったし、疲れもするだろう」



俺とアカネも母上が寝たことに安堵して、父上と共に私室を出る。

アカネはその後もコアのウィンドウを開きながら、父上に話しかける。



「王様?リリーさんの様子は私も見ておくから、休めるときは休んでて。

必要になったらたたき起こすから」

「ああ、頼む。あの一撃はよく効く」

「ちょっと根に持ってる?」

「いや、王である俺にあのようなことができるのはアカネ殿くらいだろうなと感謝しているのだ」

「なら、よし!じゃあ、私は戻って様子を見てるね」




「ディーネ、アカネ殿は優秀だな」

「まあ、前世でも暴れていたようですからね」


こうして、王家に新たな一員が加わった。

コルネリウス。

まだしわくちゃな赤ちゃんだし、俺が守ってやらないとな!

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