腹黒運営
「……行くに決まってるだろ! 前の映像を流されたら、逆に舐められる。俺は一番じゃないと駄目なんだ」
ゴブ蔵は注目プレイヤーになる事を諦めないみたいだ。恐怖を振り切って
、立ち上がったみたいだけど、運営に良いように利用されたような気がしないでもない。象の魔物が俺達を誘ったのは偶然か? 一応、レイや象の魔物もNPCだから、運営の意のままなんて事は……レイと草井さんの自由さは関係ないと思っておこう。
「そうですか? 次のインタビューをするため、カメラの一台が彼女達を追ってます。このカメラに案内させましょう。追い付けるかはゴブ蔵さん次第ですがね」
あの空を飛んでるカメラは何台もいるのか? 確かに動画でも別アングルに切り替わる時もあったし、数台のカメラを使っていた。TVドラマやスポーツと同じ事だな。
「大丈夫だ! 山から出てなければ、手下のゴブリンが残ってるし、遠くからでも命令出来る。足止めをさせれば……」
山一帯まで命令が届くなんて凄いな! そういう陣地というのが設定出来るのか? それともこの場所が、ゴブ蔵のマイルームだったり?
「そうですか……私は少し準備があるので、先に行ってください。大丈夫、罠に嵌めようとは思ってませんから」
運営は笑いながらにそんな事言われると、ゴブ蔵の方は逆に不安になると思うんだけどな。
「お、お前が来るまでに終わらせてやるさ」
ゴブ蔵はカメラが先行するのを追い掛け、洞窟から外へ出ていく。カメラの案内もあるけど、ここが山の一部みたいなので瞬時に移動する事は出来ないのかも。
まぁ……それは置いといて、この場所にいるのは俺と運営の二人。コイツが何処かに消えてくれたら、この場所から安全に抜け出せるし、アイテムを盗む事が……といっても、取るのはゴブリンのドロップアイテムだけだぞ。骨を落としてくれてたら良いんだけど……
「ゴブ蔵さんは駄目ですね。数で押す形を選んだのに、残り少ない数で勝てると思ったんでしょうかね」
腹黒っ! ゴブ蔵を利用して、レイと草井さんの戦闘を映すつもりか? 残念だけど、レイ達が絶対勝つとまでは言えないぞ。それにこっちとしては倒されると困るんですけど……
「そこのところ、どう思います?」
「俺としては、追い掛ける事自体止めて欲しかったところなんだけど……見えてる!」
運営の人はいつの間にか、こちらに振り向いていた。
「カメラが一度振り向きましたし、MAPを確認すれば、貴方の場所を把握する事は可能でしたよ? ゴブ蔵さんはそれを見落としましたけどね」
ゴブ蔵は気付いてなかった事を教えてくれたけど、運営の人は見えてるんだよな? 鎧は普通のプレイヤーにはやっぱり見えないようだけど、その中に隠れても、MAPで位置が分かる『尾香』等の特技を持つ相手には注意しないと駄目か。