―第百三十一話― 指示
大きく上がる爆炎で、黄昏の広野が照らされる。
……うおっ……!
なかなかグロテスクな魔物が多いな……。
なんというか、色々な魔物を混ぜて作ったような感じだな……。
「『切断』、『爆発』」
接近してきた敵を斬り、遠くの敵は爆砕する。
うん、我ながら完璧の……って、うわっ!!
上空から大量の魔力弾が降り注いできた。
くそっ、急に飛び退いたせいで、しりもちついちまった……。
「リア、大丈夫!?」
「ああ、問題ない。……『防御』」
一時的に結界を張る。
……オッケー、三人も無事到着したようだな。
こいつらなら、何かあっても大丈夫だろ。
人数が少ない方が、いざという時に守ることもできるからな。
「ジャスミンは、遠距離から応戦。ツツジは危なくない程度に近接戦を。ローズは……、同じく近接でいいか?」
「ああ」
「それじゃあ、全員なるべく怪我しないように殲滅してこい!」
「「「はい!!(おう!!)」」」
「……あのー、俺は……?」
「「「「!?」」」」
サントリナ!?
「ちょ、おま、なんでいるんだよ!!」
「いや、ギルドマスターだし、少しは戦力になると思って……」
……はあ。
「オッケー。一応、ちょっとは強いし経験もあるだろうから、好きに戦ってくれ。……というか、こういうのはお前の方が得意だろ」
「たまには、指示を聞く側にもなってみたいものなのさ」
そういうもんなのか……?
まあ、俺も指示聞くだけの方が楽だな。
「……それじゃ、行くぞ!」
結界を解き、それぞれ作戦通りに動き出す。
……それじゃ、俺も……。
……そういや、武器あるんだったな。
腰に手をやり、さっと短剣を抜く。
……うん、皮の感じが心地良い。
刃も鋭く光ってて、なんかかっこいい。
……まあ、ただかっこいいだけの代物ってわけでもないがな。
短剣に魔力を流し、調子を確認する。
……うん、良さそうだ。
これなら……!!
「『斬撃』!!」
スッと短剣を振り、能力を飛ばす。
……!!
今まで以上に広範囲の敵に一気に攻撃出来た。
あいつ、まじもんの天才なのでは……?
「『移動』」
一気に敵群に近づき、そのまま短剣を振るっていく。
……おお、流石は特注品、切れ味と手の馴染みが全然違う。
「『移動』」
……さて、あいつらの調子は……。
…………。
ツツジの周りに一体も魔物がいないんだが。
あいつ、強すぎる。
ローズはと言えば、能力で同士討ちをさせたり、攻撃を避けたりと、上手い具合に場を混乱させられてるみたいだな。
「『サンダー』!!」
凛とした大声が響き、その直後に魔法が高速で飛んで行った。
……ジャスミン、魔法もやばすぎるな……。
「『爆発』」
さっきの斬撃の跡から、巨大な爆炎が上がる。
よしよし、いい感じだな。
「……リアトリスも、いい仲間を持ったな」
「……ああ」
本当に、いい仲間だ。
……だけど。
「サントリナ、お前は何で戦闘に参加しないんだよ!!」
「だってー、リアトリスからは好きにしろとしか言われてないしー」
「好きに戦えって言ったんだ!!」
「わっかったよ、戦えばいいんだろ?」
体が凍ったかのような錯覚に陥る。
……いきなり本気モードになったな、こいつ。
「おい、リアトリス。俺も別に近接やっていいんだよな?」
「ああ。死なないんだったら」
「そこは心配ご無用……だって俺は」
ギラリとした眼光で、サントリナが言い放つ。
「最強の魔剣使いだからな」
次の瞬間には、サントリナは俺の隣から消えていた。
そして、恐らくは街にも轟いたであろう大声で、魔法を唱えた……!!
「『アイス・テンタクル』!!」