颯爽と登場
「突っ切るわよ。あっちの校舎なんて数秒で着くんだから」
音楽準備室がある東校舎まで渡り廊下で五十メートルもない。愛毒とレイは飛んでるんだから、ほんの数秒で届く。俺は……十秒ぐらいなら大丈夫なはず。
「ちょっと!! 何の光? 何処からかの攻撃なわけ」
「眩しい!! 消えて無くなる……事はないみたいだけど」
渡り廊下に入ると、連続で光が放たれる。死霊系等に効果がある光というわけでもなく、目眩ましだけなのか、レイがダメージを受けた様子もない。
「あれって……そうなのか?」
俺が一番後方にいたせいか、光を直撃せずに済み、相手の姿が見えたような……人や魔族、白騎士のような存在ではなくて、カメラだ。それは運営がゴブ蔵をインタビューした時に見たやつと一緒だ。あれも宙に浮いていた。光の攻撃というよりも、俺達を写真に映すのが目的か?
「その光はカメラのフラッシュかもしれない。『魔人転生』で運営がインタビューに使ってたのを見た事がある」
「何それ!! これに運営が関係するなら、写真に取られた時点でアカウント停止じゃない。二度とログイン出来なくなるかもしれないって事よね」
四階に上がるため、監視カメラに映った時点でアウトかもしれないけど。
「ポルターガイストで落とすのは無理だよ」
カメラはレイを一番に撮ってる感じだな。それはポルターガイストを警戒するため、目潰しのつもりか。といっても、ポルターガイストで動かせる物がない。
「レイが無理なら、敵が運営のカメラでも証拠隠滅のためにも、私が殴ってでも」
いやいや……カメラだからって、写真を撮る以外にも攻撃手段があるかもしれないって。しかも打撃とか、愛毒にそんな力があると思えない……
「敵……そのカメラは敵じゃないんだ」
MAPを確認した時、渡り廊下周囲に赤の表示はなかった。俺はカメラを見た事があるのに。もう一度確認しても、渡り廊下に表示はなくて、後ろから赤の表示は近付いてくる。教室の窓を通り越して、廊下に動く何かが見えた。それは学生服を着た何か……
「敵じゃないの? 私のMAPにも表示されて……黄の光が渡り廊下に」
渡り廊下周囲にいた無数のカメラが炎に包まれ、全てが壊れ墜ちていく。
「こんなところで何やってるんだよ。しかも、何でレイも一緒にいるわけ?」
俺やレイはその声に聞き覚えがあった……というか、その人物しかいない。
「かおリン……じゃない!!」
レイはかおリンの姿じゃない事に驚いたけど、かおリンではある。スライムの姿じゃなくて、空凛さん本来の姿なわけで。




