鶏冠カエル
「『補骨』する場面を前も見たけど、更に気持ち悪くなったよな」
「だね。一緒にいるなら草井さんの方がいいかな」
かおリンに言われなくても、俺自身がそう思ってるから。慰めるように草井さんが頭を撫でてくるけど、同情されたというか、負けた事に悲しくなってくる。いや、レイは最初から草井さん推しだったか……待て待て! 草井さんはカエルのドロップアイテムを食べたせいで、肌が緑に茶色の斑点、カエルの皮色になってる。こっちの方が駄目だろ。ある意味、俺以上に変わってるから。レイやかおリンもそこをスルーするか!
「体の変化ぐらいは当たり前だ。もう一体いるんだ。さっさと行くぞ。俺達の姿を見た奴等が、追い掛けてくるかもしれないからな」
それはお前が堂々と隠しダンジョンの中に入って行ったからだろ! というか、他プレイヤーを利用して先に進むのはありなのでは? なんて、面倒臭そうなので言うのは止めておこう。
「そう言うなら、アンタが階段前で足止めしておけよ。私達で蜥蜴を倒す事は出来るし」
俺が言わなくても、かおリンが言ったし。
「そうだな。脅威なのは蜥蜴よりも、追ってくる奴等の方か。そこまで言うなら引き受けてやる」
狼男は警備員をしてるためか自信過剰らしく、当然の行為だと思ってるな。そう言って、上の階段付近まで戻っていく。
「そのまま放っておくのもありじゃない?」
「駄目だな。置いていくのは装置を動かす場所じゃないと」
狼男がいなくなった事を良い事に、かおリンとレイはブラックな会話をしながら、装置がある場所まで進んでいく。かおリンは勿論カエルの不意討ちの警戒を忘れていない。
今回は足も生えて『尻尾鞭』も使えるし、多数現れて、一気に倒せたらどんなに気持ち良いだろう。
「カエル達、早く出てこいや!」
と思わず叫んでしまったので、咄嗟に頭を下げた。予想通り、かおリンが体当たりをしてきたので回避成功。カエル嫌いと分かってるのに、呼ぶ俺が悪いんだけど。
「私に対する嫌がらせ? 『補骨』した力を試すのは蜥蜴相手で良いだ……ろ」
「あっ……」
かおリンの背後にカエルの魔物が。しかも、さっきのカエル達よりも大きく、頭に鶏冠みたいなのが付いている。その姿と、カエルの舌で舐められた事もあって、かおリンは硬直してしまった。初めての相手にMAPの敵表示されてなかったのもある。