十五話目 君の愛の力さえあれば大丈夫だよ
ほしいわ!
ほしいけど!
ほしいんだけど!
「それ卑怯でしょう!?」
「物物交換は必要なことだけど?」
涼しい顔で返される。
ムカつくのよー!
「で、情報は!」
「まだだよ。僕の身を保護すると約束してくれれば」
「あーもう、します!するから!」
みんなの命を守るためなら少しムカつくけどこいつの言う通り聞いたほうがいい!
「本当に分かりやすよね、藍は……」
「早く本題に入って!」
またクスッと笑う。
笑うな!なんか緊張するじゃん!
「まだ巻き返せるよ。その犠牲者も」
「……?そんなわけないでしょ、希望を言ってんじゃない!」
「影に食べられた人間は影となり闇の中でしか生きられなくなる。現世には戻れない」
それは黒恋も言っていた…。
「けどね。君の愛の力さえあれば大丈夫だよ」
「はいー!?何ですか、その言い分は!」
「そのまま。有限実態でなんでも有限にできる。君が強く強く思えば思うほどできる」
「…………」
「それで、黒恋も倒せる」
「…………地球を覆っているのに?」
「それも、君の愛の力さえあれば」
「…………まだ可能性があるんだね」
「そうだけど?君にかかっているんだよ」
嘘っぽいな……。
まあ!私がやってみて出来なかったら皇を締め上げればいいし。
やってみるしか道はなさそうだ。
「やってみる!やり方は!」
「有限実態の同じやり方で。呪文も同じだよ。ただ、想いが違う」
「……」
「強く強く想えばいいんだ」
「はいはい。やってみます」
「本気でやらないと絶滅するよ?」
「……分かった」
私は神経に愛を刻み込み、力の発動に集中させた。
♥ ♥ ♥ ♥ ♥ ♥ ♥ ♥ ♥ ♥ ♥
靡は風の刃を多数操り、攻撃に周る。
「要!そこの影はよろしく!」
「了解いたしました!」
可愛く返事をし、氷を放出しまくる要。
「燃え上がれー!おらあ!」
炎を纏わせ、飛ばしたり体当りしていて楽しんでいる凛。
影の数は減ってきていた。
後は本体を見つけるのだ。
本体を見つけて狩れば無事に終わることができる。
「本体を探せば勝ちよ!光の攻撃で痛手を受けているはず!!?」
『甘い』
ダンッ──
靡は吹き飛ばされた。
背後に忍び寄った何者かに。
『おれが本体だよ。なんか文句ある?』
そこにはまさかの黒恋がいた。
靡は地面に墜落。
骨を撃ったのか動かなくなった。
「先輩!」
要が悲鳴に近い声を出す。
『神聖情愛隊を撲滅しに来たぜ』
黒恋が後ろに影を無数浮かび上がせる。
それは全て餌食となった人間たちの変わり果てた姿なのだが──そんなの要たちは知りようがない。
必死に影を攻撃している。
『影は人間だったのにな……人間同士の共食いか、笑えるな。はは』
小さく独り言として黒恋は呟く。
愛なんて意味をもたないんだ、と。
現に人々は血で塗れた。
愛が勝つと言いながらもみすみすと敗北している。
靡もピクリとも動かず、要も力尽きて倒れ込んだ。
「要!大丈夫か!」
凛が駆け寄る。
「大丈夫……凛は……?」
「オレは元気だ!でもな、要が元気じゃないと……」
「分かったから……ここで言わないで……」
疲労で動けない。
そんなところを黒恋は襲った。
「オレが盾になる!」
凛が手を広げ睨みつける。
黒恋は、無情にも二人に突撃していった…。




