強制的戦闘
「ここにいたのはあんな蜥蜴じゃないから。『与骨』したカエルを食べたからなんじゃ……」
「それを俺に言われても」
蜥蜴はカエルを食べると腹が膨れて巨大化するだけじゃなく、顔に襟巻きが生え出して、それは鶏冠カエルの鶏冠に似ている。待て待て! 『与骨』したカエルでも、元は大蜥蜴の骨で同じ骨じゃん。成長するのはおかしくないか?
「あっ! 指示してるアイツが鶏冠カエルか」
鶏冠カエルは一匹だけじゃなく、『与骨』したお陰で増えてるんだけど、指示してるのは俺に頼み込んだアイツだろ? 鶏冠を付けたカエル達は、鶏冠を取り外して、トサカッターでブーメランのように投げていく。
それは蜥蜴の体に傷をつけ、地道にHPを削っていくのに、カエルを食べて回復。それを繰り返して、蜥蜴だけが大きくなって……負け決定だろ。
「……うん。骨を諦めて、あれは無視するべきだな」
「その方がいいよ。ポルターガイストはカエルを攻撃するのには大丈夫でも、あの大きさだとダメージは少ないと思うから」
あそこまでなると隠しダンジョンのボスになって、他プレイヤーを倒してくれ。
鶏冠カエルはまだ諦めないのか、『ゲロゲロ』と仲間を呼ぼうとする。もう『与骨』したカエルじゃなくてもいいと思ってるのかもしれないけど、無謀過ぎるだろ。
「というわけで……あれ? 前に進まないんだけど」
元来た道を戻ろうとしたのに、どういうわけか前に進まない。それどころか蜥蜴と鶏冠カエル達が戦ってる場所に吸い込まれるようとしてるんだけど。
振り返ってみても、蜥蜴が俺達に気付いて、息を吸い込んでるわけじゃない。ひたすらに鶏冠カエルが『ゲロゲロ』と仲間を呼んでいるだけ……仲間を呼んでいる? もしかして、カエルの骨が原因で、俺も仲間扱いされてるのか!
その呼び掛けに答えたくないんだけど、何の選択肢も発生しない。強制的で逆らう事が出来ない。
「マジか……レイ! 俺を引っ張って……マジか!」
レイは俺を掴もうとせず、「頑張って」と手を振っている。巻き込まれるのが嫌なだけだろ。
「ゲロゲロ!」
仲間を呼んだはずが、俺の登場に鶏冠カエルは驚いてるんだろな。そんな言葉を発してると思うんだけど、それはお前のせいなんだから!