死角からの攻撃
「それよりも先に進むぞ。ここで人数を減らさずに済んだのはありがたい。下はこの階みたいな装置はなく、どう開くのか分からなかったからな。考える人数が増えるのは助かる」
狼男は変わらず、先頭を進んでいく。下に着いたら一旦切り上げるつもりだったんだけど、どうしたとものか。今の装備扱いは狼男で、草井さんはダンジョンに放っておく事になるわけだし。
「どうした? そろそろお眠むの時間か? 明日も学校があるし、中断するのもありかもな。アイツとの約束もあるし」
かおリンは俺が欠伸するのを見て、時間を確認。アイツとは天野さんの事かな? 中断する事を許してくれそうだし、ちゃんとダンジョンから始める事が出来そうだ。
「それに……もしかしたら、下の階に進むよりも、ポン骨が手に入れたのが一番のお宝かもしれないしな」
かおリンには見えないままだけど、左腕を付けた事で分かった? かおリンが体当たりしても、鎧に跳ね返されずに通り抜けたからな。狼男は見えるのか、見えないのか? まるで興味がないみたいで、何も言ってこなかった。
「それは助かるかも。下の階に進んだら、そこで中断で良いかな」
草井さんはレイに任せよう。草井さんなら、フラッと戻ってきそうではあるけど。俺はレイに目を向ける。一応、かおリンの前ではプレイヤー扱いにしておかないと。
「はいはい……前みたいにいなくなるわけね。それなら、試しにこれを持っておけば良いんじゃないかな?」
俺がログアウトする事をレイは察してくれたみたいだ。そこで手渡された目。両目が見えるようになって外されたけど、草井さんの体の一部だ。ドロップアイテム扱いになるかもしれないけど、キョロキョロと動いてるのが何だか気持ち悪いけど、繋がってる感はある。
「無理だったら……その時は頼むな」
かおリンは階段を先に降りて、次に俺とレイが続いた。
「はぁ! いきなり変化し過ぎじゃないの?」
地下五階。狼男は俺達を待っていたわけじゃなく、ある位置で止まっていた。そこには下に行く階段があって、地下六階というよりも段差を付けたかったのか。その場所から水で埋め尽くされ、水中を移動しないと駄目になっている。だからといって、船のような乗り物は一切ない。それに加え、足元にも水がきそうだ。
「以前はこんな状態になっていなかったぞ。水中系の魔物がいないと無理だぞ。水を抜く装置を探すところからか」
いつの間にか水路の水が溢れてしまって、こんな状態になったのか? 俺は飛べるわけなんだけど、水中に次の階段があるなら無理だ。それに水中内で息が続くかも分からないし。野良魔物が水中戦を得意としてるなら、ヤバい事になる。かおリンが使っている『火の息』も使えないと思った方がいい。これは中断するには良いタイミングなのかもしれない。
それを口に出そうとした時、狼男が倒れた。装備から外れたという表示が出たという事は、一撃で死んでしまった事になる。警備員はそれなりに強いはずなんだけど。
「水中からの攻撃! 一撃で倒すとかヤバいだろ」
相手はまだ姿を見せてない。MAPでも赤い点は表示がない。俺の装備扱いだったから、攻撃を受けた時点で接触した事になっていてもおかしくないのに。