―第百六十四話― 自由奔放
そこら中に散乱している食器類を拾い集める。
こいつら全員寝てるし、今が掃除のチャンスだ。
ローズはまだしも、ジャスミンとツツジは確実に邪魔してくる。
……酒盛りは楽しいが、こういうのが面倒くさいんだよな……。
能力で一気に運べたりしたらいいのだが。
……いや、やったことないし、もしかしたら……?
「『浮遊』」
まじか!?
皿が一斉に宙に浮かび上がった。
……これ、めちゃくちゃ便利じゃん。
「『動け』」
俺の指示通り、ちゃんと流しの方に皿が飛んで行った。
……これ、めちゃくちゃ便利じゃん。
…………。
「『浮遊』」
ジャスミンたち三人を浮かび上がらせ、そのままベッドの方へ動かす。
ベッドは暇なときに整えてるし、寝るには十分だろう。
……にしても、ここまで便利な能力だったとは、正直思ってなかった。
……いや、よくよく考えれば、戦闘中に短剣とか手元に引き寄せてたし、自分の体を宙に浮かべたりしてたわ。
「……最悪、一歩も歩かないで生活できるよな」
いや、するつもりは断じてないが。
魔力が勿体ないしな。
…………。
まぶたがぴくぴくと痙攣する。
「ねえ、リアー! お昼ごはんはまだー?」
「おにーちゃん! こっちでカードゲームしようよ!!」
「すかー!!」
「いつまで居座る気なんだよ、お前ら!!」
ローズに至っては、爆睡してるし。
こいつら、マジで自由奔放すぎるな。
……俺が言えた事ではないのかもしれないが。
「ほら、昼飯だ。カードゲームは、ジャスミンにやってもらえ」
「わーい、ありがとー!!」
「えー、ジャスミンちゃん、ゲーム全般めちゃくちゃ弱いんだもん」
「しょうがないだろ。そういう脳みその持ち主なんだから」
「ねえ、あんまり好き勝手言ってると、二人とも本気でぶん殴るわよ?」
「「さ―せん」」
拳を構え始めたジャスミンに、速攻で謝る。
と、その時。
――リンリーン!!
玄関の方から、ドアベルの音が聞こえてきた。
……誰だ?
「はーい」
とりあえず出るか。
「……リアトリス様でしょうか?」
「あ、はい。そうですけど……」
扉の前にいたのは、執事のような恰好をした男性。
「……ごめん、先聞いていいっすか?」
「ええ、なんなりと」
「……サントリナですか?」
「はい」
やっぱりかよ!!
この間言った時にこの人を見かけた記憶があるもん!!
「……で、何の用ですか?」
「主人から、こちらの手紙を渡すようにと」
「……そうですか……。あとで読んどくんで、もう帰ってもらって大丈夫ですよ」
「左様でございますか。それでは、失礼いたします」
扉を閉め、大きな溜め息を吐く。
……面倒な事が起こる予感がビンビンなんだが……!!




