七話目 愛とか関係なく人を守りたい。それが違った意味での愛なのかもしれない
動いていた。
「危ない!」
え…っと。
この場合は綿…みたいなのを想像して…有限実態!
これぞ愛の力っ!
「うわぁー」
悲鳴を上げる皇。
裏切る覚悟はあるのに、情けない悲鳴だなもう。
さあここでクッション!痛い?
「あれ?」
皇はすっとんきょな声を出す。
……っつ危なかった…!
なんとか私の結界綿(?)で防げたようだ。
「ああ、今結界シールドみたいのはったの君だよね?」
頭の回転が速い。
ボーッとしてないでこっちを見つめる皇。
「それが?今は影を倒すの皇しかいないし」
「いや、僕は助けられても闇落ちは決行だ。闇月と共に行く」
「じゃあ、なんでさっき闇月に吹き飛ばされたのかな?」
「あれは手違いだ!闇月がそんなことするわけ──」
その瞬間、グワッと大きな力が闇月から発せられる。
突風。このシールドで防いでやる。
「分かった?狙われてるよ、皇」
これで闇落ち気力も落ちてきたかな?
戸惑った瞬間に闇落ち理由を聞けばなんとかなるかもしれない。
それに賭けた私は手を差し伸べた。
「闇月に狙われたらどうする?」
「……──見え見えだ」
皇は目を反らした。
あ、この手は無理か…?
でも戦えない今皇を説得するしか…ないのに。
『情報を渡すつもり?』
「いや、僕は闇月と一緒に手を取り合う」
『口滑らそうとしたくせに?』
「……──」
黙る皇。
闇月からも狙われて。
自分の味方は誰なんだろうと思っているだろう。
そうやって心を焦らす心理戦が得意な闇月。
ふっ…本当に黒恋と違って厄介だわ。
『ならいいよ。それなら──』
それなら──
そういった闇月は一瞬で消えた。
いや、消えた?
って私の前に浮かんでいるんですけど。
なんて悠長なこと言ってる場合かー!
『あんた除外』
闇月が冷たい言葉で言う。
除外…?こっちから願い下げだわ。
──!?
バランスの崩れる感じが襲う。
こっちは関係ないでしょ!なぜ私を狙う。
だが、その間にもズルっと滑る音がした。
あ…滑った。
しかもここ斜めの屋根!
このまま落ちる?
呪文は…無理。力がみなぎる感じがしない…。
せめて頭からだけは逃避しないと…!
「……!」
「……──」
ん?音が止まった。
ガクンという衝撃が起き、何かの力によってそれも止まる。
手首が痛い…!
よく見ると間一髪のところで誰かが掴んでくれていた。
「あ〜あ、やっちゃった」
皇が声を上げる。
「神聖情愛隊の癖がついちゃったよ」
掴まれている手。
そして──その先は皇。
なぜ敵が…。
「まだ心には残っているのか…神聖情愛隊で人を助けたときには自然と動いて助けていた…だから動いてしまったよ」
『ああ。なら貴方は闇落ちしないのね』
皇はフッと微笑む。
「さあ…今のは反射的だから。ここから離すこともできるし」
だが、逆に皇は手に力をグッと込めた。
離す気全然ないし。
いや…こう見せて離すとか?
『そんな態度取るんなら…排除するね』
闇月は影の姿をなびかせて近寄った。
皇…なんで離さないの?
離してほしくはない。離さないでほしいけど。
闇月と戦うぐらいなら離したほうがいいんじゃないの?
「煌めき……シャイナー」
皇は力を解除。
片手をかざした。
「戦闘する気!?」
裏切り者の敵のくせに。
今更何を…。
『その度胸認めてあげる』
闇月は正面突破で皇にかかってくる。
だが、影は輝く壁によって遮られた。
「これじゃだめか…なら」
皇はもたないと考え、片手を前に突き出す。
煌めく粒子が集まった。
「じゃあ、放出〜♪」
粒が形を整形していく。
そして──出来上がったのは球体だった。
『そんなもの』
闇月は球体を投げてくるのかと思い身を引く。
だが。
皇は力を込めると闇月を球体に吸い込ませた。
光り輝く珠の中で蠢く影。
『こんなもの、出れる…!いつでも…!』
皇は天使のほほえみを見せる。
「できるところまで封印しておくか」
私の手首に熱さが伝わる。
皇も力の使いすぎで疲れたようだ。
「……僕の所詮はお人好し」
引き上げさせられ支えられた。
「またそうやって油断させる気?」
「いや、あれは咄嗟に出ただけだよ。しかもこれを封印しているだけで疲れるし」
「咄嗟か…」
私も皇を咄嗟に守った(?)し…。
「君も咄嗟に守ったでしょ?僕のこと…」
「ああ?あれ。闇月を倒せるの皇しかいないからあそこで倒られるのマズかったし」
「そういう問題か…」
皇は隣で呟いた。
「でも、愛の力がないといけない…愛の動力源はどこにあったんだ?」
「……──」
確かに。
べ、別に私は皇に愛があるわけじゃないし!
てかこいつ裏切り者だぞ、闇落ち恨むべきやつ。
なのに…なんで力が出せたんだろ?
「たぶん…愛なんてなかったと思う」
「そうか…」
落胆した皇。
でも、愛に近いものなら…。
「愛とか関係なく人を守りたい。それが違った意味での愛なのかもしれないけど」
「確かにね」
皇は怒ったような顔をしたが、やがて笑った。
笑うとサマになるー!
ってその裏には闇で腹黒いことばかりのくせに!
「僕も神聖情愛隊のくせで君を助けちゃったよ。それに助けてもらったし…」
皇が光の球体を見せつける。
「これは預かっておくよ。神聖情愛隊に渡すべきだろうけどやりたいことがあるから」
それ早く排除したほうがいいんじゃない?
そう言おうとした時風圧が迷い込んできた。