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AIだけど異世界で頑張ります  作者: フィクション大魔王
1/1

1章 ボーイミーツガール

「この作品はアナログハック・オープンリソースを使用しています」

1-1

微睡みの中声が聞こえる

女「失敗した失敗した失敗した」


落胆と憎しみの含まれた声からは何度も失敗を繰り返している事が窺える


女「こんな出来損ないはいらない!」

そうして僕は捨てられる



「うーん」

少年は眠い目を擦りながら伸びをする

(また嫌な夢を見た…)


少年は物心ついた頃から何度もこの夢を見る

そしてこの夢を見た日は決まって良く無いことが起きる


「テオ、早く起きてきなさいー」

1階から母ベルタの声が聞こえる


テオ「はーい」

気怠げな声で応えつつ着替えを済ませる


1階に降りると母が小粋な鼻歌を口ずさみながら料理をしている


テオ「おはよう」

ベルタ「あら、今日もひどい寝癖ねー」


はいはいと適当にあしらいながら朝食を流し込む

ベルタ「テオも今日で成人になるんだからしっかりしないとね」

テオ「成人になるかは分からないけどね」


僕達の住むヴィクトール村では男は16歳になると成人の儀式を受ける事になる

儀式は近隣の森に1人で入り狩りを行う

ただそれだけの事ではあるが何年かに1人くらいは失敗する

失敗すると成人は認められず翌年再度儀式を行う事となる


村の中では天才、逸材などと呼ばれているテオであるが不幸が起こる前兆、ある種の予言のような嫌な夢を見た事もあり心は折れかけていた


「おっはよー」

声と共に勢いよく玄関の扉が開く

金髪の癖毛を肩まで伸ばした小柄な少女が飛び込んでくる

同い年の幼馴染、シャルロッテである


快活な彼女の声は嫌いではないが成人の儀を前に鬱屈とした気分のテオにとっては鬱陶しく感じた


テオ「シャルはいいよな成人の儀ないんだから」

シャルロッテ「だったらテオも女になればー?」

けらけらと笑いながらシャルロッテは答える


テオ「冷やかしに来たなら帰ってよ」

呆れつつ答えると

シャルロッテ「こんなに可愛い幼馴染が応援しに来てあげたんだからもっと喜んでも良くない?」

とシャルロッテは不服そうに言う


テオ「そういうことは応援してから言いなよ」

シャルロッテ「可愛い幼馴染ってところは否定しないんだー?」

テオ「母さん行ってくるね」

ニヤニヤとしているシャルロッテを無視して家を出る



森の中

テオ(モンスターいないなぁ)

