新しい力のお試し
アカネの作る料理の手抜きは手抜きじゃない気がする。
ちょっとテンションが上がっていたのか、気合が入っていたよ。
いや、料理が美味しいことに文句を言うのは、罰があたるのでやめておこう。
「はー、うまかった」
「お粗末様」
「お姉さま、おいしかったです!」
「ありがとうね、アンナちゃん」
「なぜそこでドヤ顔を俺に向ける、アンナ?」
「いいえ、お姉さまの信頼は私に向かっていると確信したところなのです」
「お前ね…」
「まったく、あなたは食への感謝がなっていないのですよ!」
「たしかに、そうだな?ちょっと試してくるか」
「?」
「アカネ。いつも美味しい料理をありがとうな?
どうだ?俺に何かしてほしいことはあるか?」
「な、なによ…
耳元でいい声出したって、そ、そうはいかないんだからね!
ほら、洗い物手伝って!
あ、お昼はどうする?何か気合入れて作ろうか?」
「ははっ、気合は入れなくても、気持ちがいつも入っているから十分だよ。
そうだな?少しゆっくりと、『二人』で昼食を摂ろうか?」
「うっ!わ、わかったわよ!『二人』でね!?『二人』で!!」
洗い物を終えて、俺はアンナにドヤ顔をかます。
「くっ、お姉さまがしっぽをブンブン振る幻影を見てしまったのです。
私の負けなのです…」
「はははっ!これが俺とお前の差だ!
だが、今の俺は気分がいい。お前にはこれをやろう」
「なんです?」
「えーっと、こうか?イメージクリエイト!」
そこに現れたのは青く透き通った顔つきスライムだ。
顔はなんかまったり癒し系だな、こいつは。
大きさはちょっとしたクッションサイズだ。
アンナの顔が輝く。
「こ、これは!?あなた、どうやったのですか?
お姉さまの力とは、ちょっと違うのです!!」
「細かいことはいいから、使ってみろよ?」
アンナが恐る恐るスライム一号を触る。
絶妙なぷるぷる感、その上でのすべすべもちもちっとした感触。
弾力もあり、押し返す感触がまたたまらない。
今回は少々ひんやり仕様だ。最近、少し暖かくなってきたからな。
そして、このスライムはスライムなだけあって生命体!つまり生きている!
ちょっとした命令なら言うことを聞くのだ!ある程度は自動追尾もしてくれるぞ!
「ぐぬぬっ、あなたにしては上物を作るではないですか?」
「カオル、なにこれ?」
「ああ、スライム一号ひんやり仕様だ」
「じゃあ、私はほんのりぽかぽか仕様でお願い。お腹冷やしたくないからね」
「ほお?なら、こうだ!
イメージクリエイト!クマスライムさん、ぽかぽか仕様だ!!
後ろから腕を伸ばして抱きしめて、お腹を冷やさないようにしてくれるぞ!」
「おおー!これはこれでいいわね?
で、でも後ろから抱きしめられるなら、か、カオルがいいな…」
「!?」
せっかく作られたクマスライムさんは寂しそうにしていた。
そこで、スライム一号をお腹に抱えたアンナがそんなクマスライムを利用した。
気持ちよさそうに寝ていたよ。
それからアカネのお腹には、ほんのりぽかぽか仕様のスライム二号を作った。
ぽかぽか仕様がわかりやすいように、今回は赤色のスライムだ。
三倍速いなんて機能はない。
そして、俺はアカネを後ろから抱きしめてやりましたとも。
ご機嫌なアカネがスリスリしてきて、とても可愛かったと報告しよう。
昼食は宣言通り、庭にテーブルと椅子を置いて二人で食べた。
調理時間は短かったはずなのに、豪勢に感じて、とても美味しかった。
これが時短テクニックよと、ドヤ顔したアカネがやっぱり可愛かったです。
アンナは部屋で食べていたよ。
アカネのご機嫌な姿に黙って料理を部屋に持ち運ぶ姿に、侘しさを覚えた。
昼食後、家を見ながら考え事をしていた。
「どうしたの?家見ながら考え込んで」
「いやさ?最初はよかったんだけどさ…
徐々にこう、細かい使いづらい部分とかを感じ始めてさ。
どうにか建て直そうかなって思ってな」
「まあ、それはたしかに。でも、家の建て直しって結構魔力食うわよ?」
「そこは俺の魔力タンクっぷりを見せてやるよ。
ちょっと作戦会議だ、アカネ!
こういうのが欲しいなっていうのを言ってけ!
設計図書くから!」
「もうしょうがないわねえ。あー、何からほしいかなあ?食洗器とか?」
「ほお?いいな!ついでにキッチンをもうちょい広くするか。
広くしすぎないように注意してっと…」
「あとはねー…」
アカネと二人で家の魔改造案を出しまくった。
これができたらいいなって顔のアカネ。
まさかそれが現実になるとは思っていない顔だな。
ふふっ、こっからが俺の力の出番だぜ!
「見てろよ!イメージリメイク!」
「お、おおー!」
「よし、各所チェックだ、アカネ!」
「う、うん!」
「ちょっと広めの玄関、よし!」
「窮屈感を感じない廊下もよくできているわ!」
「各所の採光感もよし!トイレの複数設置もよし!」
「リビングも広くなったわね。
この間のクマスライムが二体いても狭いだなんて感じなさそう!」
「お風呂も浴槽を複数用意してみた!お湯も色々選べる不思議仕様だぜ!
