ボン・キュ・ボン
「それはちょっと止めてくれない? 師匠なんて恥ずかしいだろ。かおリンで構わないから」
俺の師匠になるのはかおリンにあっさり拒否されてしまった。仕方がない。心の師匠にでもしておこう。他にも頭蓋骨だけで戦闘する方法を教えて貰えたら。
「何? 変なのが飛んでる! ポン骨が飛んでる。骨は全部同じ色にしなよ」
レイが街から出て来て、俺に気付いた。けど、『変なの』って別に言わなくても良くないか? 頭蓋骨が赤で、翼の骨が白みたいだ。そういえば、カラーリング変更出来るのをサタリアが言っていたのを今思い出した。今の画面にはないので、マイルームで同じ色にしよう。赤じゃなくて、全部白にして目立たなくだな。
「一言を多いし、まずは『無事で良かった』とか声を掛けてくれた方が嬉しいんだけど。草井さんなら……うおっ!」
「街の外に向かったと聞いた。良かったな。進化してる」
「いやいや……俺よりもそっちじゃない?」
草井さんもゆっくりと俺達がいる場所に歩いてくる。両腕が生えてるし、その筋肉は腐ってるどころか、筋肉モリモリだぞ。漫画肉を食べた効果で、漫画みたいにパワーアップ! プレイヤーじゃなくて、NPCなのに?
「ふっふっふっ! 草井さんだけじゃないの。私もパワーアップしてるだから」
そういえば、レイは漫画肉を食べれる事に喜んでいたな。草井さんの両腕が凄すぎて、一瞬見ただけでは分からなかったけど、そこまで変わったところは……!
「胸が少し大きくなってるんじゃないのか!」
セクハラ発言かもしれないけど、少し膨らんでいるんだもの。レイも言って欲しいそうだってし。けど、戦闘面には全くの無関係。いや……サキュバスみたいに誘惑の特技があれば。
「正解! すぐに気付くなんて、ポン骨はHだぞ。でも、飛べるようになったんだから、抱えなくても大丈夫なんだよね?」
くっ! 『補骨』が出来て喜んでいたのに、早くも『与骨』したくなる気持ちにさせるとは、レイの誘惑の力が半端ないぞ。頭蓋骨でも胸に挟まれたい気持ちが……Hな気持ちにさせるじゃないか!
「くっ……俺は屈しないぞ。胸に挟まれたいという誘惑なんかに」
「ふふっ……レイもそうだけど、お前達って面白いな。ポン骨なんて本音が駄々漏れだ。匂いが違うから、レイが誘惑の道具を使ったんだろ? 胸も一定の時間がきたら、効果が消えると思うぞ」
かおリンがいるのを忘れていた! ドン引きする発言もあったのに、笑って済ませてくれるたのは本当にありがたいんだけど。
「かおリンもそれを言ったら駄目だよ。もう少し、ポン骨の反応を楽しめたのにさ。それが分かるって事は、かおリンも試した事があるの?」
スライムのかおリンが誘惑の道具を使っても……体が胸のような触り心地に……駄目だ! 俺の煩悩よ、去ってくれ。
「それは内緒だな。レイ達も来た事だし、私は去る事にするよ。次のイベントで、ポン骨の相手は私になったからな。レイ達の健闘を祈ってるよ」
かおリンはレイと草井さんが来た事で、この場から離れていく……と思ったけど。
「回復アイテムを貰うのを忘れてた。ポン骨を助けたわけだし、良い物を期待したいんだけど」
そこはちゃっかりしてるみたいだ。レイが渡したのは漫画肉。何処から取り出したとか、助けて貰ったのも今は置いておこう。かおリンはイベントの敵なのに、パワーアップさせてどうするんだよ!