人面犬(スケルトン)誕生?
『人型の方でいいよね!』
えっ、そっちが決めちゃう! いや、待てよ……体だけじゃなく、魔力も分けて貰えるんだよな。もしかしたら、頭蓋骨や両手を浮かして移動させる事が出来るんじゃないか? それを知ってるから、レイもそちらを選んでくれたのかもしれないし……
レイは再び俺の視線をベルゼブへと向けると、食べ終えたばかりの骨が置かれていた。それを確認すると『補骨しますか?』という選択肢が出現したので、迷わずにOKした。
「おっ、手の感覚がある……けど、浮かないんですけど!」
手を動かす事は出来るけど、移動するのは蜘蛛のように這っていくしかない。頭蓋骨を運びながら移動するのは無理っぽいし、攻撃手段があるかどうか……手首もないわけだから、投げようもないし、武器を持っても振る事も出来ないぞ。
追加 力 +2
魔力 +5
器用さ +1
『与骨』でパラメーターが減ったんだから、『補骨』すると増加はしてるみたいだけど。ゾンビの骨だから、弱い骨なのは仕方ないし、魔力も序章のボスに期待するのも酷な話だろう。もしかしたら、デビルドッグの方がパラメーターは高かったかもしれない。
「僕は少し休みまちゅから、後は好きにやっちぇください」
レイとは別の、しかも子供っぽい声がするんだけど、これって……ベルゼブの声か? 手を動かせるだけじゃなく、魔力が増えた事で聴覚が復活みたいだ。ベルゼブは玉座から立ち上がり、壁にへばりついた。これがハエの休眠みたいだ。
『まずは部屋に案内するから。私と一緒の部屋になるけど許してね。頭は私が運んで行ってあげるから』
「ちょっと……待って」
ベルゼブが無防備な状態で、狙うなら今なんだけど……流石に無理か。ハエだから目を閉じるわけないから、本当に寝てるか判断が付かない。
『どうしたの? ああ……視線が外れると、手が動いてないんだね。一緒に持っていくよ。そうするよう薦めたのは私だし』
俺の手が視界から外れると、感覚が無くなった。体がない分、目で手を動かしてるのかもしれない。
「そうしてもらえると助かるけど、部屋はそんな近くに……部屋!」
『何? 一緒の部屋だからって、Hなハプニングは起きないからね』
この状態でベルゼブを倒す方法を考える以外にも、部屋がセーブ地点、マイルームになるんじゃないか? という事はログアウトした後、リセットも可能。別の種族に乗り換える事だって……
「幽霊の君相手にHなハプニングなんて無理でしょ。お風呂やトイレがあるわけでもないし」
『そうとも限らないんだよ? 服を着崩れさせる事も、脱ぐ事だって出来るんだから』
レイが着ていたのは白装束。それを着崩す音が聴こえたような……けど、自力でそちらを振り向けない分、何が起きてるか分からない。想像するだけでHだと言えば、そうなるかもしれないけど。
『あっ! 少し、ポン骨の手を借りるよ』
レイは俺の頭蓋骨を左手に添えて、俺の右手とレイの右手を重ねた。ここで『与骨』は発動しなかったが、同化したように骨の姿は無くなった。
『憑依というべきなのかな? これで私は物に触れるようになったの。でも! 元に戻せるし、私の右手も貸してあげる事も出来るから』
レイは俺の頭蓋骨やゾンビの目は魂の一部を触れてただけで、同化する事でようやく物質に触れるようなったみたいだ。けど、その分、骨が邪魔をして、壁をすり抜ける事は無理になるみたいだ。
「あっ……左手は動かす練習がしたいから、そのままでいいかな」
左手だけ前進させるみたいになるけど、ベルゼブを倒すのに上手く使えるようにもなっておかないと駄目だしね。