お父さんとアイドル
「へぇ……良い心掛けじゃんか。アイツは注目プレイヤーの一人だしな。メンバーも凄いのが揃ってるわけなんだろ? その中にお前もいるわけだ」
空凛さんは阿久野が口を滑らせるように、凄いメンバーの一人だと褒めた。阿久野は他のメンバーを姫を守る騎士達みたいと言ってたし、自分もその中にいるつもりだから、空凛さんの言葉にドヤ顔をした。
「まぁね!人数は増えたけど、男は四人だけだから。俺達が守ってやらないと……縁の下の力持ちだな」
阿久野を含めて男四人という事は、天野さんのギルドは女子中心なのは相変わらずみたいだな。
「縁の下の力持ちって……阿久野はシールダーだから分かるけど、もう一人はドワーフのシールダーだろ? 残りの男プレイヤーも含めて、シールダー集団とか」
「それは面白そうだけどな。チームに同じ職業が二人は無理だと言っただろ。後は司祭の『お父さん』と、新人の男ダンサーだな。男に攻撃主体がいない状態なの」
「防御、回復、補助ってわけだよな。回復一人だと二チームに分けるなら、厳しくないか? それとお父さんや男ダンサーなんてネタっぽいぞ。お父さんと呼ぶのも気持ち悪い」
お父さんってのがプレイヤー名だとしても、俺は年齢が高く、色んなゲームの経験者として侮れないと思うんだけどな。流石に天野さんの父親はないだろ。男ダンサーは……アイドルもいるし、有名ダンスグループもいるから、その練習のためにやってるのかも。
「いやいや……その二人は注目プレイヤーなんだよな。お父さんは天野さんより目立ちたくないって断ったらしいんだけど、ダンサーはアイドルグループの一人らしくて、運営が選んだわけじゃなく、違った意味で注目されてるから」
俺の思った通りなのかよ! 姫を守る騎士達が、アイドルなんて受け入れたもんだ。これも天野さんの両親が頼んだ? 阿久野には天野さんの両親が無銘の関係者とまでは話してないんだけど。
「回復役は僧侶の女性がいるけど、お父さんが天野さんのいる方にいくんじゃないかな? 司祭は僧侶の上級職の一つだから、一緒のチームは無理だし。それと……運営が選んだ注目プレイヤーはもう一人いるんだけど、これも断ってるんだよな」
天野さんのギルド内だけで、注目プレイヤーが三人もいるとか多過ぎだろ(アイドルダンサーは除くぞ)。しかも、二人とも天野さんを立てるなんて、カリスマ力半端ないな。その二人も無銘関係者……って事はないか。
「そんなに注目プレイヤーがいるなら、他のメンバーの事も色々教えて欲しいんだけど」
「そうだな……はっ! 代達は敵になるんだし、これ以上の情報は駄目だ。お前が天野さんと敵対してるのは聞こえてきたし。くそっ……上手く乗せられてしまった」
空凛さんが更なる情報を手に入れようとしたけど、阿久野も気付いてしまった……というか、言い方がわざとらしい。阿久野なりにハンデをくれたのかも。
「そういえば、天野さん……セシリアの左腕が無かったけど、最初からああなのか?」
これはギルド云々じゃなくて、そんな特徴があれば、阿久野はいち早く俺に話してそうなんだけど、それが無かったからだ。