―第三百四十七話― 決闘
……決闘か……。
ジャスミンの覚悟を買うつもりで受けたが、正直、マジで気乗りしない。
だが、受けた以上、全力でやらねばなるまい。
「……なにしてるの?」
「……こっちのほうが、お前と全力でぶつかれる」
懐から出した仮面を付けながら、俺はそう返した。
元々、この仮面はジャスミンと試合をするために買ったものなのだ。
この場で付けるにはうってつけだろう。
それに、リアトリスとして戦うよりも、遥かに気が楽になる。
「……オーケー、準備完了だ」
「そう。じゃ、始めましょう」
剣を抜き。
短剣を抜き。
武器を構え、お互いに臨戦態勢を整える。
そして――
――キンッ!!
お互い、何を合図にするでもなく、同時に飛び出し、刃を交わらせた。
……重いな。
以前、大会で剣を交わらせた時と比べて、明らかに威力の質が変わっている。
それに、剣を振る速度も格段に上昇していた。
……これは、マジで手を抜いたりなんかできねえな。
「『移動》」
軽めに能力を使い、ジャスミンから距離を取る。
……さて、こっからどう動こ――!!
「……やるじゃねえか」
「リアこそ」
瞬発力もだいぶ成長してるな。
俺との間合いを一瞬で詰めてきやがった。
それに、やはりというか、力の乗せ方が上手くなってる。
踏み込んで来た威力を殺さず、そのまま剣に乗せられている。
……さて、どうしようか。
多少距離を取ったところで、今みたいにすぐ詰められてしまうだろう。
かといって、距離を取りすぎても、あいつは魔法で仕留めに来るはずだ。
……能力を使った状態での魔法は、どの程度の威力なのだろうか。
死にはしないと思うが、多少の痛手は喰らいそうだ。
近づけば剣で、離れれば魔法で、か。
となれば……!!
「《移動》、《殴打》、《浮遊》」
短剣から手を離し、能力でジャスミンの背後へ回る。
……当然、反応してくるよな。
ここは一旦、あえてジャスミンの予想に乗る。
軽めに能力を籠め、拳を握り、脇腹を狙って打つ。
が、これまた当然ながら、剣の柄で防がれた。
……ここまで、計算通り。
あとは、能力で浮かせた短剣を……!!
「……マジか」
ここまで反応してきたか。
拳を柄で払った動きのまま、刃の部分で短剣を叩き落としてきた。
……一旦、距離を取らねえと……!!
「《移ど――」
「ハアッ!!」
「ぐっ!?」
腹部に強烈な衝撃。
……蹴りか、今の?
バカデカい岩でもぶつけられたのかと思った。
……マジで、基礎身体能力がえげつないな。
「……こんなのが、リアの本気なの?」
「……なわけあるか。ようやく準備体操が終わったところだよ」




