天使降臨
「えっ……私を選んだの! 今更惚れたところで遅いわよ。命令で何でもしてあげると思わないで」
愛毒は性格が悪いと自分でも分かってて、選ばれる事はないと思ってたのか、恥ずかしそうにクネクネし始めた。顔も俯いて、こっちをチラチラと見てる。
「空気を読みなよ。『緊急事態発生』の文字が見えない程、年を取ってるわけ?」
年下? のレイに説教されてる。俺も『緊急事態発生』を初めて見るから、どう対応していいか分からないのは確かだけど。
「五月蝿いわね! 私を選んだわけだから、部屋に戻ればいいでしょ。連絡先は勝手に渡されてるはずだし。次の試合に来るとは思わないでよ」
愛毒はマイルームに帰るつもりで、捨て台詞を言ったようだけど、サタリアの言葉を聞く限りでは、そう簡単に行く話ではないんだよな。
「あれ? マイルームに戻れないし、ログアウトも無理なんだけど!」
俺も手下を選び終えたのにマイルーム戻れない。その理由として、戦闘が今も継続してるみたいだ。戦闘中ではマイルームに戻る事やログアウトは出来ない。
「前は野良魔物がいても戻れたのに、アレを倒すなんて無理な話なんですけど」
『アレ』というのはアースドラゴンの事だ。今も眠ってるみたいで、本当にアースドラゴンが原因なら、離れれば問題解決。けど、サタリアは生き残る事と、レイを守れとも言ってきた。アースドラゴンが狙う理由があるとすれば、愛毒の方だ。
「五分過ぎれば、何とかしてくれるらしいから、その間は何処かに隠れるなり、逃げた方がいいかも」
その時、何処からともなく鐘の音が鳴り響いてきた。
「……ちょっと待て。鐘の音なんて嫌な予感しかないぞ。何処にも鐘なんてないのに」
鐘の音が鳴る場所を考えてみよう。学校のチャイム、神社の鐘? それとも
「教会にある鐘の音じゃないの? 友達の結婚式で嫌という程聴かされたから」
愛毒が億劫してように現実な話は置いといて、教会=クロスを思い出してします。相手が今から登場するのであれば……
『天使降臨』
その四文字が表示された。