隠しダンジョンでは無くなりました
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「ちょっと……何で仲間が増えてるんだよ。色々突っ込みたい事があるんだけど、コイツって警備員のNPCだろ? 捕まったわけじゃないよな」
かおリンは街の出口で待っていて、当然仲間が増えてる事に驚いた。それも警備員でNPCのウェアウルフ。ウェアウルフは言いにくいから狼男にしておこう。
「草井さんが出禁扱いされてたんだよ。逃げてる時の落とした道具が証拠にされてさ。それで買収しようとしたら『与骨』が発動して、今の状態になったわけだ」
嘘は言ってないよな。狼男が仲間になった事でレイや草井さんがNPCとバレないようにしておかないと。
「ふ〜ん……ウェアウルフが持ってる鉄棒が草井に刺さってたのは分かったけど、変なプレイしてるわけじゃなかったけだな」
まぁ……草井さんの尻に突き刺さってるのが木の枝に変わってるし、鉄骨を持ってる狼男もいるわけだから違和感があるのは分かるけど、気にするのはそこなのか? いや、俺や草井さんも同類だな。
「コイツも仲間か。時間も惜しいからさっさと行くぞ」
狼男は自分がリーダーと言わんばかりに先頭を突き進む。街の警備員だから、隠しダンジョンの場所は把握してるのかもしれない。けど、洗脳状態に近いとはいえ、それを教えてくれるのは凄い。
「偉そうな奴だな。面倒臭いから、一番最初に抜けてもらうかな」
「良い案だと思う。偉そうなのはポン骨だけで十分だから」
かおリンがボソッと呟いた。狼男は人数合わせにはいいけど、お気に召さなかったみたいだな。レイも同じようだけど、狼男と俺を同列扱いって……そこまで偉そうか? 俺とレイ達の関係は特別なんだから、そこらへんは許して欲しいぞ。
「着いたぞ。ここが入口だ。最下層まで着いた者は、街の警備員を含めて誰もいない。脱出アイテムは必需品だからな」
着いたのは無人のテント前。テーブルが前に置いてあるから、中からプレイヤーやNPCが出てくると思わせる事で、ダンジョンの入口だと分からないようになっていたのかもしれないけど。
「……ねぇ、私達って注目されてる気がするんだけど、それもコイツのせいなの?」
レイが言うように、街の中を移動する時、周囲の視線を浴びていた。多分プレイヤー達だと思うんだけど、警備員の狼男に連行されたからじゃないんだろうな。俺達はパーティーを組んでるように見えるし、その中に警備員も含まれてるわけだ。
その中で一番注目されたのは草井さんじゃなくて、レイだ。
草井さんは尻に木の枝を突っ込んでるのも印象的だけど、鉄骨だった時のを見てるのであれば薄くなる。けど、レイの場合は頭蓋骨の俺を持っていたわけで、その頭蓋骨が進化してるわけだ。誰も俺がプレイヤーだと思ってないんだろうなぁ……
「それもあるかもしれないけど……隠しダンジョンじゃなくなるよな」
注目を浴びたせいで、テントの中へ追い掛けてくるプレイヤーもいるかもしれない。これは堂々と進んで行った狼男のせいだな。