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【三巻発売決定記念】『ダンテの優先順位』

皆様の応援のおかげで、無事三巻の発売が決定しました!

発売日は、2021年6月1日!

ビーンズ文庫様より続けて出させていただきます!!


内容はWeb版の3部の内容になっていますが、書籍特典として

『ギルバートがセシリアを押し倒しちゃう話』(事故じゃないよ!)

『オスカーのラッキースケベ』

を書いております。

Web版だけで楽しんでくださっていた方も、この機会に書籍の方にも興味を持っていただけたら嬉しい限りです!

と言うか、書籍の方! 本当に、どうぞよろしくお願い致します!!


書影は、活動報告へ!

 それは、ありきたりないつもの光景だった。

 放課後。セシルが女生徒からもらってきたお菓子を、勉強ついでに皆で囲んで。やけにセシルと距離が近いオスカーに、ギルバートが怒って。なんで怒られているのかわからないオスカーがそれにムッとして。ジェイドとセシルが、なぜか始まった二人の喧嘩を止めて……。

 そんな騒がしくも平和な、なんでもない光景に、ダンテは机に頬杖をついたまま口元を緩ませた。


「ダンテ様はいいのですか?」


 その声は隣にいたリーンからだった。彼女の恋人である組織時代の後輩は、現在先生に呼ばれて席を外している。


「『いいのですか?』って?」

「あそこに加わらなくて」


 リーンが視線で指すのは、未だに言い争いを続けるギルバートとオスカーだ。今度はお菓子を指して何やら言い合っている。まったく、仲がいいのか悪いのかよくわからない二人だ。


「んー。ああなった二人は止めるだけ無駄でしょ。セシルが止めて止まらないなら、俺が何言ったって無駄だろうし」

「そうではなくて、ですよ」

「そうではなくて?」


 含みを持ったその言い方に、ダンテは一拍置いてリーンの指している方向を知る。

 彼女は『彼らの仲間に加わらなくていいのか?』と聞いているわけではない。『あの、鈍感天然娘の争奪戦に加わらなくていいのか?』と聞いているのだ。

 ダンテは「あー、そっちね」と苦笑いを零したあと、視線をセシルたちに戻した。


「俺さ、男は恋愛対象外なんだけど」

「あら、それはもったいないですわね。……でも、それならばなおのこと問題ないのでは?」

「……今日は、やけに突っ込んでくるね。どうしたの?」

「たまたま、そういう気分なだけですわ」


 リーンがセシルの正体を知っていることはなんとなく解っていた。それは向こうも一緒だろう。しかし、今までそういった擦り合わせは行ってこなかった。必要が無かったからだ。


「ダンテ様はセシル様のこと気に入っておられるでしょう? いいのですか、あそこに加わってこなくて。まごまごしている間に、取られてしまうかもしれませんよ?」


 楽しんでいるのか、心配しているのか、揶揄っているのか。

 よくわからない声色と顔に、ダンテは目を眇めたあと、息を吐いた。そして、椅子の背もたれに身体を預ける。


「俺がさ、あそこに混じったら失礼でしょ?」

「失礼?」

「俺さ、物事にはちゃんと優先順位つけるようにしてるんだよね。もし万が一のことが起こったときに、できるだけ迷わないように。どんなに甲乙つけがたくても、ちゃんと」


 それが先ほどの話とどう繋がるのかわからないリーンは、首をひねる。


「例えばさ、俺、ギルのことそこそこ気に入ってるけど、オスカーの頼みならギルのこと殺せるよ。ギルよりもオスカーの方が俺にとっては優先順位が高いからね」

 物騒なことをサラリと言った彼は、その視線をリーンに流し「もちろんリーンちゃんの事もね」と笑う。

 優先順位をつけるのは、組織にいたときの癖みたいなものだ。誰のいうことを一番に聞くのか、誰を一番に守るのか、そういうことをきっちりと決めていないと、生き残ってはいけなかった。僅かに生まれた躊躇で、死んでいった仲間を大勢見てきた。


「んで、セシルのことも、きっと俺は殺せるよ。そりゃもちろん、殺した後は結構後悔するだろうけど。それでもきっと、俺はちゃんと殺せる。だから、そんな俺があの争奪戦に加わってちゃダメでしょ。あそこに加わるのは、セシルのことを一番に考えてあげられるやつでなきゃ」


「俺はせいぜいセシルがより近くにいてくれる方を応援するだけだよ」とダンテは笑う。


「難儀な性格ですわね」

「育ちが悪いからかなー」

「で。やはり優先順位一番は、オスカー様なのですか!?」

「そこで目を光らせちゃうところが、リーンちゃんだよね」


 いつも通りの彼女の反応にダンテは肩を揺らす。最初会ったときは、大人しくて少し儚げな女の子だと思ってたのに、人は見かけによらないものである。


「今のところ、俺の中でオスカーは二番かな」

「え!? もしかして、他に想われる方が!?」

「だから、違うって」


 ダンテは苦笑いをし、頭の後ろで手を組む。

 そして、いつも通りの騒がしい仲間たちを見渡した。


「今一番、優先して守りたいものは『この、楽しくって馬鹿馬鹿しい平穏』かな」


コミックス3巻も発売決定しました!

今回は、ギルとオスカーのアクスタ付き限定版も同時発売!(初めての公式グッズ!!)

予約はもう始まっておりますので、皆様予約してくだされば嬉しい限りです!

詳しくは活動報告へ!

よろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] セシルを好きな男の子がいっぱいいる中で、ちょっと引いた視点で見てるダンテにグッときます。 二人の思いの強さが分かった上で、二人に遠慮するちょっと大人なところ、すごく好きです。 [一言] 書…
[一言] 「だが、日本じゃあ2番目だ」 「なにぃ、じゃあ1番は誰だ?!」 「ヒュウ チッチッチッ」
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