透けてますよ?
「うっ……ここまで来るのに結構時間が掛かったというか、すでに疲れたんですけど」
四階の音楽準備室に到着。腰を屈めての行動したり、警備員の足音が聞こえてきたらダッシュで逃げたり、階段で移動するのもうさぎ跳びみたいな格好で……スパイは頭脳も必要だけど、体力勝負なんだと実感した。
「はぁ……はぁ……ヤバいヤバい。貴方以上に私の方が駄目だわ。格好つけてライダースーツなんて着るんじゃなかったわ。汗がピタピタと貼り付いて最悪だし……ちゃんと運動してないと無理……私はインドア派なの」
俺も疲れてるんだけで、毒島先生はそれ以上だ。汗が尋常じゃなく、青ざめてるぐらい。大人になっても、運動していないとこういう風になるわけだ。まぁ……普通に生活してたら、こんな事をするなんてないんだけど。
毒島先生は音楽準備室の鍵を開け、中に入り、俺もそれに続く。準備室でも電気を点ける事はせず、懐中電灯の明かりだけ。ジッパーを開く音がしたのは……毒島先生がライダースーツの上半身部分を開けたからだ。暗いのと暑いからって、無防備じゃないか? 懐中電灯の光だけでも、その姿は見えるから。 下に着ていたのは白Tで、汗のお陰でブラが透けてますよ。それは声に出さないけどね!
「VRゴーグルは持ってきたわよね。もっと近寄ってきて。PCの光が漏れないよう、カーテンを閉めるから」
準備室の奥、PCが置かれてる机付近にはカーテンがあって、『魔人天生』をしてるのがバレないように工夫されている。あっ……違うな。
「あっ! これは違うからね。名前を変えてるだけだから……そんな生暖かい目で見ないで」
「俺は愛毒の事もあるし、コスプレ好きなのも分かったから、予想出来たから」
PCの中にあるフォルダ内には『魔人天生』以外のゲームもあり、H系の名前もある。○○×△△はかけ算じゃなくて、BL系だろ? 他の生徒達が見たら、イメージが崩壊していくんだろうな。
「……これも内緒にしなさいよ。それじゃ……中に入るわよ。VRには慣れてるとは思うけど、一気にくるかもしれないから」
毒島先生はフォルダのどれかを選ぶのではなく、壁紙の風景にある扉を何度もクリックした。そうすると扉が開く。VR世界にダイブする事。脳や体全体にその感覚が流れてくるんだけど、それは違和感程度。けど、今回は痛みが発生するレベルだぞ。