【閑話】たまには男同士で……
前話が短かったので……(今日は2話投稿)
セシリアたちが地下室でジャニス王子のイヤリングを見つけた少し前の話。
ギルバート含む男性メンバーは、ジェイドの「みんなで一緒にボードゲームしよう!」という呼びかけにより、彼の部屋に集まっていた。
メンバーはジェイド、ギルバート、オスカー、ヒューイ、ダンテの五人である。
ヒューイとギルバートは仕方なくといった感じで、乗り気なのはダンテとジェイド。オスカーはそのどちらでもなく、付き合いで……、という態度だった。
円卓に座るジェイドの足元には、彼自身が集めた各国特有のボードゲームが高々と積み上げられている。貿易等でいろんな国を訪れることが多い彼は、ボーイズがラブする趣味にハマる前は、ボードゲームの収集に熱を上げていたらしい。
「ボードゲームって、その国の風習とか文化がよく表れているから、集めといて損はないんだよね。あと、ゲームを交えると仕事話も円滑に進むし」
というのは、みんなを部屋に迎え入れた時の彼の言葉だ。
そんな自慢のボードゲームを背後に積み重ねたまま、ジェイドは口を開く。
「どうせ集まったんだから、こんな時にしかできない話がしたいよね!」
「みんなでボードゲームするんじゃなかったのか?」
「ボードゲームもするよ! でも、この際だからいつもよりも深い話ができたらいいなぁって!」
はしゃいだような声を出すジェイドに、オスカーは片眉を上げた。
「しかし『こんな時にしかできない話』って、何かあるか?」
「というか、俺たち寮生活なんだから、こういう状況、あんまり珍しくないだろ」
そう渋い声を出すのはヒューイだ。ギルバートも「ですね」と一つ頷く。
「もー、みんなノリ悪いなぁ!」
「そうは言うが、一体なにを話せばいいんだ? 話すテーマのようなものがあればまだわかるが……」
「えー! それじゃ、みんなの好きな人とか?」
瞬間、オスカーは咳き込む。ヒューイも嫌そうな顔で「……女子かよ」とうめいていた。
その反応を受けてか、ジェイドは急に眉間に皺を寄せて、首を振った。
「あー、でもやっぱりやめる! 好きな人とかはなし!」
「ん? なんで?」
ダンテが首を傾げる。
するとジェイドは真剣な顔で額に手を当てた。
「ほら、やっぱり公式から正式な発表があるとさ。こう、マイナー勢としては辛いものがあるでしょ? 妄想だけでも自由でいるために、あえて公式の発表は無視するのも一つの手というか……」
「ギルバート、ジェイドが何を言ってるかわかるか?」
「……さっぱりですね」
「ジェイドって、リーンちゃんにすっかり毒されちゃったよね」
オスカーとギルバートの困惑した声を背景に、ダンテがカラカラと笑う。
もちろんジェイドのいう公式というのは、ギルバートとオスカーのことである。彼はギルセシ、最近ではギルオスを推しているので、二人の発言は公式扱いになってしまうのだ。
ダンテの声を聞きながら、ジェイドは残念そうな顔で机に突っ伏した。
「この際にみんなとの仲を深めておきたいって考えてたんだけど、やっぱり難しいなぁ」
「ま、無理に話をしようとしなくても、ボードゲームでいいじゃないですか。やっているうちに話したいことも見つかるかもしれませんし」
「だな。それに、そこまでしなくても、俺たちはもう十分仲がいいと思ったが……」
「オスカー!」
ジェイドがそう感動したような声を出した時だった。
「あ! 俺、いい話題思いついちゃった!」
そうダンテが声を上げた。その機嫌のいい声と顔からは、嫌な予感がひしひしと漂ってくる。
「いい感じにまとまりかけてるのに、なに思いついてんだよ……」
それはヒューイがそう言ってしまうほど。
ダンテはそんな呟きを無視して声を大きくした。
「これぞ男同士でしかできない会話! 仲を深めるのにもってこいの話題だよ!」
「なにそれ?」
人がいい故に『嫌な予感』を感じ取れないジェイドは、生き生きとした顔でダンテに身を乗り出した。そんな彼に、ダンテはさらに口角を上げる。
「女の子の好きな部位!」
「ぶい?」
「ほら、胸とか、お尻とか、色々あるじゃん!」
「なっ! お前――」
オスカーは頬を赤く染め、ダンテを止める。
しかし、そんなことで止まるような彼ではなかった。
「お。オスカー、赤くなってんじゃん! むっつりー!」
「そういうことを言うな!」
「でもわかるわかる! そういうのって、男なら誰でも惹かれるよねー。で、ヒューイは? リーンちゃんのどこが好きとかあるの?」
「……ダンテ、お前。この学院に入って随分とバカになったよな……」
「全部好きってことね。オッケー! ジェイドは?」
「え? ボ、ボク!? あ、あんまりそういうの考えたことないからなぁ。あ、でも、綺麗な脚の人はいいよね?」
「脚ね! わかるー! あ、でも、俺としては手とかもエロくていいと思うんだよねー」
「手?」
「そう、手。必死に縋ってくる手とかって、可愛くていいと思わない?」
「……ダンテだけ、別次元の話してないか?」
経験の有無である。
ヒューイの冷ややかな声を受けながら、ダンテは最後に残ったギルバートに視線を向ける。
「で、ギルは――」
「……」
「ギル?」
「……」
「ギルってもしかして俺のこと嫌い?」
「別に」
「でもすっごい俺のこと殺しそうな目してるじゃん!」
軽蔑の眼を向けられて、ダンテはそれでも彼を揶揄うように明るい声を出した。
本になるとしたら、収録しない話かもです(いろんなところに怒られそう笑)




