奔走した一年
あれから一年が経とうしていた…
本当に、本当に忙しかった。
こんなに働く四歳児いる!?ってくらい働いた。
まあ、それでも息抜きできる時間があったから、まだ頑張れたけどね。
休みなしのブラック、ダメ、絶対!
もうじき五歳だ、儀式が楽しみだ!
その前にこの一年の働きを知ってもらいたい。俺、ホントに頑張ったんだから!!
まずはゾロのおっちゃんとの話だな。
「おじちゃん、来たよー」
「お嬢様、いらっしゃい。親方呼んでくるから、座って待っていてくれる?」
「ここも広くなったよねー。最初の頃のこじんまりとしていたのが懐かしい」
「そうっすね。あれはあれで、俺たちだけの秘密基地って感じでよかったっす」
「ヤン、お前そんなこと思っていたのか…」
「シャフリ、ヤンはいつまでも少年の気持ちを忘れない男なんだ、仕方ない」
「うるさいっすよ、シャフリにクリス!
悪いっすか、少年の気持ちを抱えていて何か悪いっすか?!」
「まあまあ、ヤンさんもいつか大人になりますよ」
「ペティだけだ、俺の味方は~!」
「ペティ、こいつを甘やかすな。いつまで経っても成長せん」
「クリスは厳しいなー」
「お前ら、もうちょっと静かに出来んのか…
嬢ちゃん、久しぶりじゃな!進捗の確認か?」
「そうだよー。自分の目で確認することの大事さを学んだばかりだからねー」
「んん?じゃあ、まずは各種の量産体制からじゃな。
送風機は順調に数を増やして、まず城に納品しとる。
美顔器の魔道具は、貴族からの注文にも対応できるようになってきておる」
「ふむふむ、いい感じだね」
「ただ、技術を盗もうとする輩が出てきていてな、困っとるんじゃ。
今のところは解析されていないようじゃが、時間の問題じゃろ。はあ」
「技術の問題かー。じゃあ、国に技術を売るってのはどお?
その技術の権利をおじちゃんと国が持つの」
「どういうことじゃ?」
「今は技術に対して、何の守りもないでしょ?
それを国が守ってくれるようにするの。
おじちゃんの技術を使いたければ、ほかの技術者にはお金を払ってもらうの。
おじちゃんは国に技術を売って、守ってもらう。
その技術の権利はおじちゃんと国のもの。
技術を使いたければ、お金をおじちゃんと国に払うの。
もちろん、権利は国にもあるから、おじちゃん以外が勝手に使えば罰せられるよ」
「嬢ちゃんは本当に面白いことを考えてくれるの。
うむ、そうしてもらえるとワシとしても助かる」
「ただ、国にも権利があるからね。
おじちゃんの技術が他国にも渡る可能性があることも覚えておいてね?」
「ガハハッ、ワシの技術が他国にも伝わるとはいい気分じゃ!
ワシの名を世界中に広めてくれようぞ!」
「じゃあ、帰ったらお父様と、お母様にも話しておくね。
お母様もおじちゃん以外の劣化品なんて使いたくないだろうからね」
「王妃様に認めてもらえて、ワシも鼻が高いわ」
「でも、おじちゃん、後進もちゃんと育てておいてよ?
おじちゃんの身に何かあった場合に、崩れる工房じゃダメだからね!
何もないのが一番だけど…」
「おお、心配してくれているのか、嬢ちゃん。
大丈夫じゃよ。
最近は護衛を雇う余裕も出てきた、身辺警護もばっちりじゃ!」
「ならよかった!」
「ああ、それと前に置いていった魔石なんじゃがな?
あれはもう作らんほうがいいじゃろう」
「んん?どうして?」
「あれには聖女が魔力を注いだと言っておったろう?
たぶんじゃが、聖女の特別な魔力で不思議な力が宿っておるようじゃ」
「ええ?!じゃあ、今すぐ止めてこないと!」
「もしかして、今も作らせておるのか…
それは早く止めたほうがいいじゃろうな。
あの魔石は国で管理した方がいいと思うぞ」
「わかった、おじちゃん!ありがとう、今すぐ止めてくる!!」
「ああ、それと体感訓練機も順調じゃぞ!
陛下と王妃様が手配してくれた絵師と音楽家で随分と雰囲気が変わった!
まだ量産体制は整っていないが、また確認作業を頼んだぞ!」
「うん、わかったー!じゃあ、聖女様のとこに行ってくるねー!!」
「おう、いってこい!」
慌ただしくおっちゃんの工房を出ていき、アンナの下に行く。
最近はスラム街の子供たちの面倒を見ていると言ってた。
なので、あの建物に馬車で向かう。
「こんにちはー!アンナいる!?」
「なんですか、騒々しい。
私に会いに来た割には、何か焦っているようですが…」
「いや、あれから空の魔石に魔力を注ぎ続けてるのかなあ?と」
「そんなに余裕があると思われているとは、とても不愉快なのです。
あなたが今度はスラム街の子供たちにも魔力訓練を施すように言ったせいで、私の行動範囲が広がり、私の自由時間が減ったというのに…」
「うっ、すまん。でも、多少は魔石に魔力を注ぐ時間はあったんだろ?
