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―第六十一話― アマリリス

 うーん、これは……値は張るけど、そこまでいいものじゃなさそうね。

 こっちは、安さの割によさそうだけど、少し大きすぎるわね。

 リアからもらった剣以外に、短剣でも買っておこうかと思っただけど……。

 あんまり良いのがないわね。


「あ、ジャスミン」

「リア! どうしたの?」


「『移動』」


 …………?

 は?


「サントリナ、連れてきたぞ」

「お、ナイス」

「えっ、ここ何処!?」


「どこって、王都」


「王都!?」

「ジャスミン、寝ぼけてんのか? 今日、大会だぞ?」

「はあ!?」


 聞いてない、聞いてない!!

 というか、サントリナさんに教えてもらってから、まだ三日しか経ってないんですけど!?


「サントリナさん、どういうことですか!?」

「悪い、伝え忘れてた」


 まずい、殺意が湧いてきた。

 というか、一発殴ってやろうか。


「私、何の準備もできてないんですよ!? どうしてくれるんですか!?」

「大丈夫。ジャスミンちゃんなら、準備なしでも行けるでしょ」

「どこから湧いてくるんですか、その謎の自信は……」

「って、ちょっと待って。リアトリス、なにをするつもりだい? って、痛い! 耳を引っ張るな」

「ジャスミン、こっちは気にするな。今からこいつに一発きついのを決めてやるだけだから」

「ちょ、お前のは洒落にならん!! まじでやめてくれやめてください、何でもしますから!!」


 あー、行っちゃった。

 ……どうしよう。

 いや、本当にどうしよう!

 王都とは言われたけど、現在地点すらわからない場所で、どうしろと!?

 とりあえず、目立つ場所を目指して歩こう。

 ……よし、お城を目指そう。


「お姉さん、旅の人?」


 背後から声をかけられ、思わず振り向くと――


 赤毛の少女が、こちらに手を振っていた。

 後ろの人に話しかけたのだろうか。

 そう思い、きょろきょろと周囲を見回す。

 でも、この辺に人なんていないし……。


「えっと、私ですか?」

「それ以外に誰がいるのさ。で、お姉さんは何者?」

「えっと、サンビルという町出身の冒険者です……」

「奇遇だね、あたしも冒険者なんだ! あたし、アマリリスっていうの。よろしくね」

「えっと、ジャスミンです。よろしくお願いします……」


 差し出された手を握ると、万力のような力で勢いよくぶんぶんと振り回してきた。


「ジャスミン、力強いね! 結構なの売れた冒険者だったりしないの?」

「えっと、まあ、そこそこに……です」

「敬語使わなくていいよ。あたしも使わないし」

「う、うん、分かった」

「ジャスミンもさ、もしかしてだけど王様の腕自慢に出るの?」

「うん、そうだよ」

「やった、あたしたち仲間じゃん! いや、ライバルになるのか……? よくわかんないや!」

「そうなの!?」

「そうだよー。あたし、これでも結構強いのよ! お互い、決勝まで行けるように頑張ろうね」

「うん!」


 まさか、こんなところで参加者に会えるなんて。

 少しラッキーだったな。


「おい、ジャスミン。サントリナしめてき……誰、その子?」

「あ、リア! えっと、この人は……」



「アマリリスじゃないか! 奇遇だな!」


「げえっ、サントリナさん!?」


 リアの後ろから顔をひょっこりと出したサントリナさんを見ると、アマリリスの顔色が真っ青に変わった。


「お前、何年ぶりだ? ずいぶんと成長したな。師匠は元気か?」

「えっと、はい、元気……です」

「おっと、二人にも説明しとかないとだな。この子は、俺の元仲間の弟子なんだ。……リアトリスは、子供の頃に会ってるんじゃないか?」

「興味ないことは覚えない主義なんで」

「初対面で随分と酷いことを言うじゃないか!!」


 リア、少しは空気を読みなさい。


「いやー、ベゴニアとはもう何年も飲んでないなあ。今度、飲みに誘おうかな」

「やめてください。師匠の介抱を自分がやらなくちゃいけなくなっちゃいますから」

「大丈夫だよ。俺も手伝うから」

「お前は酔いつぶれる側だろ」

「そんなことねえよ!」


 何だろう、さっきまでの緊張が一気に吹き飛んだ。

 見知らぬ街だけど、昔なじみの友達と喋ってるような……そんな感覚だ。


「というか、さっさと会場に移ろうぜ。もう参加者の大部分は集まってるんじゃないか?」

「そうだな。じゃあ、全員こっちに来て」


 こういう時、リアは本当に便利ね。

 いや、普段から便利ではあるが。


「アマリリスも、私の隣に来て」

「え、えっと……?」


「『移動』」




「ここが、今回の腕自慢大会の会場だ」


 ありがちな円形闘技場ね。

 石造りだし、私も結構力を出して戦えそうね。


「ええっ!? 瞬間移動!?」

「えっと、これは、あの男の能力の一つだから……。気にしないで」

「いや、気になるよ!? 何者なのさ!?」

「強すぎて今回の大会を出禁にされた頭のおかしい奴」

「はあ!? 強すぎてって、どういうこと!?」

「まあ、いつか手合わせしてみたら分かるわよ」


「二人とも、控室はこっちだよ! 早く!」


「「はーい!」」

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