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エピローグ 愛の告白1

遅くなってすみません。


──あの日は地球が紅色に包まれ……次の日には替わりに綺麗な青空が見えていた。


 当たり前だけれど、当たり前でなくなる事があった次の日。

 青空を地球のみんなはうっとりして眺めていた。


 バレンタインデーの次の日。


 大切な人を失う可能性があったが、神聖情愛隊の活躍で救った。


 影に呑まれた人も浄化され、影の拘束から解き放たれ人間に戻った。


 極めて幸せである。


 しかし、それを行ったのは神聖情愛隊みんなではない。

 もちろん、みんなの力もあるが……。


「空が青いね!おはよ!」

 ガンっと扉が蹴り開けられる。

 中にいた皇はビクリとした。

「この裏切り者ー!」

「うるさいな。あれは解決しただろ?力の目覚め方を教えたし」

「それはそうだけどさ、そこがムカつくの!だからって皇を信頼し切るわけではないから」

「それはそうだろうね。藍はそう言うと思った」

 怒りだろうか?恥だろうか?顔を真っ赤にする藍。

 この少女こそが地球を救った本人である。


「……僕の言うことをすぐ聞いたのは驚いた」

「それしかないと思ったし、皇にはいろいろあったからね…まあ今は謹慎処分で不幸中の幸いだと思って」

「……フッ」

 皇は、神聖情愛隊から謹慎を言い渡された。

 これ以上騒ぎを起こさないためである。

 しかし、皇は微笑む。

「謹慎が開けたら僕はここを去ろうかと思う」

「……?」

「愛がない世界なんてないかもしれない。けど、探してみたいんだ」

「また。自分の思想をなんとしてでも無理だとしても貫こうとして、悪あがきだと思いながらも決めようとして、無駄なのに、なんで無駄に体力消費すんの?」

「……自分の意思を通さないと気がすまないからかな?」

 藍はため息をついた。

「この考えがへじ曲がってるキザ野郎」

「……?」


♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡


 全てを浄化したとしても、多少は傷跡が残るもので。

 建物が崩壊した荒れ地の中で人々は復興を目指す。

「重いものはオレに貸せ!ほら!」

 神聖情愛隊として、復興を手伝っていた要の手から大きな瓦礫を凛が持ち上げる。

「わ…すごいね」

「力しか取り柄がないしな」

「そ、そうかな?」

 要は緊張して、瓦礫を落としかけた。

「きゃ…!?」

「おっと。大丈夫か」

「あ、ありがとう」

 愛想笑いで誤魔化す。

 だって、こんなにも彼の優しさに包まれているのだから。

「凛は優しいね」

「お、おう?そうか?炎をまとっているときは怖いと言われるのが多いんだけど…」

「でも、でもかっこよくない?」

 ハッと口を手で抑える要。

「……?」

 凛も目をそらす。


「ほらーそこ!何やっているんだかなー」

 そのとき、ひらりと風が吹きあられた。

「な、靡先輩」

 思わずどもってしまう凛。

「イチャついてないでさっさと手伝いなさいよ」

「「すいません!」」

 二人声ぴったし。

 仲良しさに靡は笑うと、要と凛の二人の手を取る。

「ちょ!?何をするんですか!」

「な、何事だ!」

 靡は微笑んだまま、二人の手を重ねる。

「な!?」

「……!?」

 仰天する二人に笑いかけた。

「ほら。こんだけ仲いいんだから目をそらしたりよそよそしくしないでハッキリしなさい!」

 鬼教官としても知られる先輩の声は迫力があり、周りに響き渡る。

「は、ハッキリ…?」

「そうよ、要!あんたバレンタインにチョコ持ってきたでしょー!それはどうしたのよっ!」

「は、すみません!持ってきます!」

 靡に怒られるのが怖くて鞄をあさる要。

 おそるおそる取り出す。

「お!チョコ!?誰のなんだ!?」

 はしゃぐ凛をたしなめる靡。

「ねえ。まず、要何かいいたいんじゃない?」

「あ、あるけど……」

「早く!」

「す、す、す、好き!です……」

 最後はモジモジ。そして、どもる始末。

 それでも、気持ちは伝わったはずだ。

 凛の返答は……。

「まあ別にいいよ!それよりくれ!」

「あ、ありがとう!」

 喜んで受け取る凛。

 靡は微笑ましく見つめていた。


「ん?カップルができたのかー!」

 途端に包まれる拍手。

 とまどう二人。

 神聖情愛隊のメンバーがわあっと集まってくる。

「ん?カップルができたのかー!」

 途端に包まれる拍手。

 とまどう二人。

 神聖情愛隊のメンバーがわあっと集まってくる。

「おめでとー」

 みんなから冷やかされ要は顔を赤に染めた。

「そ、恥ずかしいから…!」

「大胆にいこうぜ、大胆に」

 凛が要の手を取る。

「……?な!?」

「もう認証だろ?オレも好きだからさ!」

「……そ」

 要は直視できず目を泳がせた。

 何回も頭に木霊す。

 好きだからさ…好きだからさ…。

「ほ、本当?」

「当たり前だ!」

 次の瞬間、拍手が湧いた。

 割れんばかりの拍手に凛はニカッと笑う。

「俺から言われてくれ…付き合ってくれ!」

 要は口をパクパクとさせる。

「……も、もちろん!」

 今度は花束が上がった。


 花束を皆で上げて歓喜に包まれている中。

──ガチャ

 靡の懐で無線の音がした。