どれくらいの量が出来ている?」
「私が注いだ分ですか?それなら木箱一つ分ですね」
「それくらいなら何とかなるか…」
「なんなのです?何かあったのですか?」
「いや、実はアンナには魔石に魔力を注ぐのをやめてもらおうと思ってな。
アンナの聖女の力がどうもすごいみたいなんだ。
だから、特殊な魔石に仕上がるようで、国で管理した方がいいと言われた」
「なるほど、それで慌てて来たのですね。
魔石も回収ですか?
なら、孤児院に向かわねばなりませんね」
「そうなるな、すまん。せっかく注いでもらったのに…」
「いえ、私も不思議でしたから、魔石を作る量は制限していました。
よかったですね、私が賢くて」
「ああ、ホントに助かる。回収した魔石は国で管理することになると思うよ」
「では、割と急ぎですね。
私も馬車に乗せてください。
早いに越したことはないでしょう?」
「ああ、そうだな。頼む!」
急いで馬車で孤児院に赴き、魔石を回収する。
別れの言葉も少なく、急いで城に戻って父上に相談だ!
「ふむ、お前の事業の一環で出来てしまった聖女の魔力入りの魔石か。
たしかに不思議な力を感じるな」
「陛下、これは宝物庫で管理するのがいいでしょう。少々、数が多いかと」
「そうだな、厳重な管理が必要になるだろう。手配を頼む」
「それで?話はそれだけじゃないと…」
「魔道具店のゾロの技術を国で買ってほしいのです」
「それはなぜだ?」
「技術を国が買い取ることで、ゾロの技術を国が守ることになるのです。
今は技術に対して、何の守りもないのです。
技術を盗まれた場合、送風機や美顔器の劣化品が出回る可能性があります。
それを防ぐための策です。
国で買い取るわけですから、ほかの技術者が使用する際には金銭が発生します。
その技術を勝手に使えば、国が罰することもできます。
そうして、国が技術者の技術を守っていくのです」
「国が技術者の技術を守る、か。国に利もあるようだ。議題にあげておこう」
「ありがとうございます、陛下!」
「……」
「どうかされましたか、陛下?」
「ディーネ、そのような他人行儀はやめてくれないか。
俺の精神が削れていく…」
うっ、しょうがないな、この親父殿は。サービスだぞ?
そろそろ娘(?)離れしてほしいものだ。
「ありがとう、パパ!大好き!!」
「ディーネええええ!!」
大臣や文官勢も羨ましそうな視線を向けてくる。
ホントに大丈夫なんだろうか、この国。
「みんなも国のために頑張ってね!疲れたら無理せずにちゃんと休むんだよ?」
「ディーネ様ああああ!」
ああ、もう!
母上のとこに行こっと。
送風機や美顔器の魔道具のことも報告しないとね。
体感訓練機のこともね。
母上のとこに行くと、兄上が母上に抱き着いていた。
兄上もまだまだ甘えたい年ごろかと見ていた。
だが、赤面した兄上が俺に勘違いしているとおっしゃる。
「ディーネ、これは違うんだ!」
「うんうん、お兄様もまだまだ甘えたい年ごろなんだよね?
大丈夫だよ、私はその辺りわかっているから」
「全然わかっていない!母上からも説明してください!!」
「あら、私はまだまだ甘えてきてもらっても構わないのだけど…?」
「母上っ!」
「ふふっ、あんまりからかうと可哀そうね。
ディーネ、あなたに弟か妹が出来るのよ?」
「えっ!?初耳なんですけど!!
たしかに最近、母様の腹部が大きくなってきたなって思っていましたが…」
「どういう意味で大きくなったと思っていたのかしらねえ?
そんなことを言うのは、この口ですか~?」
「いひゃい、いひゃいです、おかあひゃま!」
「まったく…」
どうやら、最近の父上の頑張りのおかげで、父上は昔の姿に戻った。
母上がそんな父上に惚れ直したようだ。
夫婦の仲にも役立つ体感訓練機、恐るべし…!
「それで?ディーネは何かを報告しに来たんじゃないの?」
「あ、うん。お兄様。
お母様のおかげで魔道具店のゾロの店に支援が行きわたりました。
送風機、美顔器の魔道具の量産体制が整い始めました。
体感訓練機もお父様とお母様のおかげで、随分と様変わりしたそうです。
今度、それを確認しにいくつもりです」
「それはよかったわ。
今の私じゃ使えないからと思ってアレクに譲ろうと思っていたのよ。
けど、新しいのができるのならそっちの方がいいわよね?」
「はい、母上!僕も触ってみたかったのです。
ディーネ、いつ確認にいくのだ?!僕も連れて行ってくれ!!」
「近々としか言えないですね。そんなに急いでいる案件でもないので」
「むぅ、なるべく早くで頼むぞ!僕だけ触っていないんだぞ!?」
あー、そっか。
俺も確認のために触ってるし、父上と母上にも使ってもらった。
アレクだけが使っていないわけだ。そら悔しいわな。
「お兄様は普通の訓練では満足しないのですか?
訓練の量を増やしてもらうとか…」
「恐ろしいことを言うな、ディーネ!僕は体感訓練機で遊びたいんだ!!」
「わかりましたよ、お兄様。
なるべく早く行けるようにするので、お兄様も通常の訓練を頑張ってください」
「頼んだぞ、ディーネ!」
はあ、兄上の我儘に付き合うのもたまにはいいか。
そんなこんなで、忙しい一年が過ぎていったとさ…




