恐怖の案内人ダモナーその3
Side Cランクパーティ黄金の爪
昼食を終え、俺たちは食休みとしてまったりとしていた。
ちょっと警戒を解いていたために、その音に思いっきりビクついてしまった。
『ポンポンポンポン』
「はあ、なんだ。ダモナーか」
「何度聞いても慣れないわね、この音」
「今度はなんなんだ」
「もう疲れた」
「楽しんでほしいと思ったから、ボードゲームを持ってきたんダモナー!」
「ゲームで遊んでほしいんダモナー!」
「ボードゲーム?」
「なに?休憩していていいの?」
「またわからんものを…」
「楽しそう、ちょっと元気出てきた」
小さなダモナーたちがテーブルに、ゲームのセッティングをしてくれる。
ダモナーがルールが書かれた紙をジュリーに渡している。
しばらく遊んでいていいってことか?
ちょっとスタミナ切れてきたとこだったから助かるな。
「じゃあ、またね!なんダモナー!」
おっきいダモナーはそのまま帰った。
小さなダモナーはこのまま遊びのサポートをしてくれるようだ。
ジュリーとデンは両隣に小さなダモナーを侍らせている。
ホントに可愛いか?そいつら。
俺には笑い顔がニヤついているようにしか見えんぞ
ダモナーから視線を外し、ジュリーのゲーム説明をしっかりと聞く。
どうせならと真剣にゲームをしようとする俺とガンツ。
俺たちは楽しんでいた。今がどんな状況なのかも忘れてゲームに熱中した。
「ははっ!やったぜ、伯爵令嬢に告白成功!結婚だってよ!!」
「いい人生を歩んでいるわね、私なんてさっきの落とし穴で資産半減よ」
「俺も領地運営に成功して、大金が入った」
「ちっ!」
デンはボロボロな人生を送っている。
そら、あれだけ何度も負けるギャンブルに手を出せば、資産もなくなるわ。
俺たちはホントに和やかに楽しんでいた。
だが、唐突に終わりを告げる音が鳴り響く。
『プシュー!』
「くそっ、忘れていた!」
「今いいとこなのよっ!」
「とにかく、逃げるぞ!」
「くそがっ」
今度の【鬼】はなんだ?
文字が読めん。
だが、【鬼】の走る速度は、今までと比べると遅い方だ。
走る速度は徐々に落ち、すでに歩いている速度だ。
俺たちは慌てず、壁際まで走り切った。俺たちは【鬼】の行動を見つめる。
そして、奴はやってはいけないことをした。
休憩所のテーブルを思いっきり、ひっくり返したのだ。
そう、ゲームをしていたあのテーブル、をだ。
『ああああああああ!』
「やった」
そして、やるだけやって【鬼】は自主的に帰っていく。
いや、小脇に小さいダモナーも抱えているな。
ダモナーは暴れているが、抵抗虚しく連れていかれた。
「嘘だろ、俺、結婚までたどり着いたのに…」
「私はもう少しで、一番でゴールだったのに…」
「俺も大金手に入れたのにな…」
「私はいい気分」
やるせない気分になっているとこに、再び音が鳴る。
『プシュー!』
「ちくしょう、間隔が短い!」
「逃げるわよ!」
「大丈夫だ、これだけ距離があれば…」
「そういうのはフラグ」
【鬼】が現れた。今回は三体も。
『スリッパ』『バンブーブレード』『スライム』
なんかよくわからんが、スライムだけはヤバいのがわかる!!
俺たちは再び走った。
まず、デンが『スリッパ』に頭を叩かれる。
その後に、ガンツが『バンブーブレード』で尻を叩かれた。
最後に捕まったジュリーは、小さなダモナーたちに磔にされていた。
準備完了とばかりに小さなダモナーたちがサムズアップする。
それを受けてダモナーが敬礼する。
ジュリーの頭上からドロドロの粘液が降ってくる。
服が肌にピッタリと張り付いて、とても扇情的だ。エロい。
そんなジュリーがゾンビのごとく近づいてくる。
その姿は扇情的でエロいのだが、そのドロドロには捕まりたくない。
「いいいいやああああ!」
「おい、こっち来るなっ!」
「ジュリー、落ち着け」
「逃げろ、逃げろ」
これだけの被害を出したというのに、【鬼】はまだ帰らない。
そんなとき、床の板張りがいくつもひっくり返り、何かが飛び跳ねて現れる。
今度は【白い鬼】か。
胸に書かれてる文字は…
『お助け鬼』
なんだ?俺たちを助けてくれるのか!?
