―第二百話― 臨時メンバー
ふわ、あ……。
大きな欠伸をしつつ、ぼーっと掲示板を眺める。
なんか面白いクエストでもないかと思ってきたが、さっぱりだな。
あるのは、ゴブリン退治にコボルト退治、ワイバーン退治に迷い猫探し。
左から順に、つまらない、つまらない、面倒、面倒。
もうちょっと、面白みのある奴はないのだろうか。
……まあ、俺にかかれば、すべて面倒で片付くのだけれど。
……ん?
そんな中、一つの張り紙に目が行く。
「えーっと、なになに……。臨時メンバーの募集か……」
どんな職業の方でも大歓迎、アットホームなパーティーです……。
へえ、たまには、こんなのに参加するのもいいんじゃなかろうか。
ジャスミンたちもすることあるらしいし……。
うん、興味が湧いてきた。
「すみませーん、この依頼受けたいんですけどー」
「どうも、初めまして。今日はよろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそ、参加してくださって、ありがとうございます」
受注手続きも終わり、俺は早速挨拶に向かった。
全員物腰柔らかそうで、いいなあ……。
典型的な荒くれ冒険者とかだったら、どうしようかと思ったよ。
「とりあえず、自己紹介から始めましょうか。俺は、シーボルディと申します。職業は剣士です」
「私は、アスターって言います。職業は魔法使いです。よろしくお願いします」
「自分は、ミラビリスと言います。アーチャーやってます」
「どうも、ご丁寧に……。えーっと、俺はリアトリスです。職業は……」
そこまで言って、言葉に詰まってしまう。
……包み隠さずいうほうが良いよな。
「あの、職業は、冒険者です」
その瞬間、三人の表情が若干変わった。
……当然だ。
冒険者なんて、他の職業に適性がなかった奴のなるような、いわば余り物のための職業なのだ。
……まあ、そんなのは世間一般の勝手なイメージなのだが。
実際、俺の知ってる冒険者なんてのは、魔法使いとしての才能があるのに、一つの職業に縛られるのが嫌だ、って理由で冒険者やってるし。
かくいう俺は、職業の書類が一番簡単だった冒険者を選んだだけなのだが。
「あっ、なるほど……。……冒険者か……。いえいえ、大丈夫ですよ。今日行くのはゴブリン退治ですし、俺らも他の街から来たばかりの新米なので」
明らかに気を使われてるな。
あまり気分の良いものではないが、別にいっか。
「まあ俺は、無駄に歴だけ長いような奴なんで、何かあったら言ってください。少しくらいは、お役に立てるかもしれませんので」
「アハハハハハ。その時には、お願いします」
……そんな空笑いされると、終いにゃ泣くぞ。
まあでも、もっとひどい職業蔑視をしてくるような奴よりはましだ。
ついこの間、酒場で仲間の冒険者を酷い弄り方してるのを見かけたときには、あまりの気分の悪さに、酔う前から吐きそうだった。
ま、正々堂々と殴り合いで、きっちりしめてやったんですけど。
あの時は、危うく留置所に放り込まれるところだったな。
「さて、そろそろ現場に向かいましょうか。夕暮れまでには帰りたいので」
「ああ、そうですね。それじゃあ……」
「あの、武器とかは……」
「武器? 俺はこの短剣だけなんで、お気になさらず」
「は、はあ……。リアトリスさんがそういうんでしたら。それじゃあ、行きましょうか」
もう少し依頼条件を厳しくするべきだったかな、といった表情を浮かべる三人の後を、ゆったりとした足取りでついていく。
初心者らしいし、基本はこの三人に任せて、俺はサポートに徹したほうが良いだろうな。
俺が全部やっても良いが、初心者の内は、まず経験を積まなきゃだし。
いや、別に、俺が面倒とか、そういうわけでは、決してないからな!
私事ではございますが、今回のお話しで二百話目でございます。
幕間含めたら、昨日の段階で越えてしまっているのですが、幕間は幕間ですので、今日で二百話目です。
ここまで読んでいただけて、本当に嬉しい限りです。
本当にありがとうございます。
これからも精進してまいりますので、どうか最後までお付き合いいただけますと幸いです。