「今更…」

 靡はそっと場を離れ無線を取り出す。

『こちら本部』

「分かったから用件を言ってちょうだい」

『……デモが起きた』

「ああ、ただの人間ね」

『まあそうですけど』

 靡は鼻で笑いとばした。

「影相手だと少しは苦戦するけれど人間よ?力使わなくても充分よ」

 フッと笑い靡は走り出す。

 高いポニーテールが風に靡いた。

「で?場所はどこ?」

『すぐ近くの公園。無抵抗にさせたら警察に連行して下さい』

「残念ね」

 靡は悪魔の微笑みを見せた。

「警察に引き渡すだけなんて」

 冷笑すると走り出す。

 靡は神聖情愛隊の隊長に次ぐ最強な隊員だ。

 格闘技などの護身術はもちろん、力の使い方もマスターしている。


 公園に颯爽と滑り込むと近くに爆竹を投げていた集団が居た。

「……甘いことを」

 神聖情愛隊が出なくても充分だ。

 けれど、彼らは神聖情愛隊に喧嘩を売ったのだ。

「なら、見せてあげるよ。たかが無力なくせに…」

 次の瞬間、風が舞った。

「…!?」

 集団の男どもが振り向く。

 靡は手を突き出す。

 そこに風の渦が回っている──。

『ち、力を使わないで下さい!』

 無線から悲鳴のような声が上がった。

「当たり前でしょ。人間相手に使うわけないわ。今のは脅し」

 ダンっと靡は踏み込むと黒髪を振り乱し突っ込む。

 力で対抗すると怯えていた男どもは笑みを戻した。

「素手でかかってくるのか…馬鹿にすんな!」

「馬鹿にしてるのはどっちだと思う?」

 次の瞬間、靡の回し蹴りが炸裂した。

 綺麗に伸ばしきった足の先端を男の顔面に突き刺す。

「ぐあ!?」

 鼻血を吹き出しながら倒れた男。

 一瞥すると靡は周りの男を見回した。

「……──」

 何も言わない。けれどそこには殺気が満ちている。

 そして、楽勝に片付けられるという強さも垣間見れていた。

 無論、靡にとっては準備運動だ。

 神聖情愛隊で不思議な影と戦い、自分の運動力と超能力を合わせても倒しづらかった影を相手にしてきた彼女にとっては人間など簡単だ。

 言い方は悪いが楽勝。

 靡をこす人間だっている。

 しかし…目の前にいるデモのグループは軽い準備運動の対象に過ぎないのだ。

「…舐めんな!」

 沈黙を破ったのは相手の男だった。

 靡に駆け寄ってくる。

「……ハッ」

 冷笑すると突進してくる男からひらりと身を躱した。

 靡は彼の手を掴むとその身を引っ張る。

「!?」

 男は体勢を崩してガンっと膝をついた。

 靡はその姿を見下ろす。

「聞きたいのだけど…なぜデモを起こしたの?」

 返答はなかった。

 静かに睨みあげ靡は凛と問う。

 しかし、デモの本人たちも睨み上げる。

 彼らの怯え、怒り、恐怖、悔しさ、全て絡んだ睨みと混じり合った。

「あたしの顔を見てないで何とか言いなさいよッ」

 ついに緒が切れた靡は目の前にいる男に掴みかかった。

「あんたは男なのに弱すぎるわ!」

 次の瞬間、ズサッと男の体が崩れ落ちる。

 近距離の蹴り──膝蹴りの影響だろう。

「……あ、あ…」

 言わないと殺されると思った彼らは目を泳がせながらも言葉を繋いでいく。

「だ、だって…神聖情愛隊みたいなクズが地球を守ってヒーロー顔してるのがムカついて…」

「はい?もう一回言いなさい!」

「ムカついて…だって…実力者じゃないくせに…」

 ヒュンッと靡の拳が風のように口ごもった男のお腹に炸裂。

 絶景黒髪美女でありながらも一瞬で男どもを負かせた。

「ああ…」

「これでも手加減してあげてるのよ!?それとも風であんたたちを吹っ飛ばしてあげようか?」

 突風が吹きあられる。

 それを見たデモの張本人──実行犯が一歩前に出た。

「やめろ!俺が相手になるから!」

「じゃあ、遠慮なく」

 息を吸う間もなく靡は跳躍。

 そのまま男に飛び蹴りを打ち込んだ。

「ぐああああ!」

 痛さに悶え飛ばされる親分。

「やりすぎたわ…これ以上キレさせると()()じゃ済まされないからね」

 風を止ませたがまだまだ靡の恐怖はある。

 子分たちは戦意喪失をし立ったまま固まりこんだ。

「デモ起こしたわりには気が弱い」


「まあそこにしておけ」


 靡が続けようとした瞬間、彼女の肩に手が置かれた。

 振り返る。

「……隊長」

「もう隊長でなくてもいいのだけど…こいつらはあと警察送りにすればいい」

 フッと靡は笑った。

「それもいいわね。あたしだってこうやって八つ当たりしているわけではないから」

 そう見ても当たっているのだが…彼女にとっては準備運動らしいのだ。

「でも相変わらずだな…暴れっぷりは」

「これでも準備運動よ!黒恋に比べたらぜんぜっん」

「とりあえず連行だ…ああ連れて行くの面倒だ」

 頭を抱えた隊長。

「引きずり出せばいいのよ」

「駄目だろ」

「……なら」


 靡は片手を突き出した。


「ウィンド…風、よ…」



一旦完結から連載に戻しました。

もう一話エピローグがあります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりの更新だ! カップル誕生おめでとうございます☆彡☆彡☆彡
[良い点] 平和になって良かった! 凛の答え方が凛っぽくて良かったです笑 続きも楽しみにしてますね♪
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