残り一分?
「背に腹は変えられないか! あの槍で死ぬよりかはマシかもしれない」
分身の案に乗って、アースドラゴンの腹に近くに退避。野良魔物の攻撃が通じなかった防御力を信じるしかない。それとアースドラゴンが耐えても、目を覚ました時に……天使に倒されたら駄目だと思っておきたい。
「来た来た~! そこしかないじゃないの」
愛毒も俺達の後についてきた。光の槍は地面に着くと、突き刺さる事はなく、消滅していく。アースドラゴンの背中には無数の槍が直撃する音がないんだけど、咆哮が鳴り響いた。腹の近くにいたから、鼓膜が破れるんじゃないかと思った。
「やった! 光の槍が通り過ぎていったぞ。残りがもう少しで一分になりそう……だ」
天使が登場、光の槍が広範囲に展開して、そろそろ五分になりそうだ。サタリアの言葉を信じるなら、残り一分間、目を覚ましたアースドラゴンの攻撃を回避するだけ。天使があの攻撃を止める事はないだろうし……
「わぁ……ドラゴンは流石だなぁ。僕の攻撃で死なないんだ」
そう思ってたのに、アースドラゴンの咆哮に引き寄せられたのか、子供天使が地上に、アースドラゴンの前に降り立った。俺達の姿が見えてないのは、光の槍のダメージでアースドラゴンの頭が下がり、壁みたいになってるから。今のうちに背中に回り込んだ方がいいのか……
「野良魔物には興味がないんだけど、倒せなかったのは嫌だし、トドメを刺してあげるね」
アースドラゴンが選んだのは瀕死な状態で反撃するんじゃなく、地中に逃げる事。丁度背中に回り込んで、そこから逃げる算段が、子供天使に丸見えの形になってしまった。
「逃げちゃった……けど、悪魔を一人発見。『人』パックで無双するのは取られちゃって、あまり期待してなかったけど、あれを避けたり、防いだりしたんだ」
子供天使は俺達を発見して、笑顔になった。『人』パックを知ってるという事はNPCやボスじゃない? 悪魔一人という事は、愛毒の事だよな? 『人』を知ってるなら、プレイヤーと呼んでもおかしくないのに……それに俺とレイ、分身は見えてない……
「その後ろにもいる! 一杯殺せるんだ……」
……わけがないよな。先に逃げようとしたら、最初に子供天使の目に入ったのが愛毒なだけで……




