夜の学校
「あ~……そこは大丈夫かな。俺が不戦勝だけどかおリンに勝ったから、対戦時間は俺が決めれるんだ。かおリン一人だけで参加するのは無理ってわけ」
現実での空凛さんと連絡手段はないんだよな。こういう時のために聞いておくべきだった……俺から携帯の番号、コネクトを交換するを頼むべきなんだろうけど、断られるような気がして……その場合は結構……かなり凹むから。
「ふ~ん……。いつもの時間みたいなのがあるんじゃないか? 一応、ログインした方がいいぞ。そこで、『私か毒島先生のどちらを選ぶんだ!』と言われればいい」
阿久野はニヤニヤとしながら言ってくる。天野さんか毒島先生のどちらかを選んだみたいに、俺にも空凛さんか毒島先生のどちらかをなんて……今日ら『魔人天生』にログインしなければ……かおリンを数時間待ちぼうけさせる事になったら……ゾッとするな。イベント時はマイルームから出る事は出来ないはずだし……ログインした時に、阿久野の台詞を言われたら……そこにレイも加わるだろうし……
★
「本当に来てくれたんだ。手下を増やす事を選ぶかもと思ったりもしたんだけど……一人だけなの?」
時間は二十時過ぎ。俺は学校の宿直室にある窓から侵入。その前に校門は閉まってたから、誰にも見られずに塀を乗り越えるなんて、生まれてから初めてだぞ。こういうのは不良漫画や青春漫画の一コマにありそうで、俺みたいなのがやる事じゃないよな。
「アイツはイベントを優先して、間に合わなかったみたいで……誘っただけで、全部は話してないですけど……毒島先生ですよね」
「ああ……全然印象が違うかな?」
毒島先生はスーツ姿じゃなく、ラフな格好……じゃなくて、怪しい姿だな。ライダースーツに黒の帽子にサングラス。誰にも正体がバレないようにしてる? 声で何となく分かったけど、サングラスを外した事で、毒島先生本人と確認出来た。
「女スパイみたいな格好で……コスプレ好きなんですか?」
「……少し。それよりも! 空凛さんの方はちゃんと連絡したの? 勿論、ここの事は内緒にして」
『魔人天生』をやってるぐらいだから、変身願望があって、コスプレにハマるのは悪くないと思う。他の姿も見てみたい……サキュバスもそうだけど、セクシー系が好きなのか? ……じゃなくて!
「……伝えてないです。そんな何時間もいるわけじゃないですよね? 二十二時ぐらいにログイン出来たらって……遅かったのはバイトだったと嘘もつけるし」
バイトを週二でしてるのは本当だし、言い訳にはなると思う。まぁ……ログインした場合、教頭の言葉は気になるところなんだよな。その謎が、ここで分かるとありがたいんだけど……