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―第百六十六話― 暇つぶし

 ガタガタと心地の良い揺れに身を包まれ、なんとなく穏やかな気分になってくる。

 前に乗ったときは、これから魔王軍と戦うという状況だったし、ろくに(くつろ)げなかったんだよな……。

 窓の外をボーっと見つめながら、そんなことを考える。

 おっ、あっちにいたのは、オークか?

 あそこを飛んでいるのは、ワイバーンの子供だろうか。

 いずれもそこそこ危険な魔物ではあるが、わざわざ狩る必要もない。


「なあ、リアトリス」

「……なんだよ」


 突然、ローズに声を掛けられる。


「なんか暇つぶしとか持ってないか? もう、眠くて眠くてしょうがないんだよ……。ふぁあ……」

「寝ればいいじゃねえか。旅行なんだから、無理に起きておく必要もないだろ?」

「でも、旅行中に寝るって、なんとなく勿体ないだろ?」


 まあ、その気持ちはわからんでもない。


「……ほら、これならどうだ?」


 カバンを漁り、カードゲームを取り出す。


「あ、懐かしっ!! 子供の時によくやってたわ」

「俺も昔、よくツツジとやってたんだよ。これなら、そこそこ暇潰せるだろ?」

「ああ。ありがとな」

「おうよ。……ただ、熱中して大声とかは出さないようにしないとだな」

「……ああ」


 二人同時に、正面の席の方を見る。

 ジャスミンとツツジが、互いに肩を寄せ合って眠っている。

 ……起こすのも悪いからな。


「それじゃ、早速やるか……!」




 …………。

 今のところ、勝負は拮抗状態にある。

 六戦やって、三勝三敗。

 どちらかがリードしても、すぐに追いつかれてしまう。

 ……だが、もうあと少しで日も暮れてしまう。

 つまり、この戦いでようやく勝負が決する……!


「「…………」」


 互いの一挙一動に刮目する。

 戦況的には、俺がやや有利か……?

 だが、ここから巻き返してくる可能性もある。

 ……ゴクリ。

 さあ、ローズ。

 お前はどう出る……!!


「お客様、晩飯のお時間ですよー!!」


 突然かけられた声に驚き、二人同時に手元のカードを落としてしまった。


「「ああっ!!」」

「おや、邪魔してしまいましたかね?」

「あ、いえ、大丈夫です。こいつら起こしたら、すぐ降ります」

「はいよー」


 …………。


「「あとで決着つけるぞ」」




 紅茶を口に含み、その香り高い味をしっかりと堪能する。

 食事が終わったところで、睡眠前に飲むとリラックスできると渡されたのだ。

 確かに、飲んでいるうちに気分が落ち着いてきた……様な気がする。


「なあ、ルーゾ」

「……えっ、僕の事か!?」

「うん」

「……もうちょっと原形を保たせてくれよ……。それで、どうかしたのか?」

「……俺はもう眠くなってきたから、決着は明日に持ち越しだ」

「ああ。僕ももう限界が近いしな……」


 二人同時に大きな欠伸をする。

 ……御者のおっさんいわく、あと一日は馬車を走らせないといけないらしい。

 まあ、サントリナが高い金を出してくれたおかげで、本来の数倍くらいの速さで旅ができているんだがな。

 毛布に体をうずめ、もう一度大きな欠伸をする。

 それから数秒も経たないうちに、俺の意識は深い眠りの世界へと落ちていった。

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