愛毒撤退
「動きが止まったわね。私の魅了が天使にも通じたの? コイツらだけが例外だったんだ!」
子供天使は俺達の姿を見て、固まった。それはスケルトンの俺なのかもしれないけど、相手の狙いを考えると……レイでしょ? 愛毒の魅了が通じるのなら、手下にいれて正解にはなるところだけど。
「五月蝿いなぁ……オバちゃんは黙っててよ。面倒だから、あっちに行って。お姉ちゃん達を巻き添えにしたくないから。それとも……試したい武器があったから」
「オバ! ……アイツはお姉さんなのに。くそっ……覚えておきなさいよ」
愛毒は心の傷を受けて、本当にこの場から離れていく。子供天使は『そんなのは嘘だ!』と背後から攻撃を仕掛けないのか? それだけで時間が少しは潰れてくれるのに……ちょっと! すでに一分経過してるんだけど、少しでも会話で時間稼ぎをしないと駄目なのかよ。
「君は……プレイヤーか何かなのか?」
これは俺が言ったんじゃなくて、分身。
「プレイヤー? 一緒にしないでよ。僕達は選ばれた者なんだから。今回は『人』と『魔』で捜し物と、遊んでみたかったんだ」
天使が他にいる事は分かってるけど、ユウ? 達とは別? 『選ばれた者』とか言ってるし、『人』と『魔』の事を知ってるのはプレイヤーって事じゃないか? それとも運営が……イベントの邪魔はしないか?
「すぐに見つかって、良かったよ。あの攻撃もお姉ちゃんなら助かって当然だよね。コイツらの事は放っておいて、一緒に元の場所へ戻ろうよ」
子供天使は手を差し伸べるけど、レイの方は無反応だよな?
「……お姉ちゃんと呼ばれてるんだから、お前の事だろ? 俺がいない間とか、女神の籠手になってる時にでも会ったのか?」
子供天使に聞こえないよう、小さな声で言ってみた。それと地味に気になったのは、子供天使が持ってるのはゴブ蔵が武器になった姿のように見えるんだけど……
「誰? 会った事なんて一度もないと思うけど……いきなり攻撃してくる相手もちょっと……人違い、幽霊違いでしょ?」
「人違いなもんか! お姉ちゃんには翼が生えてるだろ! 黒い状態だからなの? 一度倒したら、元に戻る……違う! 悪の根源はお前だな。その鎧の紋章に見覚えがあるぞ。お姉ちゃんを連れ去った奴が装備してたのだ」




