十六話目 愛は動力源になる
私は必死に心のなかで呪文を唱えていた。
想いをぶつけるように。
言葉に乗せるように──。
ピシッ
ドーム型の建物に亀裂が入る。
「これ、浄化してきてるね。さすが、愛の力」
褒めなくていいから!うるさいよ!
ピシリ──!
亀裂が大きく変化した。
大きなヒビになり、そこから割れていく。
「ドームの外に出てから唱えるのもいいけど、ドームの中から唱えたほうが真実感増すよね」
うるさい!
意味のわからない説教を皇はうるさく語る。
次の瞬間、ドーム型が崩れ落ちた。
「破片が危ない」
煌めく光がキラッと輝く。
これは、皇が破片をガードしたんだ。
そういうふうにま、守ってくれるのが憎めないと言うか……ああもう!
続き!
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ドームにヒビが入ったかと思うとどんどん亀裂が入っていき、最後は崩れた。
明らかに神業。
こんなことができる人間は。
「藍……」
光は呟く。
彼女がやっと愛の力に目覚めたのだと。
やがて、紅色に輝く光となって天に登っていった。
赤い柱。
天使が作った天と地の道。
紅道は上に上がって上がって。
やがて、横に広がった。
空を黒色から紅色に包み込む。
息を吹き替えしたかのように禍々しい色ではなく愛を表す紅色になっていた。
地球上の空に広がった後、地面に降下した。
宇宙から見れば、地球が紅色に包まれていたと見えるだろう。
今までは黒色で今は紅色になり。
地上では紅色の清き尊い雨が降り注いでいた。
全てを浄化していく。
触れたもの全て──。
影に触れれば人に戻った。
醜いものに触れれば綺麗に変えた。
『んぐうううああああ!?なんじゃあこれは!?』
黒恋がうめき声を上げる。
彼も浄化され、消え去った。
──地球が浄化されていく。
人々の心も。
そして──紅色の雨は一日中降り注いだ。
今日はバレンタインの日。
半日残る少し遅めなバレンタインデーだ。
地球が2月14日──バレンタインデーのとき、空がピンクに染まった。
──本編 完──
59分……企画ギリギリなのでここで一旦終わりにします。




