ひっくりカエル
「ゲロゲロゲロ」
かおリンがあまりの気持ち悪さに吐いたわけじゃなく、鶏冠カエルが鳴いているだけ。カエル達の親分か? 鶏冠なんてレアアイテムっぽいぞ。
「かおリンは役立たないから、今度こそ俺の出番だ」
かおリンが硬直してるのを良い事に好きな事を言っておこう。
「でも…とカエルは攻撃するつもりはないのかも」
レイは鶏冠カエルを指差して、自分に酔ってる俺の頭を叩いた。鶏冠カエルは硬直するかおリンには何もせず、俺達の側までやってきてひっくりカエル。無防備やお腹を見せて、どういうつもりなんだ。どうぞ食べてください? それとも腹を突き破って別の魔物が登場するとか勘弁して欲しいんだけど。
「……食べていいのか?」
草井さんなんてご馳走みたいに思ってるようだし。鶏冠カエルは仲間を多く倒された敵討ちに現れたんじゃないのか? 何かを訴えるような眼差しを俺に向けてくるんだけど……
「もしかして……『与骨』して欲しいのかも。よく見てみると鶏冠が骨の形をしてるんだよ」
骨の形? けど、俺は隠しダンジョンに入って一度も『与骨』はしてない……ん? 『与骨』はしてないけど、カエルに骨を投げ捨てられたけど、それを食べて進化した? 鶏冠カエルもそうだとばかりにゲコゲコと鳴いている。
「そうみたいだぞ。天敵の蜥蜴を倒したいらしいな」
「草井さん、カエルの言葉が分かるのか!」
「カエルを食べたお陰だ」
草井さんが鶏冠カエルの言葉を訳してくれた。それなら最初の言葉も分かってるはずなのに、レイが何も言わなかったら食べていたな。
「蜥蜴を倒したいか……かおリン達が蜥蜴を倒そうとした時、カエルが向かうのは蜥蜴を一緒に倒すつもりだったわけか」
蜥蜴を暴走させるためもあるけど、カエルにもちゃんとした理由があったけだ。
「う~ん……当初の目的は『与骨』で仲間を増やすはずなんだけど、狼男もいるし……気持ちは分からなくもないんだよな」
『与骨』は狼男が抜けた後の方が良いし、カエルが一時的でも仲間になれば、かおリンが嫌がるだろうけど……そもそも、ここで仲間にするのはカエルしかいないんじゃないのか?
すると、様子を見に来たカエル達か、水の中から顔だけを出して合唱するように鳴き始めた。これぞカエルの合唱だな。その鳴き声に、かおリンは硬直から痙攣し始めた。
「『僕達も攻略の手助けをしますから! 下の階にもいます!』 だと」
この鶏冠カエル一匹に『与骨』するだけで、他のカエル達も協力してくれるのはお得だな。しかも、下の階でも協力してくれるなら尚更た。
「なら、協力はスライムに見えないようにしてくれたら」
俺は『与骨』する事に決めた。足も生えたし、特技も使えるようになったんだから、ここで提供するのは『バットの翼骨』がいいだろ。