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【本編完結】異世界男の娘【連載版】  作者: 物部K
魔法学園卒業後

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待ちに待った卒業パーティ

Side コルネリウス


奴の監視がやっと外れた。今しかない。

ずっと隠し持っていた、日付が変わるたびに何度も何度も書き直した手紙。

ようやく『君』に渡せる。

待っていてくれ、『エリー』!




Side ディーネ


あれから長かった。

一年半という時間は監視し続けるには、かなり苦痛な時間だった。

家にはほぼ寝に帰るだけ。

そのせいで、アカネの視線がどんどん、どんどん険しくなっていった…

俺は毎日逃げるように、魔法学園に監視に来ていたのだ。

きっとアカネも俺のことを監視しているので、余計なことはできない。


そして!ようやく今日!待ちに待った!卒業パーティだ!

この日までの調査で驚くべきことがわかったこともあれば…

衝撃的なシーンを見たりと、本当に色々とあった。

もうお腹いっぱい、さっさと終わらせて帰りたい。

コルネリウスの考えていることもわかって、安心できた。

『一人』でよく頑張ったなと褒めてあげたい。



会場にはエリザベス嬢がまだ来ていない。

今頃きっと、コルネリウスの本音を知って泣いているのだろう。

さっき、コルネリウスからアイツの監視が外れたのは確認済みだ。

さあ、終わらせようぜ!

帝国の遣いさんよ!散々舐めた真似しやがって、許さねえからな!




卒業パーティが始まる。

各々が美しいドレスや凛々しいスーツや仕事着に身を包み、パーティは進行する。

そんな中、ガラスが割れる大きな音が鳴り響く。

悲鳴が響き、なんだなんだと騒ぎが大きくなる。


そして、騒ぎの中心の場だけがぽっかりと広く間がとられていた。

そこには騒ぎの中心人物たちがいた。

コルネリウス、いよいよやるんだな?



コルネリウスがエリザベス嬢の足元に向かって、グラスを投げつけたようだ。

エリザベス嬢は静かに俯いている。

だが、エリザベス嬢には一滴もかかっていないようだ。ドレスにも、だ。

器用だな、あいつ。

彼女の足元はワインのシミだらけになった絨毯が見える。

ほとんど飲まずに投げたのか?もったいねえ。


エリザベス嬢に対抗する位置に立っているのは、コルネリウスとあの女だ。

誰もがコルネリウスが婚約破棄宣言すると思っているのだろう。

普段からあの女、リルフィ嬢をそばに侍らせていたからな。

だが、周囲の期待を裏切って、開口一番に言った言葉は…



「ダン講師!警備兵!ここに来い!!なんだこのまずい酒は!?」



「コルネリウス殿下、悪ふざけもよしてくださいよ。

卒業パーティなんですよ?しかも、酒がまずいって…

殿下、『一口』も飲んでいなかったじゃないですか」



その言葉にその場に一緒に呼び出された警備兵がぎょっとする。



「ほお?貴様。今、何と言った?

俺が『一口』も酒を飲んでいないと言ったな?いつから俺を『監視』していた?」



失言に気付いたのだろう、ダンが慌てる。



「いや!これだけの絨毯のシミを見れば、酒の量なんて、誰だってわかりますよ。

やだなー、もう。ははっ」


「おい、警備兵。お前はこの絨毯のシミを見て、そんなことがわかるか?」


「いえ、わかりません!

酒の量は多いとは思いますが、『一口』も飲んでいないとは思いません!」


「だ、そうだが?誰でもわかるとは、どういうことかな?

ダン講師、いや、帝国のダンよ」



警備兵が「帝国」という言葉に驚く。



「ダンよ。失言だったなあ。

『一口』も飲んでいないなんて、監視でもするかのように、ずっと見ていないと、わからないことだぞ?」


「帝国?なんのことです?俺はこの国の魔法学園のただの講師ですよ?

それに飲んでいないのを見ていたのだって、たまたまだ!」


「警備兵!ダンの両脇を押さえろ!!」


「はっ!!」


「なっ!?何をする気だ!」


「いやな?こんな場面で悪いとは思うのだが…

姉上が昔、ふざけて教えてくれたことを思い出してしまってなあ。

それを試そうと思って、な?」


「お前の姉だと?まっ、まさか!?」


「たしか…

こう、だったなぁ!!」


「ぐぼぁっ!!」



腰の入ったいい拳だ、コルネリウス。よくやった!

