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入れ替わり

手を取り立ち上がる。体の節々が悲鳴を上げる。それもそうだ、体育館の入口から中心までここまで転がってきた。痛いに決まってる。


「どうして来たの?」


手を貸していたリゼが尋ねてくる。本当の理由を言うのは気恥ずかしさを感じて言い淀む。


「まあ涙も止まったし、女の子を一人で行かせられないだろ」


あれだけ泣いていたのにその理由はどうなんだ。というよりむしろこっちのほうがこっ恥ずかしいセリフだと口に出してから気づく。


「女の子・・・そうね。うん」


少し顔が赤いように見えるリゼ。無理もない全身傷だらけだ。ただ頬が赤くなるということはまだそれだけ血が残っていることので良いことだと思う。


「それで...やつには勝てそうなのか?」彼女に聞く。目に映った映像だと厳しそうだったが...。もしかしたらということもある。


「ちょっと厳しいわ。弾丸も残り少ないし。何より腕をくっつけたので魔力...魔術を使うための力がすっからかんよ」やはり疲労困憊だ。


「じゃあとりあえず逃げるか?助けが来るかもしれないし」三十六計逃げるに如かず。何事も万全の状態で望むべきだ。しかしリゼは首を振る。


「いやだめね。あいつ私達の位置を知ってるからそれまでに殺されるわ。それに助けが来るほど待ったら、この街が滅びるわ」


そうか...と落胆する。というか滅びるとか言わなかったか。


「リゼ、滅びるのか!?」


「説明していなかったわね。そうよ、あの化け物が現実に出ていってこの街サイズなら一息でしょうね」だからリゼはあんなに必死で戦っていたのか。


厳しすぎる現実に叩きのめされた。と同時に太ももに違和感を感じて取り出す。そうか携帯電話があった。これで助けを呼べばいいじゃないか。二つ折りの最新型をパカリと開く。さっきの衝撃で画面にヒビが入っているがなんとか使えそうだ。だが画面には圏外の二文字が踊っている。


「まあ淡い期待だったさ」


パチリと閉じ、同じようにポケットに滑り込ませる。


体育館の外からガラガラと瓦礫が落ちる音が聞こえる。どうやら影が校舎から抜け出したようだ。槍の格好で突っ込めば校舎に突き刺さるのも道理だろう。


「来るわ」銃を構え直すリゼ。扉の方に銃口を向ける。瓦礫と一緒に黒い物が落ちるのが見える。そこそこ距離があるためここからだと黒い布程度にしか見えない。


『よぉ』


話しかけられる。リゼの方を見るが彼女は鋭く影の方向を観察している。


『おぃおぃもう忘れたのかさっき助けたろ』


「お前さっきの声だろ」声を出さないように会話する


『あーそうだ。俺が助けた。ところでお前さ自分の目の使い方も知らねえのか?』


「目なら開いてるし、知らないわけないだろ」ちょっと小馬鹿にされて少し声が出たようでリゼに何か言った?と言われなんでもないと返す。


『やっぱり知らねえな?お前のその目は普通じゃなくなったんだ。普通の使い方じゃ真価が出ねえんだよ』

『さっき時間が遅くなったろ?ありゃ俺が手伝って目の力のほんの一端を使ったに過ぎねー。そのおかげで助かったろ?』確かにさっきはこいつのおかげで助かったし、時間が遅くなったことも事実だ。


「つまりお前は何が言いたい?」


『つまりだなー。目を活かせば、リゼが化け物を倒すための手助けができる。あんな化け物なんて一捻りだろうよ』


「!?本当か?」


『そりゃお前が一番知っているだろ』


確かに疑う気持ちはあるがそれ以上にこいつが正しいことを言っている気がする。一切と言っていいほど根拠はないが、そう思うのだから仕方がない。


「わかった。リゼを助けるって決めたからな」


『おお、いいねぇ乗り気じゃないか。即断即決の男は嫌いじゃないぜ。』


『じゃあお前の体を借りるからちょっとの間寝てな』


その宣言が聞こえ、意識が無意識の世界に旅立った。

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