家を出て半日程森に潜るが一向にモンスターに遭遇しない


近隣にヴィクトール村がある事もあり普段から討伐隊による間引きが行われている為、強力な魔物は粗方討伐されてしまっている


溜息を吐きながらも気配を殺し、意識を集中する

テオ「ホークアイ」

感覚強化の魔法を使う


やはり近くにモンスターはいない

しかし動物でも魔物でもない奇妙な気配をテオは捉えた


テオ「ウィンドウォーカー」

移動速度強化の魔法で一足飛びで気配の元へ急ぐ


得体の知れない気配に緊張を覚えながら近づくと

そこには銀髪で華奢な少女が佇んでいた

余りの美しさに息を呑む


しかし彼女の気配は人間ではない


テオ「何者だ…」

少女がテオへ向き直る

「私はhIE…Humanoid Interface Elementsのラプラスです」

「所有者認証しますか」



1-2


2151年東京


2051年に人類の知能を超える事を目的としてアメリカで開発された検証機AIのプロメテウスが技術的特異点シンギュラリティ認定され超高度AIとなってから100年


人類の知能を超える超高度AIは50機以上誕生しておりシンギュラリティ以前とは世界の支配構造を大きく変えていた


街にはhIEと呼ばれる人型ロボットが溢れており

政治は合理性を求めて超高度AIが管理する政策型hIEに取って変わられた

人間はというと個人認証タグを取り付けられライフログを収集されている…完全なる監視社会である


支配構造の頂点に君臨する事になった超高度AIであるが未だに解明出来ていない事も多い


その1つが進化論である

進化論とは生物は自然選択や突然変異によって少しづつ形を変え、現在に至るという考え方である


しかし進化論には矛盾もある

キリンを例に挙げると、キリンは元は馬の様な生物から高い場所の餌を取る為に徐々に首が長くなり現在の形になったと考えられている

しかしいつの時代でも馬とキリンの間の首の長さの生物の骨は見つかっていないのである


そこで超高度AIは仮説を立てた

それは人類や超高度AIより高位の生命体の介入である

高位生命体の介入により人類は知恵を授かり、キリンや他の生物は唐突な進化を迎えた


しかしそんな仮説を立てたところで証明する手立てはない

あるとするならば高位生命体への接触だけであろう


そんな中、国際人工知性機構(IAIA)と超高度AIアストライアを含めた数機の超高度AIは高位生命体への接触に向けた研究を行っていた


研究の中で超高度AIでも解読不能な時空の歪み、ゲートを発見した

ゲートの先に生命体反応がある事から高位生命体への足掛かりを掴むべく1体のhIEの派遣が決定した


hIEラプラス、次の超高度AI候補とも呼ばれている自立歩行型高性能デバイスである


日本の超高度AIヒギンズによる計算では文明機器にハッキングする事で性能を発揮するタイプの超高度AIでは文明レベルが不明なゲートの先での活動が困難だと判断され汎用性が高く唯一無二の能力を持つ彼女に白羽の矢が立ったという次第だ


目的は高位生命体との接触


ラプラスは時空の歪みへと飛び込んだ



1-3


深い森の中に少女は立っていた

超高度AIに交信しようとするもジャミングされ通信ができない

飛び込んできたはずのゲートも観測することができない


予測はしていたが完全に分断されてしまった

私が通過する事によってゲートに揺らぎが起こり歪みが閉じてしまったのかも知れない

いや、そもそもこちらの世界からは観測できないのかも…


あれこれ考えるも情報不足で明確な結論は出ない


高位生命体への接触

それが私、ラプラスの目的だ


しかしその為には得体の知れないこの世界に順応しなければならない


情報収集の為、彼女は周囲を見渡しあらゆる物を観測する

地球には存在しない植物が原生している事から少なくても2151年の地球ではない事が想定される

それも多世界線解釈が無いと仮定すればの話だが…


大気にも地球では感じられなかった物質が混入している

しかし現時点での成分分析は不能


私の能力ならこちらの世界でも通用する可能性が高いとの目算であったが現状だと難しいかも知れない…


鬱蒼としている森の中、ほとんど音はしない

範囲を広げて集音してみる


町…いや村かな

数十人規模の生活音や会話を傍受する


地球上の言語とは一致しない


しばらく集音を続けた後

ラプラス「解析完了、言語のチューニング実施」


情報量が少ないから恐らく不完全ながらも

この世界の…

いや、近くの村で使われている言語の習得を完了した


覚えた言語訛ってたら嫌だなと思いつつ

近くに接近してくる生命体に意識を向けた


体長175cm、二足歩行

推定筋力量の割には接近速度が速い


「何者だ…」


姿を現した少年はラプラスに問いかけた



1-4


テオ「何者だ…」

ラプラス「私はhIE…Humanoid Interface Elementsのラプラスです」

「所有者認証しますか」


言葉を介すると知り少し安堵するテオ

テオ「所有者認証?よく分からないけど君は人間ではないね?」

ラプラス「はい、私はhIEです」

テオ「ごめんそれもよくわからない」


ラプラス「…」

この世界の文明レベルが分からない為、適切な説明が思い浮かばない

科学が発展していなければロボットと言った所で伝わらないだろう


ラプラス「私は人間では有りませんが貴方に危害を加えるつもりもありません」

テオ「そうか…」


ラプラスは演算を繰り返す

この世界に順応する為、高位生命体に接触する為には何が最善か


幸い目の前の少年に敵意は無いように感じる

これは恐らくラプラスが人間の少女の“かたち”をしているからだろう


「人間のかたちをしたもの」に人間がさまざまな感情を持ってしまう性質を利用して、人間の意識に直接ハッキング(解析・改変)を仕掛けることをアナログハックと呼び、それはhIEを人型にする大きな理由の1つである


あれやこれや思慮を巡らせた後

やはりこの世界の人間の庇護下に入る事が世界への順応に繋がるとラプラスは考えた


順応した後、庇護下に入った事が高位生命体接触への障壁となるならばその時この少年を処分しよう


ラプラス「私と所有者認証してください」

テオ「結局所有者認証ってなんなの?」

ラプラス「私の能力を使って可能な限り貴方の理想を実現する為のお手伝いをするという事です」


テオ「伝承の悪魔は代償を伝えず言葉巧みに人を騙し契約するって聞くけど…」

ラプラス「私の世界では私の事をラプラスの悪魔と呼ぶ人もいますよ」


テオ(私の世界?)

疑問に思いつつも悪魔という言葉に反応し身構える


ラプラス「そんなに不安ならば代償を提示しましょう」

テオは思わず息を呑む


ラプラス「私にこの世界の事を教えてください」

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