殴った拍子に、口の中から何かが飛び出した。

何かが仕込まれた歯だ、恐らく毒だろう。

コルネリウスめ、手が込んでいやがる。

殴る位置を調整して、仕込み歯が抜けるように殴ったな?


「手の空いた警備兵、急いでその仕込み歯を調べてこい!

帝国特有の毒が仕込まれているはずだ。取り扱いには注意せよ」


「はっ!」


「ぐぅっ…

俺にこんなことをして、ただで済むと思うなよっ!」


「ほう?もう本性を現したか。思ったより早かったな?

警備兵、もういい。そいつは独房にでも入れておけ、取り調べは後日行う」


「くそがっ!」


「キリキリ歩けっ!帝国の尖兵めっ!」



ダンが会場から連れていかれて、卒業パーティの会場は静かになった。



「さて、君の処遇も考えねばな」


「なぁに?コルネリウス様ぁ?」


「もう馬鹿のふりをしなくてもいいぞ。奴の監視もなくなったんだ」


「いつから、気づいていたのっ!?」


「ほぼ最初からだな。確信に至ったのはその後、随分と後だったがな」


「最初から!?なんで、そんな…」


「ずっと君を泳がせていた。

反応を見るために『王家の神髄』なんて言葉で釣ってみたが…

案の定の反応を見せたな。笑いをこらえるのが大変だったよ」


「くっ、馬鹿にして…!やっぱり、『王家の神髄』なんてなかったんだ!」


「それはどうだろうな?…さて、これで君は『ある程度』は自由の身だ。

情報提供者からは『帝国の密偵なんて嫌だった』と聞いている。

完全な自由は与えられないが、それでもマシな生活は出来るぞ?」


「なんで…?その話は『彼』にしか、していないのに…」


「その『彼』が、君の助命嘆願を直接、俺にしてきたんだ。

俺はその願いを聞き入れようというのだ」


「なんで、どうして…?『グリドール』!秘密にしてって言ったじゃん!!」


「すまない。どうしても、君を助けたかったんだ…」



彼女を庇い、直接王族であるコルネリウスに助命嘆願までしたのは…

ほかでもない、グリッジ魔道具店の息子の、あの『グリドール』だ。


グリドールは現在、魔道具学の講師をしている。

彼女の一目惚れだったのか、グリドールの一目惚れだったのか。

はたまた、恋を育んでの愛だったのかは、今になってはわからない。


だが、二人は愛し合う仲になった。

誰に対しても刺々しかった彼女も、グリドールにだけは心を開いていた。



彼は彼女の秘密を聞き、大いに悩んだ。

助けてやりたい。だが、相手は帝国の密偵。

その存在が、もし知れ渡れば…

二人は離れ離れになるどころか、共倒れにもなる可能性があった。



そして、彼は助命嘆願すべき相手に王族のコルネリウスを選んだ。

なぜ、コルネリウスなのか?

と問えば、彼は監視され、自身の婚約者に誤解を与えたままだからだ、と。

たしかに、アレクに話せば助命などせず、密偵を殺すように言うはずだ。

他の王族も同様だろう。

今回は、同じように愛し合う二人の悩みを理解できる者…

つまり、コルネリウスだからこそ、妥当だったのだ。



彼女の話によれば、コルネリウスは自分の同僚に監視されている。

同僚の目がコルネリウスから外れる瞬間は、自分ならちょっと調べればわかる。

だから、彼は賭けに出た。




それはコルネリウスが待ちに待った監視の目が外れたときだった。

グリドールはその大事な時間に直訴したのだ。


あのときのコルネリウスは視線で人を殺せるレベルだった。

それほどまでに待ち望んだ時間だったのだから。

だが、ここで騒げば監視が戻ってくると思い、彼の話を聞いた。

その内容に必死に心を静めて、彼の願いを聞き入れた。


卒業パーティの直前に、必ず監視の目が外れる瞬間があると教えてくれたのだ。

だから、コルネリウスは我慢したのだ。

自分が我慢することで、愛しあう二人を守れるなら、と。

自分には次があるとも教えてもらったのだ。

だから、我慢すると決めたのだ。




その会話を見ていた俺は感動していた。

コルネリウス、お前!大人になったな!って。


だが、コルネリウスはこうも言っていた。

『お前のせいでエリーを悲しませる時間が延びたのだ。この貸しは高くつくぞ』

と、射殺すかのような視線を向けて。


本当によく我慢したよ、コルネリウス。

偉い偉い!その脅しがなければ、もっとよかったよ!




「馬鹿だよ、アンタ!

