―第百三十二話― 触手
魔物に向かって、無数の触手が伸びていく。
「ツツジ! ローズ! 一旦退け!!」
あいつの触手に巻き込まれたら、洒落にならんからな。
「三人は、一旦ここで待機しておいてくれ。マジで危ないから」
「……あれ、魔法……なんだよね?」
「ツツジは見るの初めてだったな。……一応、あれも魔法だ。あいつオリジナルのだけど」
「僕も久々に見るけど……」
まあ、二人が引くのもわかる。
触手は魔物に振れた時点で相手を凍らせ、破壊していく。
それも、尋常じゃないスピードで。
……!
「……ちょっとすまん。あっち行ってくる。三人は引き続き待機で頼む。『防御』、『移動』」
三人の周りに結界を張り、そのままサントリナの横まで移動する。
「……おい、サントリナ。あんま無理するな」
「……悪い」
サントリナが腕を降ろすと同時に、それまで魔物を蹂躙していた触手も消え去った。
「老いって怖いな。魔力がもう切れてきやがった。昔は、この三倍くらいはやれてたんだけどな……」
自分の手のひらを見つめながら、ぼそっと呟く。
「まあ、あとは剣で行くか―……。……さ、もう四分の一は削れただろ。残りもやろうぜ!!」
「……ああ。ジャスミン、ツツジ、ローズ!! もう一回行くぞ!!」
結界を解除し、俺自身も能力を準備する。
「あー、サントリナ。気休め程度にしかならんとは思うが、一応。『回復』」
「……! ……ありがとな。じゃ、ちょっくら斬りまくってくるわ!」
そう言い残して、サントリナは最前線へと突っ込んでいった。
「リア! 私も近接行っていい!?」
「いいぞ! ……三人とも、気を付けてくれよ!!」
……さ、行くか。
「『移動』、『斬撃』、『爆発』、『切断』、『移動』……」
一気に間合いを詰め、そのまま斬撃を飛ばし、遠くの敵を爆砕し、また切り、別の場所へ行き。
それをひたすら繰り返す。
「……!! ……くそっ……!!」
ギリギリで避けたものの、腹を浅く切られた。
……いってえな……。
「『爆』」
切り込んできた相手を能力で殺す。
……やばいな、囲まれた。
というか、こいつら、マジでどうなってるんだ……?
目の前の一体を見てみれば、体はオークで、オーガの腕四本に、頭は人狼。
そんな感じの奴がわんさか居る。
そして、全員体がちぐはぐだ。
……こういうのって、それぞれがそのパーツパーツの力を持ってるって考えたほうが良い奴だよな。
……さて、どうしようか……!?
――ドン!!
「……くっ」
これは……、衝撃波か……!?
くそっ、体勢が……。
ヤバい、他の奴らも魔法を使ってきそうな雰囲気だ。
……でも。
「『魔物どもを切り裂け』!!」
なんとか短剣を振るいつつ、能力を最大出力で放つ。
周囲にいた数十体をその一撃で切り倒した。
「よいしょっと」
手をつき、そのまま体勢を立て直す。
……いくらなんでも、数が多すぎるな。
一気にかたをつけないと、魔力切れを起こしてしまいそうだ。
「……おい、魔物ども。そんなに俺に近づいてよかったのか?」
魔力を解き放ち、そのまま全力で能力を撃ち出す……!!
「『細断』!!」
俺を中心に飛んだ魔力の波が、魔物どもを飲み込む。
その波に振れると同時に、魔物は切り裂かれていき……。
「……うん、上出来じゃないか?」
周囲にいた、数百、いや千以上の魔物を殲滅した。
……魔力消費がでかいが、こっちもあまり時間がないのでな。
……次、行くか。
「『移動』」