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―第五十話― 問題

 「ステータス黒塗りって、どういうことだよ!?」

「私にもわからないのよ。ギルド職員さんも、こんなことは初めてだって……」

「……マジか」


 バグか何かか……?

 だとしても、俺含めて全員が今までに測ってきて、一人だけにそんな症状が発生するなんてあり得るのか?


「あの水晶玉を使ってやったんだよな?」

「うん」

「そうか……」


 それなら。


「『鑑定』」


 ……………………。

 はぁ。


「ごめん。俺も駄目だわ」

「そう……なんだ」

「ま、気にするな。今度調べに行った時にわかるかもしれないしな」

「そう……ね。そうよね! とりあえず、今日はたくさん食べましょう! お姉さん、このテーブルに乗るだけの食事と酒を持ってきてちょうだい!!」




 家に帰り、ジャスミンのステータスについて再び考え出す。

 飲んでいる最中も、ずっと頭を離れなかったのだ。


「あれって、放置しておいていいのか……?」


 能力でジャスミンのステータスを調べ、その時にわかったことがある。


 ジャスミンは、能力者だ。


 恐らく、自覚はないのだろう。

 だからこそ、危険なのだ。

 自覚のない状態だと、一切の制御なく能力が発動してしまう危険性があるのだ。

 ……昔の俺がそうだったように。

 まあ、それも問題の一つではあるのだが、俺が懸念しているのはもう一つ(・・・・)の問題だ。

 ジャスミンのステータスを覗いたとき、何者かに睨まれたような感覚があった。

 その正体こそわからないが、ジャスミンのステータスがうまく見えなかったのはそいつのせいだろう。

 俺の目にも、能力があることくらいしか映らなかったしな。


「……寝るか」


 考え出すときりがない。

 それに、今日はギルドまで走って、そのあとずっと立たされたんだ。

 足がもうパンパンだ。

 疲れだって溜まっている。

 こういう時に無理をするのは、馬鹿のやることだ。


 それに、俺だって人のことを言えないのだ。

 今日のステータス検査で、いくつか問題点が出てきた。

 まずは、筋力が低下していたことだ。

 まあ、予想はしていたが……。

 正直、能力で強化すればさほど問題はない。

 だが、能力による強化にも限界はある。

 基礎ができなければ、能力だって弱くなってしまう。

 それを防ぐためにも、少し筋トレをしなければだな。

 ま、ジャスミンの修行をしている間に、勝手についてくか。


 二つ目のほうが、俺からすれば深刻な問題なのだ。

 それは、


 能力値の上昇だ。


 何が問題なのかわからないかもしれないが、俺からすれば大問題なのだ。

 能力値が上昇したということは、それだけ能力の威力が上昇したわけだ。

 つまり、上手い事制御できるようにならなければ、周囲を巻き込んでしまう危険性だって出てくるのだ。

 そして何より。


 面倒な仕事を振られる可能性が高まってしまう。


 これ以上に重要な問題があるだろうか、いやない!!

 俺がさぼる時間が減ってしまえば、能力に影響だって出てしまう可能性が無きにしも非ずな感じなのだ。

 俺は正直、眠ってる間に一日が過ぎてしまったことを至福ととらえている。

 その機会を減らされるだなんて、冗談じゃない。

 これはもう、あれだな。

 ジャスミンを死ぬほど鍛えて、そっちに仕事が回るようにしなくては。

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