37.犯人探し
昨日更新するはずだった部分です。
ドレスを引き裂いた犯人は、あまりにもあっけなく発見された。
「ギルバートからなんとなく話は聞いていたが、……お前達だったのか」
物置として使っている部屋の隅で、彼らは腰を抜かしたままオスカーとギルバートを見上げ震えていた。足の裏にはべっとりとオレンジ色のペンキがついている。
犯人は複数だった。
動きが遅そうな大柄の成金の息子に、腕っ節とプライドだけは高そうな脳筋野郎。悪知恵しか働かない金魚の糞。計三人。
そう、彼らは以前ツヴァイにちょっかいをかけていた男子生徒達だった。
「以前セシルにやられたことを逆恨みした、ってところですかね」
「お前達は、誰に手を出したのか、わかっているのか……?」
大事な婚約者を傷つけられたオスカーの睨みと、冷え切ったギルバートの視線に、三人は身を寄せ合って「ひっ!」と情けない声を上げた。
「あなたたちが頭の悪い人間だということはわかっていましたが、まさかここまで考えなしの人たちだとは思いませんでしたよ」
「細々とした嫌がらせに加えて、卵を投げつけたり、鉢植えを落としたり、お湯を上からかけたりしたそうだな? しかも、今度は舞台衣装まで――」
「お、俺たちじゃない!」
大柄の成金の息子――デレクがそう口を開く。
続けて左右の二人、ケルビンとスキートも口々に声を上げた。
「た、確かに! 虫の死骸を置いたり、汚れたぞうきんをアイツの鞄に入れたり、卵をぶつけたのは俺たちだけど!!」
「鉢植えは落としてないし! ドレスも僕たちじゃない!! ドレスに悪戯しようとしたのは本当だけど、僕たちが行ったときにはもうあんな状態だったんだよ!!」
三人の言葉にギルバートとオスカーは互いに顔を見合わせた。
『そんなことやってない! 身に覚えがない!』と否定するのならばまだわかるが、『一部はやっているが、それ以外は知らない!』というのは、言い訳としてどうなのだろうか。ちょっとよくわからない。
「それに、鉢植えを落とすなんてあぶないことするわけないだろ! 俺たちのモットーは、『痛めつけるが、傷つけない』だ!」
「お湯だって浴びせてねぇ! やるなら水だろ! 火傷すんぞ、あぶねぇな!!」
それも大概どうかと思うのだが、彼らにも彼らなりのルールがあって人を痛めつけていたらしい。
「いやしかし、お前達はセシルに向かってナイフを振りまわしてたって聞いたぞ?」
「あんなもん、びびらせるためのフリに決まってんだろ! ナイフだってこれだぞ?」
ケルビンは懐から出したナイフに指先を当てる。すると、刃先がみるみると柄の中に入っていく。――仕掛けナイフだ。
「じいちゃんが当主引退した後に技工士始めて、こういうの作ってるんだよ。横から力を加えると、刃は出たまんまなんだけど、縦に力を加えると刃はなくなる。こんなもんで、誰かを傷つけられるわけねぇだろ」
そう言って、ケビンは手に持っていたナイフを二人に向かって投げる。
「とにかく俺たちは、蹴ったり殴ったり脅したりはするが、傷が残るような怪我はさせねぇし!」
「死ぬようなことなんて絶対にしないよ!」
「というか、そいつ! 人の命をなんだと思ってんだ!」
「……実はお前達、根はそこまで悪いやつらじゃないだろ?」
オスカーの呆れたような言葉に「あぁん!? 俺たちはワルに決まってんだろ!」とデレクがすごむ。しかし、迫力はゼロだ。『ワル』というより、『ワルに憧れを持つ思春期の青少年』といった感じにしか見えてこない。
ギルバートは先ほど受け取ったナイフの刃先を出し入れしながら、思考を巡らせる。
「彼らの言っていることが、嘘じゃないとして。それなら、鉢植えを落としたり、ドレスを裂いたりした犯人はどこの誰なのか……」
「ギルバートさん、オスカーさん! どこにおられますか!」
その時、廊下からグレースの悲鳴に近い声が聞こえてきた。二人が廊下に顔を出すと、気づいたグレースが焦って駆け寄ってくる。その後ろには、リーンとアインもいた。
「どうかしましたか?」
「というか、セシルはどうした」
オスカーの疑問に答えたのは、後ろにいたアインだった。彼の顔面は蒼白で、目も小さく小刻みに揺れている。
「ツヴァイが……」
「ん?」
「ツヴァイが俺のフリして、セシルを――」
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