表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/17

五話目 人々を愛し、自分のように大切にしている


「俺の力と似たようなの操りやがって」

 悪態をつき、動き出したのは光。

「光くん大丈夫?」

 要の言葉を無視し、手に閃光をピカリと光らせる。

「光ばっかずるいぞ!?ファイヤーフラッシュ!」

 凛が炎を片手に灯した。

 じゃあ私も……って言いたいけどあんまり効果なしだしな。

 って何か背筋が冷たくなったような……。

「やるしかないよね……?」

 後ろでは笑みを浮かべた要。

 しかも氷が漂ってやがる。

 これは、冷や汗と寒さが合わさった震えか……!


 妙に変なやつばっかいるんだけど…。

「おーいそこの班!危ないぞ!」

 隊長の声を無視し、凛が先頭突進していく。

「チェストーー!」

 皇は猪のように突っ込んでくる凛をサラリと躱した。

「!?」

 そこに氷の礫が突っ込んでいく。

「おっと」

 皇は余裕そうに笑みを浮かべる──が。

「押忍!」

 凛が炎攻撃を炸裂。

「炎か……よっと」

 冷笑を浮かべた皇。

 キラリと礫が光った。


 まさに電光石火──。

 しかも皇は神聖情愛隊一位の運動上手として有名だ。

 スポーツ天才──そう言われていたような?

「うお!?」

 凛が間抜けな声を上げた。

 キラリと光ると同時に、皇が跳躍し、一軒家の屋根の上に着率。

 ああ!忘れてた!

 やつが跳躍を大の得意としているということを。

「ついてきてね♪」

 なんて言いながら余裕に屋根を飛び越えていく。

 ムカー!

 みんなはポカーンと見上げているだけだ。

「な、何をやっている!裏切り者を捕まえろ!」

 隊長が我に返って叫んだ。

 だから、無理なんだって。

 あんな跳躍天才にどうやってかかっていけばいいのよ?

「じゃあ、遠距離!ファイヤーボーン!」

 凛が火の玉を作り出し、放出!

 だが、皇は屋根で身を隠しているだけだ。

「じゃあ、もっと威力を強めればいいのか!」

 凛は手を振りかざした。

 ──って!

「威力強めたら屋根壊れるでしょ!」

「ん?」

「あいつは逃げるから、いくら強めても無駄なの!逆に逃げられないところで攻撃しないとっ。威力だけ強めたら当たったものが焼けちゃうよー!」

「え?それは屋根がボロいんじゃないのか?」

 ば、馬鹿なの!?

 お前の炎耐熱定義を持ち出すなー!

「凛くん、邪魔です」

 傍らから氷の錐が解き放たれた。

「炎攻撃は無理なら氷で!」

 氷そのものが要の手から放出される。

「じゃあ、そこに便乗しよう」

 光が閃光を轟かせる。

 うわ…眩しい。皇の光も眩しいけど、対抗意識があるのか、物凄く光源を明るくしている。

「……フッ」

 だが、皇は難なく乗り越える。

「跳躍力ならあたし、いけますよ!」

 そう言って走り出した隊員がいた。

 んっと…確か一班?隊長に褒められていた人だったよな…。

 彼女はポニーテールを靡かせて颯爽と屋根を登っていく。

 バランス力、跳躍力。すごいと思う。


 ──だけど。

「ああ、なびき先輩。僕を超える気満々ですね!?」

 皇はいきなり止まった。

「な、何で止まるのよ!?」

 さすがの先輩も思惑が分からずひきつる。

「わざと先輩に花を持たせてあげます。いいですよ?」

 鬼さんこっち〜のように皇はニコッと笑った。

 ──っつ…その笑顔が余計だわ!

「あ、あんたあたしを舐めてるわね!花を持たせるなんて……!追いついてやるわよ!」

 ムキになった先輩。

 あの人の欠点はああいうキレやすい性格のことなんだよね…。

「引っかかってやんの」

 皇は微動座にしなかった──と思ったら!?

 先輩が近づいた瞬間に屋根から足が離れた。

「!?」

 何が起きたんだ!?

 今、足が離れて…。

 っていうことは跳躍して逃げてるのか!

「っく!戻ってきなさいよ!」

 策に気がついた先輩は負けじとジャンプした。

 だけど、皇の方が圧倒的に高く上がっていた。

「だ、誰か跳躍力があるやつはおんか!?」

 隊長があたふたする。

 でも、あの皇を捕まえないと。

 もしかしたら闇落ちして情報を渡されるのかもしれない。

 何があろうともよからぬことを企んでいることは確かだ。


「私、行ってきます!」


 スラッと手を上げてみる。

 ん〜なんか気持ちいいかも。この注目。

「行く人がいないんなら有限実態の技で跳躍してくるよ」

「できんのか?」

 凛が聞いてくる。

 有限実態の力はまだ習得してないけど……で、でもやるしかないじゃん!

 出来ぬことを愛の力でできるようにする。

 それが技の目的なんだから跳躍だってできるはず!

「藍…できたとしても動力源はどうするんだ?」

 真剣な顔で光が聞いてくる。

 動力源……って!?ああ……代償みたいな(?)感じの。

 私の場合愛という思いを技を発する時の力にするらしい。

 らしいというのはやったことがないから…。

 って。まだ修行不足だな。言ってて悲しくなってくるわ。

「まあ、やってみるよッ!」

 ムキになりながらも手をかざす。

「できるのか?」

「あいつって稀有な愛の力のやつだろ?」

「でも目覚めてねーんじゃ?」

「目立とうとしている感じがモロバレですわ」

 ひそひそと言われる話。

 う…ムカつく。今すぐドーンと派手に技を放ってふんぞり返ってやりたい。

 でも、まだ正直力に目覚めてない…急に自信なくなってきた。

 あんだけいきなり突っ走ったくせして!


 もう!ここまで来たからやってやるしかないだろ!

 失敗したとしてもね……。(半分泣き)

「有限実態ッ!」

 ……──。

 あれ?

「有・限・実・態っ!」

 ちょっとムキになって唱えてみる。

「……おお?」

 周囲がなぜかどよめいた。

 ん?成功した……?お!?


 輝いてるー!

 自分の体が!

 よくある魔法系?かな? 

 なら、跳躍っと!

「!?!」

 足が光に包まれ、力を入れると軽〜くふわっと感がした。

「あれは……皇より跳躍してるな」

 隊長が真剣に呟いた。

 飛んでるよージャンプしたー!

 って、ああ落ちる!


 何とか着地し、周りの反応を伺った。

「……そうだな……」

 考え込んでいる隊長。

「皇を追ってこい。今はお前しかいないからな…本当は…私が行かなければいけないのかもしれないけど…」

「隊長、あたしにも行かせて下さい!」

 靡先輩が挙手をする。

「バックアップ役になりますから!」

「……分かった……。藍を守ってくれ……」

 にしても……と隊長は呟いていた。


 まあどうであれ。

 行ってきまーす!

「あ、待ちなさいよ、後輩!」

 靡先輩より先に私は飛び出した。








 残された隊員の光は首をかしげる。

「あの力は愛が動力源……でも、藍に愛なんてあったのか?」

 でも愛がなければ発動できない技。

 藍には好きな人もいない、特別想っている人もいない。

 なら……どこへ向けた愛だったのか?

「ああ、そういうことか……」

 光は笑みを浮かべた。

「あいつは、人々を愛し、自分のように大切にしているのか」

 それが、彼女の優しさでもある。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 素敵な力ですね◎ 戦いも迫力があります☆彡
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