恐怖の案内人ダモナーその2
Side Cランクパーティ黄金の爪
俺たちは今、真ん中の休憩所に集まっている。
さっきの被害は俺とデンだけだ。
ジュリーは俺が叩かれているの見て、笑っていやがった。
ガンツは守ろうとして失敗したため、落ち込んでいる。
「はい、リーダー。お水」
「これはあの施設にもあった『ペットボトル』か。はあ、うまい」
「あの【鬼】、許さない、屈辱を受けた」
「デン、魔力が漏れている、落ち着け」
俺たちはまた【鬼】が現れるだろうと思われる箱を、ジッと見つめる。
そんな中、軽い音が鳴る。
『ポンポンポンポン』
俺たちはビクつく。
そして、ダモナーが現れて、安堵の息を吐く。
「ルールは理解できたんダモナー?」
「ふざけんな!何が俺たちの力を見せてほしい、だ!
お前たちの遊びに付き合ってる暇はないんだぞ!」
「そうだ。こんな悪ふざけに俺たちは付き合うつもりはない」
「そうね。いくらなんでも悪戯が過ぎるわ」
「怒っている」
俺たちは怒りのままに叫ぶ。
それだけ屈辱的だった、あの『スリッパ』の一撃と四つん這いは。
まあ、俺は三発も殴られたんだがな!
「怒らないでほしいんダモナー!」
「じゃあ、最後までやりきったら、追加報酬を個人に出すんダモナー!」
そして、重たい袋が床に落とされる。じゃらっと大きな音を立てた。
中身はパッと見、銀色じゃない。金色だ。
くそっ、金で釣る気か!
でも、金貨か。あれだけあれば、装備の更新とか色々できるな…
俺たちの誰かはわからない、生唾を飲み込む音がした。
そこに叩き込むように、奴らは言う。
「頑張ってほしいんダモナー!」
「【最後まで】やりきったら、この金貨を【個人ごと】に出すんダモナー!」
言っていることは、さっきと変わっていない。同じことを言っただけだ。
だが、なぜか強調されて言われているように聞こえる。
【最後まで】やりきれば、【個人に】あの金を出す。
「くそっ、俺はやるぞ!こんな馬鹿にされたままじゃ終われねえ!
金のためじゃねえからな!俺のプライドのためだからな!」
「俺もだ、次こそ守りきってみせる」
「二人がやるなら私ももうちょっと頑張るかー、お金欲しいし」
「お金!お金!」
そうして、俺たちは乗せられた感が否めないが、この『遊び』を続行した。
「よかったんダモナー!」
「みんな生きるためにはお金が必要なんダモナー!」
くっそ、煽ってきやがる!ホント腹立つな、こいつら!!
俺とガンツのこめかみはピクピクと青筋立てているぜ!
「じゃあ、頑張るんダモナー!」
そう言って、ダモナーが去っていく。
俺たちはその背中に憎悪を向けていたが、ここであの音が鳴る。
『プシュー!』
【鬼】がまた現れた。今度はなんだ!
『バンブーブレード』
バンブーブレード?それって、東洋の子供の習い事用の剣じゃなかったか?
何をされるんだ?まさか?
嫌な予感を感じつつ、俺は指示を出す。
「ガンツ!今度はお前も逃げろ!的を絞らせるな!!」
「わかった!」
「またなにか痛いことされるのかしら?」
「(がくぶる…)」
俺たちは走り回ろうとする。だが、いかんせん逃げ場がない。
気が付いたら、俺たちはかたまって集まっていた。
「くっ、どうする!?」
「さすがにこの状態は守り切れんぞ!」
「弄ぶかのように、ゆっくり歩いてくるのがムカつくわね…」
「どうしよう」
ゆっくりと迫ってくる【鬼】。その手に握る『バンブーブレード』を鳴らす。
まるで、相談させる時間を与えられているようだ。
「せーのっ!で散開するぞ!」
「仕方ない、それしかない」
「あんな奴に捕まってたまるもんですか!」
「わかった」
『せーのっ!』
俺は衣服に異変を感じた。
逃げ出そうとしたのに、何かに引っかかるような感覚を覚える。
壁の出っ張りに服が引っ掛けられている。
俺の後ろにいたのは、ジュリーだ。まさかっ!?
「ごめんねー!リーダー!あははっ」
「お前、裏切ったなああああ!」
「痛いのは嫌なのー!」
「ちくしょおおおお!」
俺はあっさりと【鬼】に捕まった。
そのまま四つん這いにされ、バンブーブレードで尻を叩かれる。
『スパアアアアン!』
「いってええええ!スリッパより全然いてえ!!」
「あはははっ!」
「ジョニー、すまん…」
「生贄は必要」
【鬼】はまだ健在だ。次の獲物を見定めるかのように、三人に視線を向ける。
「ひっ!も、もういいでしょう!リーダーが犠牲になったんだから!」
「く、来るぞ!」
「ひえっ!」
俺の中の何かがはじける。
【罠】にかけられ、【生贄】扱いされたんだ。温厚な俺もキレるさ。
「ははははっ、いけええええ!」
【鬼】が全力疾走する。逃げ惑う仲間たち。最高に笑える。
まず、ジュリーが捕まる。
『スパアアアアン!』
「いったああああい!」
その後、デンが捕まる。
『スパアアアアン!』
「ひぐぅ!」
ガンツはどうやら逃げ切ったようだが、体力は消耗させられたようだ。
『プー!』
例の音が鳴り、【鬼】は帰っていく。
反省会をするかのように、真ん中の休憩所に集まる俺たち。
「リーダーひどい!私たちが追われてるとき笑っていたでしょ!」
「いけ!とも言ってた」
「お前が言うな、俺の服を引っ掛けた奴が!!」
「(はあ、はあ)」
その後も、休憩していたら突然空気が漏れる音が鳴り、【鬼】が現れる。
そのたびに、俺たちは全力疾走をする。
デンが真ん中の休憩所で丸まって隠れていた。
それで【鬼】を回避したときは、頭いいなと思った。
だが、二度目は通じていなかった。
あっさり【鬼】に見つかっていたのには、笑ってしまった。
ジュリーの足が急に早くなったなと感じていたら…
小さなダモナーが現れてジュリーから何かを奪った。
大きなダモナーが
「ズルはよくないんダモナー!」
と言って、装備品を回収していったようだ。
そうか、疾風の指輪をあいつは持っていたな。なんて奴だ!
装備はちゃんと全部預けて来いよなっ!!
ガンツは仲間を守れないことに頭がおかしくなったのか。
それとも、スタミナが切れたのか、壊れたように笑って走っていた。
ダモナーが昼食を用意してくれた。
飯だと言うのに俺たちはピリピリと警戒していた。
ウマいはずの飯の味はまったくわからなかった。
俺たちは何と戦っているんだ…?
そう呟いたら、デンが「強いて言うなら、時間」と言っていた。
そうか、『時間』か。今は昼食を食べたばかりだ。
朝から始まったので、まだ夜と言える時間まで、まだまだかかる。
閉じ込められて、常に【鬼】を警戒して、【鬼】が現れては走り続ける。
ここが地獄か…




