ポン骨が飛んだよ!
「はぁ……そんな状態でよく序章をクリアしたもんだな。代償は体を無くす事だったとか? 残念だけど、イベントのためだから。俺が相手だったのを幸運だと思ってくれ」
幸運だと思えって……攻撃するつもりだよね。サッカーボールのリフティング状態ですから。幸運なんて謎の首飾りが+20だったのに、レイに奪われてるだろ!
「さっきの言葉は謝るから! 殺すのは止めてくれると……あがっ!」
折角手に入れたバットの骨が無くなったり、パラメーターを減らしたくないから。と思ったら、倒されてない? 無事に着地してるし、かおリンさんの姿が見えなくなっている。
「あうあうあう……あう?」
口の中にプニョプニョした何かが詰まっていて、閉じれないんだけど。
「甘噛みされると気持ち悪いから、止めてくれない? 」
かおリンの声が体全体に響く感じがするんだけど……えっ! かおリンさん、頭蓋骨の中に入ってるの? 勝手に『与骨』が発動して、かおリンの頭装備で、ドクロの兜に変更されてないよな。
「弱い奴を相手にするなんて、イベントを楽しめないだろ? レイの友達だし、少し指導してやるよ」
レイをかなり気に入ってるみたいだけど、プレイヤーじゃないんだよな。それは言わない方がいいか。それよりも指導って……スケルトンとスライムでは全然違うんだけど。
「あうあうあう」
「何言ってるか分からないっての! それと甘噛みもしないで!」
それはかおリンが俺の中に入ってるからで、両方共仕方なくないか? それと一瞬女子っぽくなったような……かおリンは女性プレイヤーなんだけど。
「オホン! ポン骨は頭蓋骨だけで動けないと思ってるようだけど、手足がない魔物もいるんだからな。スライムもそうだ。『人』パックなら、現実と同様の動きをすれば良い。『魔』はそうじゃないだろ? 人じゃなくて、魔物なんだから。イメージして、動かすんだよ」
かおリンは俺を被ったまま、首部分の隙間にある体の部分を使用して!前進したり、跳び跳ねたりしてくれる。人間の姿じゃないけど、イメージして動かし、それが自然に動くまでになったわけだ。
「特技もそうだぞ。わざわざ選択しなくても頭の中で思っただけで自然に出てる。火の息だけじゃなく、別の息も選択肢なしで吐けるようになったし。まずは魔力を流すのを思い描いてみろよ」
魔力を流す? 声を出したり、臭いを嗅いだり、目が見えるのは、魔力を流さなくても、人間の時にでも出来たから? 羽の場合は違うって事か。
今の翼は閉じた状態で、人の耳みたいな形になってる。『開け!』と思うと、『補骨』した最初みたいになってくれる。そこから、翼骨に魔力を流れるイメージを作って、体の一部だと認識する。
「飛んだ……飛んだぞ!」
かおリンは柔らかく、俺が空へ飛んだ事で、隙間の部分からスポッと抜け出たみたいだ。かおリンの説明だけで簡単に飛べるとは。そうなると、翼を使わなくても動けるんじゃないか? サタリアはそんな事を一度も教えてくれなかったのに。
「ありがとう! かおリンの事をこれからは師匠と呼ばせてもらいます」