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―第四十話― 頭痛

 サンビルの中心に位置する大広場。

 普段は子供たちの憩いの場となっており、一日中楽し気な笑い声が響いている。

 今日も変わらず、そんな微笑ましい光景が広がっているはずのここに。


「それじゃ、始めますか」


 珍しく仰々しい格好をしたリアが、巨大な魔方陣を張った。


「えっと、すみません。リアトリスさんは、一体何をしようとしてるんですか?」

「ああ、ツツジはあの計画書を見てなかったわね。リアは、この街に巨大な結界を張ろうとしてるのよ」

「結界!?」

「えっと、どんなんだったっけ。確か……」


「一定の力以下の人間に対して、強化魔法がかかるような奴だ」


「あれ!? リア、結界は!?」

「もう張り終わったけど」


 上を見れば、確かにうっすらと膜が張ってある様に見える。


「早すぎませんか!?」

「ま、そこまで複雑な構造でもないしね。もう少し詳しく説明すると、一定のステータスに満たないものに対しては、結界の外に出るときには強化魔法がかかるように。内側に入るときにはそのバフを解除するってだけだ。あと、魔物関連の奴はこの魔方陣の内側には入れないようにした」

「対象の自動選別って、かなり高度な結界術じゃないですか!?」

「俺、このタイプの結界はかなり得意なほうなんだよね」

「あんた、魔法使いとかにでもなったほうがいいんじゃないの……?」


 そんな、呆れ半分の私の言葉に。


「いやだね、そんな面倒くさそうな職業」


「圧倒的に宝の持ち腐れね」


 こいつ、本当にダメなタイプの奴だ。


「というか、リアトリスさんの職業って、何なんですか?」

「そのまんま、冒険者だが?」

「……本当に宝の持ち腐れですね」

「てか、もう今日の仕事は終わったんだし、俺は帰って寝るぞ」

「いや、サントリナさんのところに報告しに行きなさいよ」

「めんどくさい。ジャスミン、代わりに行っといてくれ」

「はあ!? なんで私が……って、リア!! 待ちなさい!!」

「あらら、いっちゃいましたね」

「くっ、なんで私が……」






「う、ぐう、が、ハァ、ハァ……」


 ちくしょう、今日もか……。

 ここ最近、朝も夜も関係なしに強烈な頭痛に襲われている。

 そのせいで、せっかくの睡眠時間さえも大幅に削られてしまっている。


「『治癒』……」


 能力も、一時的に抑える程度しか作用しない。

 まったく、まだ眠たいってのに。


「『覚醒』」


 よし、眠気のほうはこれで解決だな。


「ッ!!」


 もうか!?

 ……まずいな、頭痛のスパンがかなり短くなってきている。

 何だ?

 一体、何が原因なんだ?

 やばい、意識が朦朧と……。


「《駄目だ、眠るな》!!」


 雷が落ちたのではないかと思うほどの衝撃が体中をめぐり、一気に視界が鮮明になっていく。

 何だ、今の声は?

 なんか、こんなことが前にもあったような……。






 魔力、温存しときたかったんだけどな……。

 しょうがないか。


「《治癒》」


 ごめんな、リアトリス。

 俺の力では、このぐらいしかできない。

 多分数日は持つだろうし、その間にこいつをどうにかしなくては。


「おっと……」


 立ち眩みなんて、一体何年ぶりだ?

 流石に、体への負担がえげつないな。

 魔力も半分近く持っていかれたな。

 だがまあ、半分もあればなんとかなるだろう。

 あと数日、死ぬ気で頑張るしかねえな。


 背後に広がる巨大な闇。

 これをどうにかしないことには、何の解決にもなりゃしない。


「待ってろよ、リアトリス。俺が何とかしてやるから。もう少しの辛抱だからな」

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