飛べない骨は、ただの骨だ
「屍のように動かなくなった……死んでるの」
レイも酷い事を言ってくるな。まぁ……俺はすでに屍なんだけど。
「ふ〜ん……『補骨』には特技とか増える感じなんだな。パラメーターを見たり、それを選んだりしてるんだろ」
かおリンはプレイヤーだから、俺が何をしてるのか分かるわけだ。けど、覚えた『特技』を教えるまではしないけどね。
「それも終わったけどな。準備完了! かおリンが言う隠しダンジョンに行く事にするか」
「よし! 隠しダンジョンは入口の一つはシンリーの中にあるから、まずはそこに移動しよう」
かおリンは俺の部屋を出ると姿が消えたけど、『シンリー』って何? 俺は隠しダンジョンに一度も行った事がないんだけど
「シンリーはあの街の事だよ。かおリンが消えたんだけど、一瞬でシンリーに行けるようになったの? 私と草井さんは無理なんだけど」
レイと草井さんは何度も部屋を出入りしてるけど、プレイヤーじゃない二人には無理だから。俺が移動すれば、装備として一緒に行けるとは思うぞ。なんせ、序章から本編に来れたんだからな。
「レイ達は俺やかおリンとは違うからだろ? 俺がシンリーの街に移動すれば、一緒に行けるだろ……ってあれ!」
バットの羽で飛べるはずなんだけど、体が重くて浮かないんですけど! 実はバットの骨と相性が悪かったなんて。蛇みたいに這うようにして動けるけど、尻尾が宙に浮いてないから、折角覚えた特技『尻尾鞭』が使えない。やり直すのは無理だし、最悪だ。
「しかも、遅っ!レイが運んでくれた方が早い気がする」
「嫌だよ。頭蓋骨だけなら良かったけど、重そうだし、気持ち悪いから。草井さんに持って貰いなよ」
『補骨』した時に速-1だったし、飛べないだけで移動速度がこうも変わるなんて。重いの仕方ないとして、気持ち悪いというのは止めてくれ。俺も少しは思ってるんだから。
「草井さんに持たせるのちょっと……これ以上目立たれても」
厳つい腕と尻から鉄骨、更に骨の鞭を巻き付けた日には目立ち過ぎて、プレイヤー達の攻撃対象になるかもしれないだろ。
俺は渋々這って移動する事にした。全く動けない時よりかはマシと思っておこう。街の中や隠しダンジョンでもいいから、誰かに『与骨』して身軽になるか、『補骨』で体のパーツを増やして、特技を使えるようにするかだな。
「選択画面が出てきたな。ちゃんとシンリーの名前も表示されてるぞ」
選択肢はシンリーとそのまま外に出るかの二つ。序章のベルゼブの城やレイと草井さんが行った隠しダンジョンは表示されていない。勿論、選ぶのはシンリー。
「駄目だ。お前達は街で騒ぎを起こしたから入る事は許されないぞ」
「えっ! 俺は何もしてないんだけど」
シンリーの街に移動した瞬間、警備員に追い出されてしまった。俺がバットに運ばれたのが騒ぎになってたとしても、昨日の出来事で捕まってないんだけど、一体どういう事なんだ?