―第二百四十八話― アクイレギア
……そろそろかな。
窓の外を見ると、もう日が沈みかけている。
……まだ、気配が残ってるなあ……。
ってことは、戦闘かあ……。
ジャスミン達も、多分気付いているだろう。
ツツジも結構前に家に帰ったけど、大丈夫だろ、多分。
「……はぁ」
全身から魔力を放出する。
これで、多少は牽制になるだろう。
えーっと、短剣……。
……よし、準備オーケー。
「『移動』」
「……よし、全員揃ったな」
フル装備のジャスミン達に、そう呼びかける。
「それじゃ、とりあえず、作戦についてだ。基本、殺しはなしで。全員、気絶させろ。で、後は……、ま、適当に」
相変わらずスッカスカの作戦だが、これでいいだろ。
「じゃ、俺先頭で行くからな? なんか合図するから、そん時に来てくれ」
「うん、それは良いんだけどさ。リア、相変わらず適当過ぎない?」
「いいんだよ、これで!! 行くぞ!!」
短剣を抜き、悠然と歩きだす。
……一応、能力で守っとくか。
「『防御』」
これでよし、と。
結構ガチで能力使ったし、大丈夫だろ。
「おっ、ようやくお出ましか」
十人ほどの山賊が、下品な笑みを浮かべ、こちらに話しかけてきた。
……が、俺は当然のごとく、それを無視した。
「おい、てめえ!! なにシカトしてんだよ!?」
「あんま調子乗ってっと、今すぐにでも……!?」
「今すぐにでも、なんだ? 話しかけてくるな、雑魚。俺はてめえらのボスと話がしてえんだ」
短剣を構え、こいつらにも視認できる程度の魔力を放出する。
ま、これだけやれば、実力差ってもんがアホでもわかるだろ。
「そこのひげもじゃ!! ボスはどこにいる!?」
「は、は!? な、なんでてめえに教えなきゃならねえんだ、よ……」
「まあまあ、いいじゃねえか。そのくらいよ」
後ろから聞こえてきた、謎の声。
反射的に短剣を振るうも、綺麗な弧を描き、空を切った。
「……お前か、ここのボスは」
「いかにも。俺様は、ここら一帯の山賊を取り仕切っている、アクイレギアというものだ。それで、お前さんは何をしに来たんだ? 今更、和平交渉か?」
「バカか、お前は。てめえらをちゃちゃっと殲滅して、国に引き渡そうってんだよ」
「……なかなかおもしれえ冗談を言うじゃねえか」
「だろ? でも、それにしてはスマイルが足りねえんじゃねえか?」
……めんどいなあ……。
こんなバカな会話をしている間にも、お互い、実力の探り合いをしているのだが、こいつは、なかなかのやり手だ。
さて、どう攻略してやろうかねえ……。
「スマイル、か……。山賊にそんなものがいるとでも?」
「そうだな、いらねえか。だって、今からお前らは……」
短剣を振り上げ、アクイレギアの鼻先にチョンッと当てる。
「俺らがぶちのめすんだから」
「やってみろよ、くそ冒険者」
その瞬間、アクイレギアが指を鳴らした。
すると、まるで見えないベールが上がったかのように、先程まで何もなかった場所から、大量の人間が現れた。
……はぁ。
「『爆発』!!」
空に向かって能力を放ち、全員の注目をこちらに向ける。
……さて、と。
「戦闘開始だ、お前ら!!」