【白い鬼】は【黒い鬼】を追い払うように立ち回り、俺たちは安堵の息を吐く。
時間になったようだ。
『プー!』
あの軽い音が鳴り、渋々と【黒い鬼】だけが帰っていく。
「よくやった、お助け鬼!」
「まだベトベトおおおお」
「見習わなければならない動きだった」
「感謝する」
約一名を除いて、お助け鬼に感謝をしていた。
俺たちはやれやれと言った感じで、休憩所のテーブルに戻ろうとしていた。
そのとき、お助け鬼たちが震えて、【黒い鬼】に変貌する。
「うっそだろ、お前っ!」
「ああああああああ!」
「そんなうまい話はないよな!」
「嫌がらせがひどい」
今回の【鬼】の胸に書かれている文字は…
『激流』
そう書かれていた。なんだ?ちょっとわからんぞ?
あ、【罰】の内容を考えていたら、簡単にジュリーが捕まった。
また小さいダモナーたちがジュリーを磔にしていく。
準備完了のサムズアップ、敬礼の流れをしてダモナーが何かを押す。
大量の水がジュリーに向かって虚空から現れる。
バッシャバッシャと大量の水をかぶるジュリー。
よかったな。これでベトベトは洗い流されたんじゃないか?
一連の流れを見終わった俺たち。
近づくとジュリーの様子がおかしい。
「ふっ、ふふっ…
ちょっと、ダモナーちゃんたち?集合しようか?お姉さんとお話し合いしよ?」
「おい、大丈夫かっ?」
「絶っ対、許さないわっ!腹から綿取り出してあげるわああああ!!」
「おい、止まれって!!」
軽快な動きで小さいダモナーたちは、あちこちの扉に消えていく。
大きなダモナーは舌を出し、あざ笑ってから扉に消えた。
あいつら、怖いものなしかよ…
その後、夕食を食べた。
その準備の際にも、ジュリーはダモナーたちを追いまわしていた。
笑う小さいダモナーたちに、振り回されただけで終わっていたが…
お前ら、ジュリーの機嫌を直すの俺たちだぞ?
責任持ってくれよ、お前らが。その身で…
そして、就寝。
今、夜襲が行われたら、逃げるのなんて無理だ。ホントに疲れた…
だが、予想通りに夜襲は行われた。
天井から大きなダモナーが降りてきて、俺たちに魔法的なビンタをした。
そして、ケラケラと笑って帰っていった。
その後には、小さいダモナーも来て、ひたすらに楽器を鳴らしてきた。
俺たちはキレた。
小さいダモナーたちを追いかけまわし、追い払った。
今度こそと、寝ようとしたら、また現れる小さいダモナーたち。
今度は身体に鈴をつけて、俺たちの周りを走り回る。
無視しようとしたが、我慢できなかった。
俺たちは再び追い回して、無駄に体力を浪費しただけに終わった…
俺たちの中でダモナーに対する怒りは膨れ上がっていた。
夜襲対策に俺たちは起きていることにした。
それでも奴らは俺たちをあざ笑うかのように…
時に頭上から現れては、一発叩いてから、笑い声を残して扉に消える。
『ポンポンポンポン』
それを何度か繰り返したと思ったら、あの音が鳴る。
警戒している俺たちはビクッとなりつつも、壇上の方を見上げる。
疲れ切った顔で見上げた先のダモナーを見つめる。
「ごめんなんダモナー?」
「もう何もしないから、ゆっくり寝ていいんダモナー!」
笑顔のつもりなのか、ケラケラとした笑い声に俺たちは怒りを感じた。
だが、疲れていたのは本当なので、その言葉を信じようと横になった。
朝になったようだ。
みんな、結局怒りのまま警戒していたせいか、寝不足だ。覇気がない。
ダモナーたちが朝食を用意してくれる。
俺たちはそれをぼーっと、見つめることしかできなかった。
誰から動いたかわからないが、朝食を食べる。
味はもう全くわからなかった、たぶん美味しいと思う。
時計を見る。ようやく終わる。この地獄の時間が終わる。
『プシュー!』
もう少しで終わると思った。終わると、思ったのに…
気を取り直し、これで最後の【鬼】かと、箱の方を見る。
ダモナーたちが蛇腹に折られた硬そうな紙を持っている。
そして、ゆっくりと近づいてくる。
俺たちはその光景を、光の失った目で眺めていた。
ケラケラとした笑い声が聞こえ、可愛いはずの顔が悪魔に見えた。
奴らは俺たちを四つん這いにして、頭と尻を一発ずつ殴って帰っていった。
ケラケラと笑い声を残して…




