レイの初戦闘
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「あっ! 見つけた。少し前まではすぐに追い掛けてきたのに何でだろ?」
デビルドッグを発見。さっきまでは俺の骨を目当てに追い掛け回されたのに、今回は存在自体気付いてない感じだ。鉄骨を取り入れたから臭いが変わったか? レイと同化してる、俺の右手の臭いは変化してないはずだけど。
「お腹が満たされてるだけかもしれないし。都合良く、一匹しかいないんだ。何とか攻撃を当ててみよう」
レイはフラフラとデビルドッグに近付いていく。浮いてるお陰で足音も無いし、デビルドッグも周囲を気にせず、まるで今から寝ようとしてるのか隙だらけだ。
「反撃されるのも嫌だから、一撃で決めないと駄目だよね」
いやいや……反撃されるといっても、狙われたのは俺の手だったわけで、レイもデビルドッグにお尻を何度も噛みつかれてたけど、すり抜けてたぞ。痛みを感じてる素振りもなかったし、白装束も破れてないからな。
「まぁ……狙われるのは俺の右手で、レイに攻撃は通じないと思うんだけど」
「そうかもだけど、怖いと思うんだから仕方ないでしょ」
レイはデビルドッグに攻撃するため、俺を振り上げた。威力を上げるのは振り落とすのが一番だとは思うんだけど、両腕でプルプルと震えてる。
「ん……怖い? 待て待て待て待て! 降り下ろすのは俺がヤバいので……ぎゃあああ!」
攻撃で当たるのは鉄棒部分じゃなくて、俺の頭蓋骨じゃないのか! しかも、急降下の絶叫マシンに乗ってる感じで滅茶苦茶怖いし、威力が増す分、デビルドッグよりも俺の頭蓋骨陥没、ゾンビの目玉も潰れるなんて事になったら……
「痛みはないくせに、変な感触が……ボキバキと音が鳴ってるんだけど、俺の骨なの! 鉄骨入って、骨の強度上がってないわけ?」
デビルドッグは絶叫した。腐った肉のせいでブニョブニョの感触を俺は感じながら、骨が粉砕していく感触も。今思えば、叩き潰す時点で、綺麗な骨が手に入るはずもなく。しかも、HPが5/10に減っていた。装備品としての使用回数というべきか、地面に落ちただけで減っていた気がする。(装備品になった最初の時とか、レイが草井さんに渡した時とか)
「倒せた、倒せたよ! これならベルゼブも一撃でグチャグチャだね」
デビルドッグはグロ画像並の肉塊状態。すぐに消滅しないのは『何か』必要な時があるのかも。骨がないのは仕方ないよな。
「いやいやいや! 俺が『待った』って言ったんだから、止めるべきだろ。俺が壊れるかもしれないの。頭蓋骨が壊れたら……」
頭蓋骨が壊れたらどうなるんだ? ゲームオーバーで、レイの部屋に戻る? 魂の場所は頭蓋骨を選択してたけど、回復しなかったら……
「大丈夫だ……あっ……少し穴が空いてる。けど、これをこうして」
穴が空いてる! そう言われるとスースーするような気がしてくるんだけど、『補骨』もなしにどうやって埋めるつもりだ? デビルドッグの肉塊に触れてるんだけど、エンガチョエンガチョ! 俺に止める術がない。
「完成! さっきよりも強い武器になったんじゃない?」
「おおっ……角が生えてる。槍みたいに突く武器なら、HPが減らないかも」
頭蓋骨が少し欠けたのは額部分。そこを『補骨』じゃないけど、デビルドッグの肉塊ととがった骨で角みたいにしたみたいだ。武器としては槍というか、鎌。突き刺すなら壊れる心配はないかもだし、デビルドッグの骨を手に入る?