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―第三百十一話― 多勢無勢

 ツツジたち、どこに行ったんだろ。

 せっかくギルドに行ったのに、二人ともいなかった。

 ……って、うん?

 どこからか、騒ぎ声が聞こえる。

 この感じ……、喧嘩?

 ……ちょっと待って、嫌な予感がする。

 まさか……。




「おら、この僕がわざわざ相手してやってるんだ!! もっとかかってこい!!」

「くそっ、なんなんだよ、こいつら!! お前ら!! たった二人相手なんだから、やっちま……ぐはっ!!」

「おい、だいじょ……うっ!?」


 …………。

 ローズが正面切って十人程度と殴り合い、残りの十人をツツジが一人ずつ、丁寧に気絶させている。


「おらおら、全員まとめてかかってこいや!! ……って、あ」

「ローズ、どうかした? ……あ」


 ようやくこっちに気が付いたのか、二人の手が止まった。


「あらあら、随分と血気盛んな様子ですね。……全員まとめて、でしたっけ? よろしければ、わたくしが、全力でかかってやりましょうか?」

「「あ、あの……。……すみませんでした」」




「ねえ、二人とも何してんの? しかも、ローズは釈放されたばっかじゃん!! ツツジもツツジで、なんで止めなかったの!?」

「「だって、あいつらが……」」

「……もしかしてだけど、リアのこと?」


 二人同時にうなずいた。

 ……ハァ……。


「あんたら、そうなの?」

「「「「えっと……、すみません」」」」

「……ハアアアァァァ。ほんっとにさあ……」

「あの、俺らも変に酔っちゃってて……」

「言い訳は聞いてないです。一旦、黙ってて」


 思い切り睨みつけ、無理やり黙らせる。

 ……こいつら、よく見たら全員冒険者ね。

 ……あれ?

 なんだろう、今、一瞬だけ、何か違和感を覚えた。

 それに、違和感だけじゃなく、胸騒ぎも……。

 ……?

 とりあえず、本題に戻るか。


「ねえ、なんであんたらは、というか、最近の冒険者たちは、リアの事を悪く言ってるの? その辺を、はっきりさせてくれない?」

「そ、それは、その……。……前の戦いのときの、あれが……」

「ごにょごにょ言ってても、何も分かんないんだけど。はっきり言ってちょうだい」




 時々、脅しを入れたりして、どうにか聞き出したのは、前に聞いたのと同じように、リアへの恐怖感だった。

 確かに、あの能力の恐ろしさは、近くにいる私たちも知っている。

 だが、それ故に、どれだけ頼りになる存在なのかというのも、理解しているつもりだ。


 といったことを話し、喧嘩を売ってきた奴らは帰した。

 どうにか、納得してくれたようだ。

 後は……。


「ツツジ、ローズ」

「「は、はい!!」」

「あー、もう説教じゃないから、リラックスしていいわよ。まあ、リラックスできる内容かは分かんないけど……」

「不安になること言わないでよ、ジャスミンちゃん!!」

「まあ、とりあえず、これ、読んでみて」

「……手紙か? これ」

「うん。今日、アマリリスからサントリナさん宛に届いたの」

「へ―……。……って、えっ!?」

「ちょっ、どうしたの!? ……ええっ!?」

「……まあ、そういうことらしいの」

「「…………」」


 ……私が読んだ時も、こんな感じだったのだろうか。

 まあ、当然こうなるとは思ってたけど……。


「……私個人としては、もうちょっとだけ、リアを自由にしてあげたほうが良いと思うの。今日の感じだと、戻ってきてもまた……」

「うん、私もそれが良いと思う。とりあえず、無事が分かったことだしね!! お兄ちゃんが傷つくのは、もう見たくないし」

「僕は別に、リアトリスがどうなろうが知ったこっちゃないし、同じく放置でいいと思うぞ」

「そんなこと言って、さっきの喧嘩、ローズがいの一番にやってたからね?」

「そ、それは違ぇよ!!」

「ローズって、なんだかんだでツンデレだしね」

「ちょっ、ジャスミンちゃんまで……!!」


 …………。

 こんな談笑をしている間にも、私は感じていた。

 背後から何者かが迫ってくるかのような、とてつもない不安を。


「――ふふっ」

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