亜里沙消滅?
「あの……倒せたんでしょうか?」
亜里沙さんは椅子に座ったまま。頭部分が飛んだわけだから、普通は倒せたと思うかもしれない。それを自分で覗きに行かないのも、そこを感じ取ってるのかも。
「身動きしないし……消滅が始まった? 見た目が強そうだっただけなの?」
まずは上半身部分が消滅して、次に下半身。徐々に消えるのではなく、そこは一瞬。回復する余裕もなく、野良魔物が消える時とは全然違う。
「……草井さんじゃなかったのかなって、あれ? 鉄骨がない」
流石に草井さんでも首が飛べば消滅すると思うけど……そう思ったのは鉄骨を持ってた事だけ。顔を見ようとしても、頭と胴体が分かれるし……ん? 鉄骨は剣になって、床に刺さった状態。ドロップアイテム……というよりも、残った状態になっていてもおかしくないよな。
「がはっ! く、くる」
亜里沙さんのうめき声が。俺達が注目してる間に、亜里沙さんの首を締める鋼色の腕……それも骨の形をした右腕た。
「もしかして……鉄骨が剣から腕に変化したわけ? 胴体じゃなくて、鉄骨の方が本体だったの」
亜里沙さんは足掻こうとPCのキーボードに手をやるが、それよりも消滅が先だった。現実に戻されたのか分からないけど、彼女には意識が残ってた状態。消え方もログアウトした時に似ていた。
倒す相手が消えた事で、右腕はPCに突っ込んだ。それでダメージを受ける事もなく、PCだけが大破しているし。
「鉄骨……腕だけなんて、本来やるはずだった『ヒロインの左腕』奪還をするはめになるのかよ」
サタリアが協力して貰い、戦闘もなく、レイと『ヒロインの左腕』は手元に戻ったけど、今回は全くの別。
鉄骨は腕の形をしたまま、愛毒に飛んでいく。違う! 狙いはそうじゃなくて、その先。体が消滅した事で、転がっていった頭の方を見てなかった。頭は消滅せずに残っていた。それも兜は消えていて、頭蓋骨の状態だ。
右腕が動いているんだから、あの頭蓋骨はドロップアイテムじゃない。




