プロローグ
※大注意
タイトル通り、ギルバートルートになります。
オスセシが好きな人は読まない方がいいかもしれないです。
(本当に。真面目に恋愛に振っているので……)
オスカールートに関してはこちらの連載が終わった後に連載開始します!
楽しみにお待ちください^^
時系列的には、三部のあとになります。
なので四部と五部の内容はなかったものとなります。
なので、バレンタインデーイベントも起こっていません!
皆様どうぞよろしくお願いいたします!
週一で更新いたします。次の更新は2月28日になります。
最初はきっと、雛鳥の刷り込みのようなものだった。
はじめて、優しくしてくれたのが彼女だったから、懐いただけで。
はじめて、必要だと言ってくれたのが彼女だったから、情を抱いただけで。
はじめて、手を握ってくれたのが彼女だったから、ずっと側にいたいと思っただけで。
だけど、数え切れない『はじめて』に心動かされて、恩愛も敬愛も切愛も全部彼女で埋まってしまって。呼吸をするように、太陽が昇るように、冬の次に春が巡ってくるように、水が低いところへ流れるように。意識する間もなく、気がついたら、まるで生まれる前からその感情があったかのように、そうなることが決まっていたかのように、俺は彼女を愛していた。
だからずっと、俺の天秤は壊れている。
「ねぇ、セシリア」
「なぁに? ギル」
あどけない表情でこちらを振り返り、愛しい彼女は屈託なく笑う。
それを見ているだけで、唇は自然と弧を描き、多幸感が胸を満たす。
「なんでもないよ」
「えー。なんでもないってことないでしょ?」
「本当になんでもないよ。ただ呼んでみただけ」
「そうなの?」
「そうなの」
冷静に見せかけている自分の中には物事の重要度を測る天秤があって、だけど壊れているから、随分と前に彼女に壊されてしまっているから、『彼女の幸福』以上に重いものが測れない。それが例え、自分自身の幸福であったとしても、国の存亡だとしても、片方の皿に『彼女の幸福』が乗っているだけで、塵芥同然の重さになってしまう。
「本当に大丈夫? 何か言いたいことがあったんじゃないの?」
「大丈夫だよ。……俺が言うのもなんだけど、今日はやけに気にするね」
大きな飴玉のような青い目が、しっかりと俺を映している。そして、数度瞬いた。
「ギルはさ、我慢が得意だから心配になっちゃうんだよね」
「そうかな?」
「そうだよ」
「ギルはもう少し、我が儘になってもいいからね? 本当に欲しいものまで我慢しなくてもいいんだからね?」
だけどたまに、こんなことを言われるたびに、『軽い』と持ち上がった自身の気持ちが心臓を焼き尽くしてしまいそうになる。『重い』と判断した彼女の幸せを軽視したくなってしまう。
自分が彼女を求めたって、それに彼女が答えてくれたって、その先には彼女の最上はないとわかっているのに――
「わかった? 約束だよ」
「うん。わかった」
俺はずっと葛藤の中で生きている。
現在、新作『戦利品として嫁いだ令嬢は、ウソつき夫をメロメロにしたい!』が始まっております!
皆様、こちらもどうぞよろしくお願いします!
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