リーゼル
「リーゼル...?」
「リゼでいいわ それよりあなたの名前は?」
食い気味に返される。
「いやいやちょっと待ってくれ。名前よりも気になること言ってたぞ"お前"」
「お前じゃないわ"リゼ"よ」
「じゃあわかったリゼさん」
「はいどうぞ発言を認めるわ」なぜか得意げに上から目線だ。
「魔法使いってどういうことだ?」
リゼが指を横に振り訂正する。
「違うわ。魔法使いじゃなくて魔術師。大事なことじゃない?」
1+1が2であることの当然さを語るように不思議な顔で彼女は指摘する。そんなことさして重要には思えない。魔法使いだろうが魔術師だろうと同じような物ではないか。
「じゃあわかった魔術師ってどういうことだ?」
「魔術師は魔術師よね。それ以上でもそれ以下でもないわけだし」
また当然ではないかという顔をする。こちらは今の所名前しかわからない。
「あなたの質問に答えたわ。次は私の番ね。じゃあ改めてあなたの名前は何かしら?」
いつの間にか質問が交代制になっていた。まあこれを答えたら今度はこちらの質問の番だろう。素直に質問に答えたほうがいいか。
「名字は水鏡。名前は写世。水に鏡と写真の写と世界の世だ」
「へぇ中性的な名前ね。覚えたわ」
続けざまにリゼが口を開く
「ところで写世のその目どこで手にしたものかしら」
「今度はこっちが質問する番じゃないのか」
「あら貴方は魔法使いとの違いと魔術師について2つ分無駄な質問したのだから私も2つ質問するわ」
「ちょっと待て本当にわからないんだ。魔術師とか言われてもなんのことだか」
「とぼけるなんて往生際が悪いのよあなたは魔法使いでしょう?しかも見たところソロで生きるような魔法じゃないみたいだし、ボッチで隔離世界に来たはいいものの戻れないのが丸わかりよ」
フフン、正体見たりと上機嫌なリゼ。お前はどうなんだとツッコみたくなる。
「ちょっと待て、ここの1生徒が魔法使いなわけ無いだろ」
「だってその目相当な魔眼でしょ?」
「この目はこの真っ赤な世界で急にこうなったんだ!青い涙が溢れてきて驚いたわ!」
迫真の訴えにリゼががうろたえ始める。
「ちょっとまって、じゃあ写世はたまたまこの世界に迷い込んで偶然その目を覚醒させたただの一般人ってわけ?」
「そうだよ!最初からちょっと待ってくれって言ってるだろ!」
複雑な顔になるリゼ。何かを考えているのだろう手を唇に当てている。30秒ほどの長考のあと口を開く。
「わかった。水鏡、とりあえずこの空間から出るのを手伝ってくれないかしら」
「説明は?」
「外に出たら必ずするわ。約束よ水鏡。」
「あとその水鏡ってやめてくれ、写世でいいよ」
少しの驚きのあと、こころなしか嬉しそうに
「ありがとう、写世」
彼女は言葉をつなぐ。
「私の勘違いがいけないのだけれどかなり時間を浪費したわ。理想の魔法使いとバディを組めればあのくらいの影は一瞬だと思ったのだけれど今の状態はかなり厳しいと思っていいわね」
「ともかく影が逃げた方向はわかる?あっちそれともこっち?」
彼女が指差ししながらした問いかけに影が逃げた方向を指差し、一瞬そちらに顔を向ける。そして顔を彼女の方に戻すと、彼女から伸びるように巨大な黒い影ができていた
「リゼ!後ろだ!」
とっさに叫ぶ。リゼもギリギリのところで気がついたようで体を捻る。しかしそれより早く影が形を変え、鋭い刃となると一閃した。
「――――――――っぅうぅううっ」
声にならない悲鳴と同時に赤い鮮血の代わりに真っ青な血が吹き出すと同時に糸が切れた傀儡人形のように彼女の腕が宙に舞った。