一話目 愛なんて滅びてしまえ
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聖夜の喧騒の中に影が忍び寄る。
黒く黒く
暗い暗い
どす黒いどす黒い
渦を巻いた物が。
──影というより怪物だ。
『お前ら楽しんでんな?』
「……!?」
聖夜の中に溶け込んだ恋人二人が振り返る。
『愛なのかよ?』
「だ、誰」
「大丈夫だ、僕が守る」
影は笑い、二人の周りを周る。
『はは、笑わせてくれるぜ。聖夜だからって浮かれやがってよ。だったら、その愛を見せろよ』
「……!」
そう言うとともに、女性に接近。
「僕がっ‼」
一瞬で男性が影との間合いを詰める。
──が。
「んが!?」
影に吹き飛ばされ、壁に激突した。
『愛なんて脆いんだよ。俺には嫌なことしかねえ…。あんさ、無力じゃねーか』
男性は事切れた。
女性は震えている。
『お得意の愛はどうした?愛、愛……!笑っちゃうぜ』
「うるさい!」
突如、絞り出すように女性は叫んだ。
「わたしたちの愛を否定しないでッ!」
『ああん?本当にバカなやつだ』
「あの人はわたしを守ってくれた!それだけでいいのっ!それが愛なの‼」
『鬱陶しい。じゃあ…愛を見た最後に死ねて幸せだろ?』
「きゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!」
すざましい絶叫が鳴り響く。
彼女は、胸をパクリと開けて倒れ込んだ。
『愛?笑わせてくれるぜ。こうしてすぐ死ぬというのに』
影は下品な笑い声を上げ、去っていく。
クリスマスの聖夜は愛が飛び交ってるぜ。
潰してやりたい。
今日の次の大イベントはバレンタインだな。
あんな、虫酸が走る愛イベント潰してやるぜっ‼