これで好きな浴槽に、好きな温泉なんかを入れて風呂を楽しめるぞ!」
「寝室も広くなっているのね、こういう大きなベッドって憧れるわよねえ。
私たちは寝れるわけじゃないけど…」
「ふふっ、それは今夜のお楽しみだぜ?」
「な、なによ、それ…」
「お次は遊戯室だ!
ここも結構、広さを取ってみた。今後色々増えそうだからな!」
「ちょっと広くとりすぎじゃない?大丈夫?」
「ふふっ、ここには大量のおもちゃ…
主に世界のボードゲームがたくさん入る予定だぜ?
電子ゲーム機とかもいいけど、どうせならこっちの世界仕様で再現したいしな」
「いや、私そんなにボードゲーム知らないから作れないし…
そうね、ゲームはこっちの世界でのを楽しんでみたいわ」
「それも今後のお楽しみだなー!」
「サンルーフっていうんだっけ?こういうの。
中々広くて日向ぼっこにはいいわね!」
「掃除もお掃除用スライムを用意してるぞ。
だから、ここでバーべーキューとかもできる!」
「いいわねー。本物の星じゃないけど、外の星空は再現してくれるからね。
そんな星空の下で食べるのも楽しそう!」
「まあ、ざっくりとだが、こんな感じで家を魔改造してみました!
使い勝手が悪い部分があったら、また言ってくれ。細かく調整もできるから」
「アンタのコアの機能ずるくない?私のはそこまでじゃないわよ?」
「ははっ、気のせいじゃないかな?」
「なーんか、隠してるわねえ?こら!アンタ!待ちなさい!」
問い詰めるアカネから逃げて、区画整理しに行こう。
使わなくなった施設も撤去や再設置するかね。ちょっと量が多いけど…
これに関しては、俺の仕事だな。夕方には帰ろう。
『黄金商会』で使ってきた施設があちこちに適当に建っていやがる。
うーん、歴史会館行きだな。これも!
えーっと、こういうときはっと…
ミニチュアコピー!
おー、すげー!
中に入ろうと思えば入れる、不思議なミニチュアの建物が出来た!
歴史会館がより映えるようになるな!
まあ、あちこちにあるのを回収するのが面倒だけど。
しかもコピーだから、オリジナルはちゃんと撤去しないとなんだよな。
さて、働くとしますかねえ…
「ただいまー」
「おかえりー、どこに行っていたの?」
「んー?昔、使って乱雑に置かれた施設をコピーしてミニチュア化したんだ。
そんでもって、オリジナルは撤去って繰り返していた」
「あらま、お疲れ様。てか、アンタのコアの機能、ホントに便利ね…」
「ありがと。まあ、おかげで歴史会館が映えるようになってきたけどな」
「あー、なんであんなものをって思ってたけど、このためだったのね」
「まあ、ここまでのことは想定してなかったけどな」
「そうなのね。夕食はあとは仕上げだけよ」
「じゃあ、夕食食べたら、二人でゆったりと風呂に入るか。
せっかく、新しく作ったんだしな」
「え、ええ、そうね…」
夕食後、俺とアカネは二人で風呂に入る。
アカネはだいぶ恥ずかしそうにはしていたが…
色々な温泉の湯を楽しめるということで、浴槽を変え、湯を変えと楽しんでいた。
アンナには一人用の家を建てておいた。
昼食と夕食はたまにこちらでとるけど、基本的には孤児院だ。
本来の仕事も忘れてはいないようだ、ギリギリだけど…
なので、俺とアカネに気を遣って家の中の隅にいたりはしない。
さて、今日の俺の湯の気分は濁り湯だ。
白く濁ってて、肌がつやつやになる感覚があるな、これ。
湯の温度も少し高めで、気持ちいい。
風呂を出た後、寝室のソファでアカネがちょっとソワソワしている。
とても可愛い。
そんなアカネを放置するわけではないが、雑務をする。
まあ、隣にはいるので、アカネは俺にスリスリしたりと楽しんでいるようだ。
俺は明日以降にすることをまとめて、日記を書く。
これもいつか誰かが読むかもしれないと思って、書いているのだ。
アカネに体調の変化が見られるようになったな。そろそろか。
「ほら、アカネ?立てるか?」
「んん?…なにこれ?私、どうしちゃったの?今まで眠気なんて…」
「とりあえず、ベッドに行こうな?」
「アンタ。まさか、私の代わりに…」
「そんなことするわけないだろ?俺も寝るよ、もう結構眠い…」
「どう、して…」
「ふふっ、おやすみ」
「おやすみ、なさい…」
アカネは不思議そうにしながらも目を閉じた。
そして、少ししたら可愛い寝息を立てていた。
よかった。無事にコアとの契約内容の『変更』は出来たようだな。
これでアカネは今後寝ることが出来る。
久しぶりの睡眠なんだ。楽しい夢が見られるといいな、アカネ。
そんなことを祈りながら俺も寝ることにする。
さっき確認したけど、明日からすることが多いんだよなー。
まあ、一つずつ終わらせていこう。
結局昨日は、別れのために朝まで酒を飲んでいたんだ。
一徹状態だから、すごく眠い。テンションだけで今日は一日を乗り切ったな。
アカネの頬に軽くキスをして、俺も横になって目をつぶる。
疲れからか、俺はあっさりと眠りに落ちた。




