―第百三十話― 開戦
サントリナと手合わせしてから数日が経過したある日。
日が丁度沈んだくらいの時間帯。
人々が仕事から帰り、酒場が騒がしくなろうとしていた、その時。
『緊急事態発生! 緊急事態発生!! 冒険者の方々は、至急城門に集合してください!!』
そんなけたたましいサイレンの音で、俺は叩き起こされた。
「くっそ、なんだよ、こんな時間に……」
面倒くさいけど、行くしかないか……。
まあ、焦っていく必要もないだろうし、徒歩でいいか。
「おい、リアトリス!!」
「ん? ああ、武器屋の!!」
「ほれ、武器できたから持ってけ!! ……試し切りには、いいタイミングなんじゃないか?」
いいタイミング……なのか?
「まあ、とりあえずありがとな!」
「おうよ! ……今度は無くすんじゃねえぞ!?」
「はーい」
腰に短剣を差し、具合を確かめる。
……うん、いい感じだな。
流石は特注品といったところだろうか。
これで、戦闘もしやすくなるだろう。
……まあ、する気ないけど。
「おい、リアトリス! おせえぞ!!」
「武器取りに行ってた」
「……本当だろうな?」
大体あってる。
「というか、サントリナ、なんかあったのか?」
「なんかあったから警報鳴らしたんだろうが! ……どうやら、敵さんはお前をお呼びの様だぜ?」
「……へえ……」
結界の端から五十メートル先に、大量の魔物群が見える。
……この感じ、もしかしてだけど、前に言われてた襲撃……!?
……まじか、もうちょっと後だと思ってたんだけどな……。
「『遠視』、『鑑定』」
…………。
「サントリナ、ちょっと今回ばかりはまずいかもしれん」
「……何かあったのか?」
「やばいのがわんさか居やがる」
「……わかった。おーい、皆! すまんが、一旦待機で頼む!! あと、リアトリスのパーティーメンバーはちょっと来い!!」
「よお、俺に用があるんなら、もうちょっと静かにしてくれないか?」
結界を抜け、魔物たちに話しかける。
……反応なし。
「おい、お前らのところのボスはどこにいるんだ? 話くらいはさせてくれよ」
「…………」
……こいつら、全然動かないな。
「……分かった。それで、戦うのか? 戦わないのか? はっきりしろよ!!」
どうせやるなら、さっさと終わらせたい。
夜明けからさっきまで寝てたせいで、一周まわってこっちは眠気マックスなんだ。
『やれ』
どこからともなく響いたその不気味な声を合図に、魔物達は一斉にこちらへ向かってきた。
……今の声、セルバンテスのだよな?
……これで、疑惑は確信に変わった。
「おい、お前ら。……やるぞ」
手のひらから魔法球を飛ばし、ジャスミンたちに合図を送る。
それじゃ、俺も……!!
「『爆発』!!」