私のことなんて忘れて、幸せになればいいのに!!どうして!?」


「もう、君を愛してしまったから。もう、ほかの誰かじゃダメなんだ…」


「私はたくさんの男を侍らせてきたんだ!アンタだって、その内の一人だよ!!」


「ははっ!

嘘だな、お前が唇を許したのはこの男だけじゃないか。

俺の方では調べがついているぞ」


「~!」


「殿下、戯れはそこまでにしてくださいよ…」


「ははっ、すまないな。

お前には俺の大切な時間を奪われたから、つい意地悪してしまった!」


「…そうだ!君の本当の名前をまだ聞いていなかったな。

偽名なんだろ?愛する人の名前は知っておきたいんだ。教えてくれないか?」



そこで俯きだすリルフィ。

何か嫌な予感がする!俺は人ごみの中を必死に前に出ようとする。




リルフィが突然テーブルのナイフを掴む。その手は震えている。



「ははっ、王族のアンタを殺せってさ。

私の呪いが止まらない、止められない!!」


「なにっ!?あの男の仕業か!!」


「もうこうなったら、私が死ぬしかないよ。私にはどうしようもないからね。

私にも仕込み歯がある。この毒なら一瞬で死ねる」


「やめろっ!やめてくれ!!おい、止めるな!!待ってくれ!!頼むっ!!」


「グリドール!私の本当の名前は『リルフィーネ』!

アンタには『フィーネ』って呼ばれたかったな…

愛しているわ、グリドール…」


「フィーネええええ!」



くそっ、間に合わないのか!?

この大事な局面で!誰か、誰でもいい、頼む!!




そのときだった。凛とした声がやけにハッキリと聞こえた。



「まったく、カオルったら、こんな大事な場面で役立たずなんだから。

仕方ないから助けてあげるわ」


「…アカネ?」


「ほら、飲みなさい。ぐいっとね。はい、治療完了っと。

…うん、呪いも綺麗さっぱりなくなっているわね?さすがエリクサー」



周囲からは最後の方の言葉は小声で聞き取れなかっただろう。

だが、治療ができたという言葉はしっかり聞き取れたはずだ。


周囲が固唾を飲み込む。

あの女、リルフィーネがゆっくりと目を開く。

おもむろに手をにぎにぎとして、不思議そうな顔で「…生きてる?」と呟いた。

その瞬間、会場は爆発したように歓声があがった。


グリドールが泣いて彼女を抱きしめる。

リルフィーネは訳が分からずに呆然としている。

コルネリウスの隣に移動していたエリザベスが喜びで涙ぐんでいる。

そのエリザベスの肩を抱くコルネリウス。様になっているな、お前。



アカネはそんな会場の混乱の中をさっさと抜けて、扉から帰ったようだ。

すまないな、アカネ。助かったよ。

帰ったら、うんと甘やかしてやるからな!




さて、本格的にあの男だけは許せなくなったな。

お前だけは逃がさない、ダン。




Side ディーノ


その日の夜遅く、深夜と言っていい時間帯の城の森の中。

男は走って乱れた息を整えていた。

その男、ダンは城の中にいる帝国兵の手引きで脱走していた。



「くそっ、何が何でも逃げ延びて、この国の情報を伝えねば…」



静かな森の中、男の声は響く。



「ちくしょう!

アイツは消えたって噂が本当だと思って、伝えた瞬間にこれかよ。

本国の間抜け共がこのまま動いたらまずい!急いで逃げて伝えなくては…」


「ほお?俺のことは消えたと伝えたのか。それは好都合。動きやすくなるぜ」


「…てめぇ、ディーノ!生きていやがったのか!?」


「いつから死んだと思っていた?

そして、お前は逃げられないし、逃がさない。

一生、お前は魔力を吸われ続けるんだ。死ぬまでな。

簡単には殺さないから、そのつもりで反省していろ」


「なんだと!魔力を吸われ続けるだと!?何を言ってやがる!!ぐはっ!!」


「さて、この俺が作った特注の魔力の枷を嵌めてもらうぞ。

向かう先は地下深く、誰も助けが来ない、助けに来れない牢獄だ。連れていけ」




「くそがぁ…」





ドールがダンを地下牢獄へと連れていく。

はあ。ゴミ処理も終えたし、城内の帝国兵も捕まえた。

今回の仕事はこれで終わりかな?っと。


最後の最期で女装は解いちゃったけど、まあ仕方ないよね?

女装のまま、アカネを甘やかすわけにもいかないし…




女装のまま甘やかして、アカネがハマってしまったらどうしよう…

頭を振って嫌な考えを振りきり、俺は家に帰るのだった。

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